原監督が方針転換“163キロ右腕”大船渡高・佐々木獲り

巨人・原辰徳監督(60)の決断がドラフトの歴史を塗り替える。史上初、「12球団すべての1位指名」が見られるかもしれない――。

 まだ夏の甲子園大会は予選すら始まっていないが、プロ野球の全スカウトが最も熱い視線を送っているのは、岩手県大船渡高・佐々木朗希投手で間違いない。

 「今春のセンバツ大会の決勝戦から2日後、侍ジャパンU―18の強化合宿が行われ、甲子園には行けなかった大船渡の佐々木も招集されました。日米18球団、45人のスカウトが集まり、約半分が座席を確保できず、立って佐々木のピッチングに見入っていました」(スポーツ紙記者)

 今年のドラフト候補とされる高校生には、佐々木以外にも好投手が多い。星稜(石川)・奥川恭伸、横浜(神奈川)・及川雅貴、創志学園(岡山)・西純矢らがそれで、明治大の森下暢仁も評価が高い1人だが、佐々木はすでに別次元という評価を受けている。高校生ながらあの大谷翔平をしのぐ163キロの球速をマークしたからだが、理由はそれだけではない。

 「郷土愛と地元意識、そして自分の周囲にいる人たちを大切にする性格。佐々木は大阪桐蔭をはじめ、全国各地の強豪校から誘われましたが、すべて辞退しています。地元の公立高である大船渡に進学した理由は、『頑張れば報われるんだ』ということを後輩たちに示したかったからと聞いています」(地元関係者)

 原監督を動かしたのが、この「地元愛」だ。原監督は第一次政権の時からフォア・ザ・チームの重要性を説き、「ジャイアンツ愛」なる言葉を多用した。これに近い考えを、佐々木が持っていると知ったのだ。

 「佐々木は指名された球団に行こうとしています。12球団が佐々木にゾッコンなのはそのためで、しかも、今年は抽選に外れても例年よりもレベルの高い投手がたくさん残っています。’89年のドラフト会議で野茂英雄が8球団から指名されましたが、その記録は現在も破られていません。当時も『野茂がダメでも他に好投手がたくさんいる』との背景がありました」(ベテラン記者)

 史上初の「全12球団指名」となる可能性があるのだ。

 また、163キロの新記録について、こんな“伝説”も残されているそうだ。

 「佐々木はU―18の合宿中に163キロをマークしましたが、本当は昨夏の岩手県大会でも163キロを出していました。県高野連、審判、マスコミ、学校関係者はバックスクリーンに表示された『163』を見て、計測器が壊れていると、みんなそう解釈してしまいました」(スポーツライター・飯山満氏)

 実際、スタンドのザワつきはほんの少し。ほとんどが驚かなかったそうだ。「機械の故障」と解釈された理由もあるが、その1球は失投だったという。

 「指先に引っかかって低めに行った棒球で、速かったけど、浮き上がって来るような威圧感はありませんでした。U―18で出した163キロも指先に引っかかった棒球です。スタンドから見ていたら、150キロ台の真っ直ぐのほうが速く感じられました。プロのスカウトは、163キロの球速よりも、力感のない、それでいてダイナミックな投球ファームから繰り出される常時150キロ超のストレートを評価しているのでしょう」(同)

 また、盛岡には佐々木に関するスゴい話が他にもある。中学の軟式野球部に所属していた佐々木は、公式試合ではなかったものの、外野守備に入っており、そこで「センターゴロ」をやってみせたというのだ。まるでマンガみたいな話だ。

 こんな佐々木について、12球団スカウトは、「まだ伸びしろがある」と見ている。190センチ超の長身で身体能力も抜群。柔軟性もあり、故障歴もないとなれば、大リーグのスカウトまでが熱視線を送るのも当然だ。
「今、プロに入っても、この直球のキレなら3本の指に入る」

 こう語ったのは巨人の長谷川国利スカウト部長だが、同部長は星稜・奥川のピッチングを見た時、「今すぐプロの世界に入っても、5本の指に」とも話していた。奥川もスゴいが、「5本と3本の差」があるようだ。

 一部メディアでは、巨人が今季も優勝を逃すようなことになれば、即戦力補強に切り換えると報じられている。戦況に応じ、1位指名候補が変わることは避けられない。しかし、リスクを冒してでも獲りにいく価値のある投手なのだ
「戦況に応じて」と言えば、こんな声も聞かれた。

 「巨人は、エースの菅野智之が今年10月で30歳を迎えます。今季、序盤戦の不振を考えると、後継者育成を急がなければなりません。『未来のエース』と言われる’16年のドラフト5位、髙田萌生がまだ一軍で勝利していないことを考えると、後継者の育成を早めなければなりません」(前出・ベテラン記者)

 昨年のドラフトでは根尾昂の指名に失敗し、2回目の入札でも吉田輝星の獲得を見送っている。その時、1位指名した高橋優貴は、3勝3敗の成績(6月17日現在)。巨人のドラフトは間違っていなかったわけだが、物足りなさを指摘する関係者も多い。ペナントレースの行方に関係なく、ドラフト会議が近づくに連れ「1位・佐々木」の機運は高まっていきそうだ。

 「目下、佐々木は剛速球を封印し、投球術を勉強中です。130キロ台後半から140キロ台半ばに球速を抑え、低めに変化球を集めるピッチングに徹しています。チーム全体の底上げも目的で、2番手以降のピッチャーを起用する試合も増えています」(同)

 この抑圧された時間も、チーム愛を学ぶ機会となるだろう。「令和の怪物」は、12球団1位指名の快挙でいっそう箔が付きそうだ。

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