最後に乗るのは汽車か戦車か フィナーレを飾るラグビーソングの競演

最後に乗るのは汽車か戦車か フィナーレを飾るラグビーソングの競演

左から南ア・デクラーク、イングランド・ファレル(C)ロイター

【ラグビーW杯 四方山話】

 1カ月以上にわたったラグビーW杯も11月2日午後6時キックオフの決勝戦をもってフィナーレを迎える。ファイナルに進んだのはイングランドと南アフリカ。当コラムのラストは、両国の「応援歌」で締めたいと思う。

 南アの客席を沸かすのは「ショショローザ」。

 南ア初の黒人大統領ネルソン・マンデラの自伝的映画「インビクタス」の挿入歌としても知られる。もともと公用語であるンデベレ語、ズールー語で作られた歌で、他の言語や歌詞がアドリブ的に入ることもある。

 ジンバブエ南部と南ア北東部にまたがるンデベレ族の居住地から、男たちが汽車に乗って南アの金鉱山やダイヤモンド鉱山に出稼ぎに行く――という労働歌である。

 「進め進め 山々を抜け 南アの汽車に乗って 急げ急げ 山々を抜け 南アの汽車に乗って」

 コール&レスポンススタイルの明るい曲で汽車の蒸気、車輪の音、鉱山を掘るツルハシの響きが聞こえてきそうだ。マンデラ氏も、収監先で強制労働時に歌ったという。

   ☆ ☆ ☆

 対するイングランドはお馴染みの「スイングロー・スイートチャリオット(Swing Low, Sweet Chariot)」である。

 80年代後半からスタジアムで歌われるようになった。それにしても米国の黒人霊歌が、なぜイングランドのラグビーソングになったのか?

 諸説あるが、結論は出ていない。テネシー州のフィスク大学が資金集めのために結成した合唱隊「Fisk Jubilee Singers」のレパートリーで、彼らは米国各地や欧州にも遠征していた。

 オリジナルは、まだ奴隷制度が残る南北戦争後に生まれた曲で、労働の苦しみから「早く天国に召し上げてください」と神に懇願する内容だ。死の直前に天から「チャリオット(戦闘用馬車)で迎えに来てほしい」という歌詞になっている。

 ベースには、旧約聖書の預言者エリヤの逸話が使われている。

 信心深いエリヤは長く邪教と戦ったが、最後は神がつかわした「炎の戦車(チャリオット・オブ・ファイア)」に乗り、ヨルダン川東方から天使と天に昇っていく。

 この「炎のチャリオット」は、もうひとつのイングランド国歌と呼ばれる「聖歌エルサレム」の歌詞にも登場する。

 ウィリアム・ブレイクによる詩の断片だが、信仰の証しや神の許しの象徴にもなっている。

 これらの応援歌は、客席から自然発生的に湧き起こり、スタジアムをのみこんでしまう。テレビのボリュームを上げ、しばし国際大会の醍醐味を味わってほしい。

(いとうやまね/コラムニスト)

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