すべての「不要不急なものたち」へのエール〜ドラマ&ドキュメント「不要不急の銀河」

ギャラクシー賞月間賞:ドラマ&ドキュメント
「不要不急の銀河」

7月23日放送
19:30〜20:42
日本放送協会

 「なあ、俺たちの人生は不要不急だったのか?」

 「不要不急でしょうよ。不要不急以外の何物でもないじゃない」

 新型コロナ禍による緊急事態宣言の下、不要不急の外出を控えるよう政府や都が要請し、飲食業や多くの業種が大打撃を受けた(そして今も受けつつある)。私たちは当たり前だった日常において、何が不要不急で何がそうでないのか、選別するようになってしまった。

 又吉直樹脚本によるドラマ「不要不急の銀河」は、コロナ禍により経営不振に陥ったスナック「銀河」を舞台に、閉店をめぐる家族の葛藤を細やかに描いた。

 冒頭の引用は、店主(リリー・フランキー)の両親(小林勝也と片桐はいり)の会話だ。スナックに行くことが不要不急ならば、スナック経営に捧げてきた人生自体も不要不急ではないかという老父の切実な問いに対して、「不要不急以外の何物でもないじゃない」と老母は笑って答える。私たち自身の人生もまた不要不急なのではないかと気づかされるシーンだ。

 しかしその老母は、スナック銀河で常連客の誕生日にカラオケ大会を開催し、やがてそれは閉店を主張する店主の妻(夏帆)をも巻き込み、中島みゆきの『ファイト!』が熱唱されるなかで、思いがけない祝祭となってゆく。そしてついに老父扮するフェニックス=不死鳥が降臨した瞬間、不要不急と切り捨てられた銀河が甦り、一瞬の煌めきを見せるのである。

 実はこの番組は2本立てで、本編のドラマに先立ってメイキングが放送され、コロナ禍のもとでスタッフたちがどれだけ感染防止に心を砕きながらドラマを制作したかが伝えられた。メイクのブラシの使い方ひとつに専門家が助言し、子役が作った飛沫防止のアクリル板がドラマの小道具として取り入れられたりもする。

 コロナ禍で制作現場が止まったとき、作り手たちはドラマ作りの意味を考えただろう。そのひとつの答えがこのドラマなのではないだろうか。『ファイト!』の熱唱はすべての不要不急の者たちに向けたエールなのだと感じ、胸が熱くなった。(岡室美奈子)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。

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