鈴鹿ポイントゲッターズ―「ダサい」改名は覚悟の上だった JFLクラブが選んだ破天荒な戦略

鈴鹿ポイントゲッターズ―「ダサい」改名は覚悟の上だった JFLクラブが選んだ破天荒な戦略

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サッカーJFL・鈴鹿アンリミテッドFCが2020年1月20日、チームの名前、ロゴ、エンブレムの刷新を発表したところ、インターネット上で「ダサい」の声が殺到する事態となった。新しい名前は「鈴鹿ポイントゲッターズ」。ユニフォームにつけるエンブレムは、少ない線とシンプルな配色で「ポ(P)ゲ(G)」とあしらったもの。新旧版を比較すると、抜本的な変更になっていることが分かる。

クラブイメージそのものと言える名前やエンブレムの大胆すぎる差し替えには、否定的な声も渦巻いた。だが、鈴鹿には確固としたコンセプトがあるという。「大前提に、今後ポイントサイトで勝負していく方針があり、覚悟をもって変更しました」。独自のポイントシステムを1年前に導入した同クラブ。今回の刷新の理由を詳しく聞いた。

「こんなにダサいクラブ名、ロゴ、エンブレムは他に見たことがないです...」

「旧・鈴鹿アンリミテッドは、新たにチーム名『鈴鹿ポイントゲッターズ』と共に、ポイントサポーターズクラブとして生まれ変わります」――。国内最高峰のJ1から数えて実質4部リーグ相当のJFLで19年から戦う鈴鹿。20年シーズンを前に発表したのは、チーム名とロゴ、エンブレムの変更だった。2月1日をもって正式に変わる。

新たなロゴは、ドットや幾何的なモチーフを使って「鈴鹿ポイントゲッターズ」と書いたもの。そしてエンブレムは、クラブカラーの青色で「ポ」と「P」、同じく緑「ゲ」と「G」をそれぞれ組み合わせた創作文字を中央に大きく配し、ホームタウンであるモータースポーツのまち・鈴鹿市にちなんだチェッカーフラッグの模様が描かれている。

16年から採用してきた現行エンブレムとは全く異なる。現行は「守備の強固さ」と「地域への密着性」の意味を持たせた「盾」をベースに、「アンリミテッド(Unlimited)」の「U」と三重の「三」(3本ボーダー)を中央へ配置し、チェッカーフラッグを模したリボンでサイドを囲んだデザイン。比べると、装飾をほぼ排した新エンブレムへの変化の大きさが際立つ。

こうした新チーム名とエンブレム。ツイッター上では「ダサカッコいい」という反応もあるが、「ダサい」の声が殺到することになった。

「何をどうやったらここまでダサいものが作れるのだろう? ここまで不細工な名称もロゴもエンブレムも、今世紀中に見られないレベル。サポが不憫でならない」
「名前だけでなくロゴまで...よくもまあこんなダサイ名前&ロゴで了承しましたね...応援するサポーターは気に入ってるのかなぁ...そうだといいですが」
「こんな事を言ったら駄目かもしれないけどこんなにダサいクラブ名、ロゴ、エンブレムは他に見たことがないです...」

「ファン・サポーターのみなさんと一緒になってクラブ運営費を稼いでいく」

鈴鹿アンリミテッドFCといえば、同じ鈴鹿市に本社を置く「お嬢様聖水ジャパン」がユニフォームの胸スポンサーになっていることでも知られる。19年6月には、所属選手が万引き犯逮捕に貢献したとして三重県警から感謝状が贈られたことが報じられ、その印象的なスポンサー名がテレビに映ったことでも注目を集めた。

その鈴鹿は今回の発表で、「ポイントゲッターズ」の由来をこう書いている。

「選手やチームが勝ち点を奪いに行くという意志はもちろん、ファン・サポーターのみなさんと一緒になってクラブ運営費を稼いでいく全く新しい仕組みです。新しい名称の元、日本のスポーツクラブ経営をまったく新しい方法で塗り替えていきます」

これに先立つ1月14日、鈴鹿はポイント事業を手掛けるエムフロ(本社・東京都渋谷区)とスポンサー契約を結んだことを発表している。この時点で「チーム名を両社が取り組む『ポイントサイトに連動したクラブ運営』の理念に近い名前に変更させて頂く予定です」と改名を予告していた。

