無駄だからこそ生まれる、知性と技術と狂気〜魔改造の夜「トースター高跳び」「ワンちゃん25m走」

ギャラクシー賞月間賞:魔改造の夜
「トースター高跳び」「ワンちゃん25m走」

6月19日、26日放送
22:00〜23:00
日本放送協会 テレビマンユニオン NHKグローバルメディアサービス

 元の意味や用途を逸脱し、通常ではあり得ない改造をすることを「魔改造」などという。番組では「身の回りにあるおもちゃや家電製品のリミッターを外し、えげつないモンスターに改造する行為」と定義し、それを日本トップの大学・T大学工学部、下町工場のH野製作所、自動車メーカー最大手のT社という超一流のエンジニアたちが競い合った。彼らが挑戦するのは、ポップアップ式トースターでいかに高くパンを跳ね上がらせるかを競う「トースター高跳び」と、歩く犬のおもちゃをいかに早く走らせるかを競う「ワンちゃん25m走」という、いずれもバカバカしいもの。例えば前者なら「パンを焼く機能を残し、パンを美味しく焼くこと」と「改造費は5万円以内」ということを守ればどんな改造をしてもいいというルール。見た目が原型をとどめないほど変わり、数倍の大きさになった姿が披露され、「投星」「ゴースター」などとその名称が発表されるのが、またバカバカしい。けれど、制作過程はいたって真剣。さまざまな試行錯誤を経て完成した機械は、当日の気温などの環境によって生じた誤差で成否が分かれるほど繊細なものだ。

 格闘技中継のような実況も番組を盛り上げ、「魔」をイメージしたBGMや薄暗い倉庫内のような怪しげな舞台は、秘密の夜会的な背徳感を醸し出す。一方でエンジニアたちの熱さもある。やっていること自体はバカバカしいが、皆が本気なのだ。最終的に「トースター高跳び」では、本来11cmしか飛ばないパンを、H野製作所が9m95cmまで飛ばし優勝、「ワンちゃん25m走」では「走らせる」ことに関して負けるわけにはいかないT社のプライドを見せつけ、約18秒で駆け抜け勝利した。愛着たっぷりに「ワンちゃん」の見た目を可愛くあしらったり、競技終了の直後から敗因を追究するエンジニアたちの姿も印象的だった。

 実益や生産性は一切ない。けれど、そんな遊びやムダのなかから新しいものは生まれてくるはずだ。エンジニアたちの最高峰の知性と技術、そして狂気が活写されていた。(戸部田 誠)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

1

関連記事(外部サイト)