元若嶋津「闘病長期化」で臨む一門・稀勢の里の九州場所「吉凶」

 大相撲界に激震が走ったのは、10月19日。審判部長としてテレビ画面に登場することも多い、二所ノ関親方(元大関・若嶋津=60歳)が、冷たい雨が降りしきる午後4時20分過ぎ、二所ノ関部屋から750メートルほど離れた千葉県船橋市行田の路上で倒れているところを、通行人に発見された。
 「自転車に乗って走行中、転倒して頭部を強打した模様で、発見された直後は意識もあったが、間もなく意識不明の重体に陥ったという。船橋市内の病院に搬送され、午後5時20分ごろから4時間半におよぶ開頭手術を受けたのです。手術内容は側頭部を強く打ちつけて陥没骨折したため、溜まった血を抜くというものでした」(スポーツ紙記者)

 二所ノ関親方が発見されたのは住宅街。千葉県警によれば、体の右側を下にした状態で車道側に横向きに倒れていたという。
 手術後、記者会見した部屋付きの湊川親方(元小結大徹)は「手術は無事に終わりICU(集中治療室)に入っている」「意識は一度戻った。今は昏睡状態というか、眠っている」と状況を説明。21日の段階では眠らせるために行っていた投薬の量を減らし、「体がちょっと反応し、少しずつ体を伸ばそうという気持ちが見える」と話し、危機的な状況は脱した。

 二所ノ関親方は、鹿児島県熊毛群中種子町出身。二子山部屋に入門し、1975年春場所で初土俵を踏んだ。精悍な顔立ちと浅黒い体で“南海の黒豹”と呼ばれ、'82年九州場所後に大関に昇進。綱取りの夢は叶わなかったが、2度幕内で優勝している。
 相撲ジャーナリストの中澤潔氏はこう語る。
 「入門当時、“土俵の鬼”とまで呼ばれた親方の初代若乃花から受けた稽古の厳しさは、ハンパなものではなかった。だからこそ二横綱、二大関を輩出したんです。二所ノ関親方も、あの細い体でそれに耐え大関に昇進して2度も優勝しているのですから、今もそのことは相当本人の自信になっているはずです。しかし一方で、自分の体を過信したところもあったのではないか」

 '85年には元アイドル歌手の高田(旧姓)みづえさんと結婚。同年9月にホテルニューオータニで行われた披露宴の模様はテレビ中継され、話題を呼んだ。
 「'80年代はまだ力士が芸能人と結婚することは珍しかったが、力士の社会的な地位も高く、それこそ女性にとって大関、横綱の嫁になることは憧れでもあったと思う。あれは、みづえちゃんが若嶋津の男っぷりに惚れ込んだんですよ」(同)
 そのみづえさんは二所ノ関親方の手術後、気丈に報道陣に対応する姿が見られた。

 それにしてもなぜ今回、このようなアクシデントに見舞われたのか。二所ノ関親方は19日朝も部屋の朝稽古に参加し、その後、いつも通っているサウナに自転車で向かったという。
 「力士は稽古が終わると風呂に入る習慣があり、その流れでサウナ好きな親方や力士は多い。2年前に亡くなった北の湖前理事長もサウナ好きでした。手っ取り早く減量できるメリットもあるからじゃないでしょうか。二所ノ関親方も健康には人一倍気を使っていたので、愛用者だったのでしょう。ただ、熱いサウナや冷たい水風呂に出たり入ったりするので、体への負担も大きい。脳か心臓に重大な異常が起こったのかもしれません」(担当記者)

 この体調異変説を裏付けるかのように、サウナで具合が悪そうに手すりに寄り掛かっていたり、浴槽から出るときに転倒したという目撃情報もある。さらに着ていた服が泥だらけだったことから、発見される前にも転んでいた可能性も出てきている。そこで懸念されているのが、引退前から患っていた糖尿病の影響だ。
 世田谷井上病院の井上毅一理事長が言う。
 「糖尿病の人は、元気そうに見えても血管がもろくなりがちで、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞を起こしやすい。親方はサウナで倒れ少し出血し、帰りに転倒してさらに出血した可能性がある。脳出血は早く治療すれば後遺症が残らない可能性もありますが、当分、リハビリが続くと思われます」

 湊川親方は会見で「親方も頑張っている。早く目が覚めて自分で立てるぐらいに頑張ってほしい」と語っているが、11月12日に初日を迎える九州場所(福岡国際センター)は休場となる可能性が高い。
 「二所ノ関親方が理事として引っ張る二所ノ関一門はいま、正念場です。今年の初場所後、念願の横綱になった稀勢の里は九州場所に復活を懸けているし、夏場所後に大関になった高安は早くもかど番。リーダーの不慮のケガが影響しないか、心配される。また、八角理事長にとっても体制を支える大事なブレーンの1人。20日午前、さっそくお見舞いに訪れていましたが、入院が長期化すれば、協会運営にも支障をきたしそうです」(協会関係者)

 前出の中澤氏は、こう声援を送る。
 「体力に自信があっても、とにかく病気を甘く見てはダメ。定年まであと5年でしょう。夫婦でこの危機を乗り越えて、しかるべき人に後を託さないと。残った弟子がミジメですよ」

 二所ノ関親方の復活を後押しする意味でも、九州場所では稀勢の里をはじめ一門の活躍が期待される。

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