奥原希望を金に押し上げたリオの雪辱と羽生世代への対抗心

奥原希望を金に押し上げたリオの雪辱と羽生世代への対抗心

女王の座についた奥原希望(C)共同通信社

 驚異的な粘り勝ちだった。

 バドミントンの世界選手権(英グラスゴー)は27日(日本時間28日未明)、男女5種目の決勝を行い、女子シングルスは世界ランキング12位の奥原希望(22)が同4位のシンドゥ・プサルラ(22)と対戦。2―1で破り、日本勢のシングルスでは、五輪、世界選手権の男女を通じて初の頂点に立った。

 同じく決勝に進んだ女子ダブルスの福島由紀(24)、広田彩花(23)組は、陳清晨、賈一凡組(中国)に1―2で敗れ、1977年大会で優勝した栂野尾悦子、植野恵美子組以来の金メダルは逃した。

 昨夏のリオ五輪では初出場で銅メダルを獲得した奥原。相手は同銀メダルのプサルラで過去3勝3敗。ジュニア時代からしのぎを削るライバルだ。156センチの奥原に対し、黄色のウエアのプサルラは179センチの長身。打点が高く、手足が長いので守備範囲は男子並みだ。

 第1ゲームの奥原は序盤から主導権を握られ5―11とリードを許すが逆転でものにする。ラリーの応酬となった第2ゲームも相手を追う展開。20―20に追いつくも、最後の打ち合いに負けた。

 迎えたファイナルゲーム。互いに疲労の色が濃く、奥原は何度も下半身のストレッチを行う。プサルラはチャレンジに失敗し12―12に追いつかれたところで給水。水とサプリメントの摂取時間が長く、審判からイエローカードが出された。

 ここからは観客が息つく暇もないほどの激しいラリー戦が続く。点が入るたびに腰を落とし、コートに倒れ込む両者。奥原は17―19まで追い詰められるが20―19と逆転。拾って拾いまくる持ち前の粘りで2度のマッチポイント。最後は相手の返球がネットに当たり、悲願の世界女王となった。

■右肩故障から復活

「きつい試合だった。世界女王というのはすごく特別なポジションだが、まだ実感がない。でも、ここが私のゴールではない。2020年東京五輪がある」

 こう語った奥原は、女子単のエースとして更なる飛躍を期待されながら、16年末の全日本総合選手権は2回戦で右肩を痛めて(炎症)棄権。完治までに3カ月近くを要する重症だった。

 父・姉・兄がバドミントン選手という家庭で育ち、7歳から競技を続けてきた体は左右のバランスが大きく崩れ、故障の影響もあって右肩の可動域も極端に狭まった。リハビリの間は専属トレーナーの指導の下、体の歪みの矯正に着手。同時に体幹強化も図った結果、故障前よりも右肩の可動域が広くなり、スマッシュの威力がアップした。

 そもそも柔軟な体にバランスの良さが戻ると、フットワークのキレが増した。これまで見送っていたような相手の力強い左右のスマッシュにも瞬時に反応できるようになった。今年6月のオーストラリア・オープンでは、昨年3月の全英オープン以来のスーパーシリーズ制覇で完全復活を果たした。

 奥原は自身のプレーについて「ディフェンス力も良くなっています。相手に打たせても、しっかりと取れる(返せる)ようになった。(勝負どころでの)一発の精度も上がっています」と説明している。

■同学年の活躍も原動力に

 身長156センチと海外勢に比べて小柄なことから、相手との駆け引きはもちろん、力強いスマッシュや軽快なフットワーク、スタミナとタフなメンタルが勝敗を左右する。故障が癒えて、肉体改造に取り組み、「進化」した体が金メダルにつながった。

 今大会の奮起は、同学年のアスリートの存在も原動力になったという。

 奥原の同学年には、男子フィギュアスケートの羽生結弦、男子競泳の瀬戸大也、萩野公介、プロ野球日本ハムの大谷翔平らそうそうたる顔ぶれが揃う。特に瀬戸と萩野には強烈な対抗意識を抱いており、7月の世界水泳で表彰台に上がる2人の姿を見て、「あらためて世界選手権で頂点に立ちたいと思いました」と語った。その願いを英国の地でかなえた。


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