オトナの都合で教育を奪われた子どもたち〜ETV特集「すべての子どもに学ぶ場を〜ある中学校と外国人生徒の歳月〜」

ギャラクシー賞月間賞:ETV特集
「すべての子どもに学ぶ場を〜ある中学校と外国人生徒の歳月〜」

6月27日放送
23:00〜24:00
日本放送協会

 2019年4月、国は深刻な人材不足に対応するため、入国管理法を改正して外国人労働者の受け入れを拡大した。しかしその一方で、日本で暮らす外国籍の子どもたちの教育問題は長年置き去りにされている。彼らは義務教育の対象にはなっておらず、現在学校に在籍していない不就学の児童生徒は全国で2万人もいる。そしてその対応は自治体任せになっている。

 番組では全国に先駆けてこの問題に取り組んだ岐阜県可児市と14年間不就学ゼロを達成している市立蘇南中学校の1年間を丹念に追い、その実践を通して外国籍の子どもを受け入れる必要性を強く訴えている。

 この中学校が取り組みを始めたのは20年前。当初は、学校に馴染めない子どもたちや日本語のわからない子どもたちを「お荷物」と見なしていた。学校の対応を変えたきっかけは、市が専門家と協力して行った実態調査や登校を制限されたある卒業生の「日本語教えてくれない? 勉強したい」という言葉だった。その後、学校側は通訳を配して、一人ひとりにカスタマイズした授業を2年間受けられる国際教室を開室、可児市は無償で日本語を学べる施設を設立し、ここで学んだ子どもたちが小中学校に編入する仕組みを作った。

 しかし複雑な事情を抱える外国籍の子どもたちを学校につなぎとめていくのは決して簡単ではない。通常クラスになかなか馴染めず登校しなくなる子、幼い姪の世話で学校を休まざるを得ない子、コロナ禍で親が雇い止めになり高校進学をためらう子などに対し、彼らをなんとか卒業させてやりたいと日々奮闘している現場の教師たちの姿が印象的だ。この春卒業した315人のうち外国籍の子どもは53人。生徒指導の先生は「全員に卒業証書を渡せたのが嬉しい。君の居場所はここにあったんだよと伝えたい」としみじみ語る。

 これからの日本が進むべき道を考えるうえで、この番組が可児市の中学校の実践を1年にわたって丁寧に検証した意義は大きい。国籍に関わらず、教育とは人を尊重し、自尊心を育むことから始まるものだということを教えてくれた気がする。(細井尚子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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