「新型コロナウイルス(COVID-19)感染」 報道 露呈した調査報道力の貧弱さ 世界の先を読む報道にも意を払え

報道番組に喝!【NEWS WATCHING】90
文=伊藤友治

感染報道の陰で
影をひそめつつある国際ニュース

 5月号の本欄に「新型コロナウイルス感染報道 疫病危機:テレビ報道の役割とは何か? 政府・行政当局に物申し続けよ!!」と書いてから4カ月が経つ。「自粛」「在宅」の緊急事態宣言で一時は鎮静に向かったが、その解除後は急増に転じている。「感染第2波の前夜!?」―――そんな状況で、執筆の順番が再び巡ってきた。今度はCOVID-19報道がもたらすプラスとマイナス面に注目し、「今、テレビ報道に求められること」について書いてみたい。

 まずは何よりも、感染対策に絡む政府の予算執行や業務委託などを巡って、不透明・不明朗な部分があまりに多いという実態を炙り出す好機になった。「持続化給付金」と「GoToキャンペーン」の委託問題では、入札過程の不透明さや官庁と特定企業の不可解な関係に疑惑が生じ、「GoTo」では委託費(3,095億円)の高額ぶりが問題視された。

 ところが、不公正さを裏づける決定的な材料(事実・証拠)は十分に見当たらない――こういうときこそ「ウォッチドッグ」(WATCH DOG=番犬=政府・権力機構の監視役の意味)たるメディアの出番である。テレビ報道の調査報道力に期待した。

 しかし残念なことに、新聞や週刊誌のスクープ報道ばかりが先行し、どの局の番組も後追い報道に終始した観がある。2次報道の羅列だった。持続化給付金再委託問題では、一部の週刊誌が「中小企業庁長官は経産省審議官時代の2017年、米テキサス州のパーティで社団法人の業務執行理事と同席していた」と特報したが、それを空々しく引用するしか手立てのないテレビ報道には失望した。テレビ報道は政府・官公庁にとって不都合な真実を暴き出せず、活字メディアの既報(2次情報)を電波で拡散する役割しか果たせていなかった。そんな体たらくに“喝!”だ。

 テレビ報道は番組主体の制作・放送が主流になった頃から、ニュースの「見せ方」や「伝え方」ばかりに力を注いできた。その結果、調査・取材の部門が軽んじられ、調査報道の力量が大幅に減退した。それが実相に近いと思う。報道の原点は取材にある。自前の取材力を底上げする努力をしない限り、NEWS(新事実・新事象)を伝えるメディアとして信頼を得ることなど到底できるはずがない。

 特大級の主題が報道枠を席巻すると、必ず副作用が出る。ボツにされ、あるいは簡略な扱いとなる項目が増えるという負の効果だ。時間の制約上、項目の取捨選択はやむを得ない。とはいえ、メディアとして見逃してはならない項目を、いかに拾い上げて視聴者に伝えるか――番組を制作し放送する側の真価が問われる局面でもある。たいていの場合に割を食うのは「国際ニュース」と相場が決まっている。案の定、見応えのある国際報道は画面上から影をひそめつつある。

 だが皮肉なことに、COVID-19の感染が地球規模で拡大するのに伴い、報道価値の高い出来事や事象が相次いでいる。特に米中両国の対立激化は言うまでもなく、日本の主権や安全保障を脅かす中露両国の動きも慌ただしい。ロシアの改正憲法には「領土の割譲禁止」条項が新たに盛り込まれた。北方4島の返還交渉が一段と厳しくなるのは確実だ。

 他方、沖縄県の尖閣諸島周辺では、中国海警局の武装公船による接続水域への侵入が続いている。7月8日時点で「86日連続」という異常ぶりだ。中露どちらの動静も報道価値の高いニュースのはずだが、詳細な分析や解説を試みた特集企画などは放送されたのだろうか。番組表で見かけた記憶がない。

 もう一つ。中国の国営メディアは人民解放軍が東シナ海、南シナ海、黄海の3海域で同時に「熱い軍事訓練を行った」と報じ、これを受ける形でNHKとテレビ朝日が7月6日の昼ニュースでそれぞれ短く伝えていた。意を払った報道と好感した半面、「もっと詳しく知りたい」という思いが強く残った。

 「テレビは世界に向かって開かれた窓」と言われる。その大切な「窓」が閉じられてしまわないように制作陣はより一層の創意工夫をこらして欲しい。切に願う。

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