大坂なおみはセリーナ戦を再ブレーク“夏の陣”にできるか

大坂なおみはセリーナ戦を再ブレーク“夏の陣”にできるか

3時間弱の激闘を制した大坂なおみ(C)共同通信社

武田 薫【スポーツ時々放談】

 テニスの4大大会の第2弾、全仏オープンがたけなわだ。男子は、大会12度目の優勝を狙うナダルと4年ぶり出場のフェデラーが話題を集め、女子は大坂なおみの“快挙”に、疑心暗鬼ながら期待が寄せられている。

 大坂は昨年の全米オープンに続き今年1月の全豪オープンにも優勝。メジャー初優勝→2連勝は過去に例があるが、3連勝は男女を通じ史上初。そうなれば、全仏3週間後のウィンブルドンに4連続グランドスラムの偉業もかかる。

 緒戦は危ない橋を渡った。世界90位のアンナ・シュミエドロバに第1セットを0―6。格下への0―6は明白な自滅で、相手ポイントの3分の2が自分のミスだった。

「こんなに緊張したのは生まれて初めてよ。4大大会の第1シードは初めてで、全米と全豪で勝ってきたから、自分を証明したかったんだと思う」

 冷や汗をたっぷりかかされた後の相変わらず真っ正直なコメントに、むしろ不安は薄らいだ。

 1回戦敗退まであと2ポイントという窮地に4度、追い込まれた。大坂に限らず、トップ選手にとってクレーコートの全仏の緒戦は魔物で、セリーナ・ウィリアムズも第1セットを落とし、優勝候補の一角であるシモナ・ハレプもフルセットに持ち込まれている。慣れないサーフェスに慣れながら勝ち上がっていく、その我慢がカギなのだ。

 確かに大坂は不安だらけだった。春のクレーコート3大会の2大会で棄権、スタッフの入れ替えもあってバタバタした。少し体重が増えた印象はあるが、これだけ騒がれても相変わらず天然な笑みを浮かべ、純粋さは少しも濁っていない。王座に慣れ、精神的な安定を取り戻せば、やはりサーブもショットも威力は抜群だ――再ブレーク、そして快記録への分岐点は準々決勝にある。

 順当なら、そこでセリーナと対戦するドローは、いまの大坂にもってこいだ。セリーナは前人未到の通算24度目のグランドスラム優勝を狙い、最大の壁が全米決勝で負けた大坂。最近になって、この新旧2人の関係がより明確になってきた。

 昨年のブレークを導いた前コーチのサーシャ、フィジカルトレーナーのシラー、オフに茂木トレーナーに代わったクリスティ・スターは、いずれもセリーナ陣営のスタッフだったし、新コーチのジェンキンスも姉ビーナスのヒッティングパートナー上がり。4月に茂木トレーナーが復帰するとスター・トレーナーはセリーナ陣営に逆戻り……セリーナ姉妹は共にアラフォーで、女子テニスを20年牛耳ってきたウィリアムズ家の頭脳が21歳の大坂へ流出している人事構造……2人の間には余人の知らざる恩讐が横たわっている。対決が実現すれば、大坂陣営は総力を挙げて昨年の全米決勝を再現させるはずだ。

 準々決勝こそ天下分け目の“大坂夏の陣”で、大坂なおみにとってセリーナという分かりやすい目標は、メンタルタフネスを取り戻して、新たな一歩を踏み出すきっかけになり得る。

 記録もさることながら、新旧女王が放つ火花に注目したい。

(武田薫/スポーツライター)

関連記事(外部サイト)