「ポイント」という言葉が新クラブ名含めてそこかしこに登場するが、鈴鹿は独自のポイントサービスを展開している。クラブ公式サイトを見ると「お仕事」という一覧があり、通販サイトのようにさまざまなコンテンツを提供。美容品など物品の購入だけでなく、保険の相談、ネット回線工事、各種カード入会など、スポンサーの商品・サービスがずらりと並ぶ。アカウント作成のうえ「お仕事」を申し込むと、それぞれに応じた独自ポイントを獲得できる。たまったポイントは現金化できるほか、チーム強化資金として寄付することもできる。

サッカークラブは「非常にロイヤリティが高い顧客を抱えている」

ポイントサイトがスタートしたのは19年3月。クラブ名・ロゴ・エンブレム刷新は同サイトと大きく関わる。鈴鹿アンリミテッドFCを運営するアンリミテッド(本社・三重県鈴鹿市)の担当者は、J-CASTニュースの取材に対し、こう話す。

「これまでのサッカークラブとは違うことをやりたいという思いがあり、それがポイントサイトの活用でした。サッカーの入場料、グッズ収入、スポンサー収入といった基本的な売上の軸に加え、もう1つ収益の柱を作りたいという方針が根底にあります。

クラブ名をこれに即したものに変えることで、ポイントサイトという事業モデルを伸ばしていく姿勢を前面に出す狙いがあります。サッカーで点を取ることと、サイトでポイントを獲得することの2つの意味を掛け合わせた名前になっています。

ポイントサイトを活用いただくことで、クラブは広告主からの収入が得られ、サポーター・ファンの方々にはポイントという形で還元できる。そのポイントの寄付は、クラブだけでなく選手、いわば『推しメン』を指定して行うこともできます。サポーターとクラブ間でこうした循環を作りたいと思っています。

現代は『ポイ活』という言葉もあり、キャッシュレス化も急速に進んでいます。その中で我々としてもポイントサービスを充実させたいと考えています」

「サッカークラブには熱狂的なサポーターがおり、非常にロイヤリティが高い顧客を抱えていると言えます。IT企業とサッカークラブの結びつきも目立ってきています」と語る担当者。確かにJリーグでも、J1・鹿島アントラーズはメルカリ、ヴィッセル神戸は楽天、J2・町田ゼルビアはサイバーエージェントなど、ネット事業を展開する企業とパートナーシップを結ぶ例がある。

「その中で我々も、サッカークラブ×ポイントサイトという掛け合わせで、新たな価値を創造していきたいと考えています」(前出の担当者)

「既成概念にとらわれない」エンブレム

「中途半端が一番良くない。やるなら思い切ってやる」と考えた結果、名前やエンブレムというクラブの象徴を変えることを決断。「ポイントサイトをイメージできるもの」にした。スポンサーの意向で変更されたのではないかとする向きもあるが、あくまで鈴鹿側の意向が前提にある。

「我々は、成長するためにポイントサイトは必要不可欠なツールと考えており、推進するなら名前も変える必要があると議論してきました。協業先を探す中で、お付き合いのあったエムフロ様から、『そういう趣旨で名前を変えるのなら支援したい』という話を頂きました。サッカークラブが全面的にポイントサイトを運営していくことに新しい価値があると共感を得て、サポートいただくことになりました。大前提に、今後ポイントサイトで勝負していく方針があり、その覚悟をもって変更しました」(同)

エンブレムにも、確かなコンセプトがある。

「ポイントサイトは、サッカーファンの域を越え、より多くの方をターゲットにしています。そこで大事にしたのは、見た目がポップであること、取っつきやすいこと。クラブエンブレムといえば『格好いい』『強そう』といった雰囲気を感じるものが多いですが、そうした既成概念にとらわれないものにしようと考えました。実際『ゲームの絵のよう。かわいらしい』といったお声も頂戴しています」(同)

とはいえ、先のとおりネット上では「ダサい」「冗談でしょ」といった声が殺到している。

「良くも悪くも多くの方に注目していただき、ご意見をいただけることはプラスに捉えたいです。我々は『悪名は無名に勝る』という標語を掲げており、批判を受ける中で新しい考えが生まれると思っています。話題にしていただかないと、レッドオーシャンのサッカー業界で生き残ることはできません」(同)

電話などでの直接の抗議は来ていないというが、大事なのはクラブを支えるサポーターとの関係。この点、「サポーターの方々とはしっかり話し合い、引き続き応援していただける関係づくりをしていきます」と話している。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)