人材豊富な米国は東京五輪で大坂なおみを必要としていない

人材豊富な米国は東京五輪で大坂なおみを必要としていない

全仏は3回戦で敗退した大坂(C)ロイター

武田薫【スポーツ時々放談】

 テニスの全仏オープンは、ラファエル・ナダルが若手の旗頭ドミニク・ティエムを下し12度目の優勝を飾った。上位4シードが揃って勝ち上がった男子とは裏腹に、女子は何が何だか分からない乱世の相を呈した。

■ジョコビッチの分析

 第1シードの大坂なおみは精神的に不安定、37歳のセリーナ・ウィリアムズは体重過多で動けない――。アシュリー・バーティ(第8シード)が優勝までに対戦したシード選手は準々決勝のマジソン・キーズ(第14シード)だけ。上位勢の脆さを裏付け、準優勝のマルケタ・ボンドロウソバを知っていた人はまずいないだろう。世界ランク50位の19歳だ。

「新しいスターたちが育っていて、それはファンも望んでいることだ」

■両親がロシア移民の20歳と17歳

 大会中、ジョコビッチがそう分析しながら、シモナ・ハレプら中堅数人の名前を挙げ、アマンダ・アニシモワ、ボンドロウソバら10代選手にも触れた。だが、全米、全豪と連覇した世界ランク1位の大坂なおみの名前は出なかったのだ。忘れたはずはないだろう。

 今年の全仏では新たな流れが表面化した。セリーナを倒した20歳のソフィア・ケニン、昨年優勝のハレプを破って4強入りした17歳のアニシモワ、大坂より年下の2人は両親がロシア移民だ。ロシア出身のシャラポワに憧れるのは分かるが、米国育ちのシャラポワがロシア籍で通したのに対し、2人は米国籍でケニンは既にフェド杯の米国代表として戦っている。

 実は大会期間中、外国人記者の間で「大坂が米国移籍を決めた」とのウワサが流れた。これはガセネタだったが、それはともかく、米国テニス協会(USTA)が大坂を日本に取られて悔しがっているという国内のまことしやかな報道は、どうやら眉唾のようである。

 USTAはフロリダ州オーランドに100面のコートを有する育成拠点を持ち、ケニンもアニシモワもここで育った。米国には、大坂と国籍問題で日本とゴタゴタしなくとも十分なタマがあることが全仏で明らかになったのだ。すなわち、日本が心配する懸案事項に答えが出たということ。大坂なおみが日の丸をつけて東京オリンピックに出場するのは間違いないし、米国は必ずしも大坂を必要としていないということだ。

 ジョコビッチがうっかり(?)大坂をスルーしたように、ポスト・セリーナは不安定要素であふれ、結果だけでは判断できない状況にある。では、7月1日に開幕するウィンブルドンはどうか。全仏優勝のバーティはオーストラリア出身の23歳。クレーコートでの評価は低く、既に全米ダブルスで優勝しているように、むしろ芝が得意な器用な選手だ。

 今回の優勝を受けてウィンブルドンでは絶対の◎になり、大坂の連覇の次は、バーティが全仏、ウィンブルドン連覇という可能性もある。

 バーティはオーストラリアの先住民(ナーリーゴウ)の血を引いている。大坂の二重国籍で騒いでいる時代でないことも頭に入れながらウィンブルドンを楽しみたい。

(武田薫/スポーツライター)

関連記事(外部サイト)