武井壮、マイナー競技ゆえの“絶望”を胸に…フェンシング協会会長就任の真意を告白

武井壮、マイナー競技ゆえの“絶望”を胸に…フェンシング協会会長就任の真意を告白

日本フェンシング協会会長に就任した武井壮

日本フェンシング協会(以下、フェンシング協会)新会長就任で話題のタレント・武井壮。競技未経験である武井の就任経緯について、ネット上では様々な憶測が飛び交ってもいた。しかしその背景には、フェンシングという競技の進化とともに、スポーツ界の在り方を変えていきたいという彼の強い想いがあった。自身の芸能活動をマイナーからメジャーへの過程だったと語る武井に、陸上十種競技で日本新記録を打ち出すほどの選手でありながらもマイナー競技ゆえの“絶望”から引退を決意した過去や、マイナー競技の課題について聞いた。

■「選手個人の強さだけでは普及に繋がらない」、競技ファン増やす基盤づくり目指す

 フェンシング協会は、北京五輪での銀メダリスト・太田雄貴氏が会長に就任した2017年以降、同競技の“メジャー化”に取り組んできた。武井は新会長としてフェンシングやマイナー競技が目指す“メジャー化”という大きな課題を継いで挑戦する。

――このたび、フェンシング協会会長にご就任されました。これからフェンシングのために武井さんがやるべきことは、どのようなことだと考えていますか?

【武井壮】太田雄貴前会長は大会をエンタテインメント化したり、スポンサーの開拓をしたり、マイナーだったものをメジャーにしていく活動を精力的に行ってきた方です。選手の活動環境や生活環境は確実によくなりました。でも、その中で、フェンシングのプレイヤーやフェンシング協会の会員登録者数を、目標値まで持っていくことができなかったのが心残りだったのではと思っています。

――メジャー化への課題はやはり競技にかかわる人口なんですね。

【武井壮】僕も、スポーツって選手個人が強くなるだけでは、普及には繋がらないと思っていて。そこにはさらに、そのスポーツを楽しんで観てくれる人や、プレイする人の数が増えることが必要です。さらに、選手たちが活動できる場所を増やして、多くの人がそれに触れられる場所を作らないとならないですね。プロ野球のように多くの人が知っていて、選手のファンであることが大事です。

――確かに、野球をプレイした経験はないけど野球ファンという人は多いですね。

【武井壮】メジャーかマイナーかとは、つまらないかどうかじゃなくて、知っているかどうかの違いだと思うんです。野球だったら、キャッチボールやバッティングセンターといった子ども時代の遊びが原体験となり、選手の技術の凄さが理解できる。それと同じように、フェンシングの知識を持って楽しんで見る人、フェンシングを楽しんでプレイする人を増やすというのが、まずは僕が着手するところなのかなと考えています。

――今現在では、なかなかフェンシングに触れられる機会は少ないですからね。

【武井壮】そうなんです。フェンシングはユニフォームやポイントを判断する電飾など、簡単に用意できるものではないため非常に参入障壁の高い競技です。そこに触れてもらう機会を作るというのは、非常に難しい。そういう意味では、例えばまずはフェンシングと似通った特性を持つレクリエーションを開発して、人々に興味持ってもらう、遊んでもらうことからはじめる必要があると思っています。

――ご自身も陸上十種競技選手として活躍された経験を持っています。選手視点でのメジャー競技ではないがゆえの困難さはありますか?

【武井壮】競技って、マイナー、メジャーにかかわらず、必要な技術と能力を高めていくというのはタフさが必要なことですし、一日の何時間もそこに費やしていかなければなりません。その中でマイナーな競技だと、小さい頃から夢中になって打ち込んできた自分の競技は、「頂点をとってもプロ野球選手のような生活が待っているわけではないんだ」といつしか気づかされるんです。だからマイナースポーツの選手のほとんどが、途中で手にした技術や経験を放棄せざるを得ません。業界に費やした労力がリターンされない、労力が社会的知識や経済活動につながっていないところに、足りなさを感じるんです。

――ご自身にもそのような経験が?

【武井壮】僕自身、陸上十種競技の日本チャンピオンになりましたけど、例え五輪に出たとしても知られない存在であり、野球選手のような豊かな生活に繋がらないんだということに絶望して引退をしました。トップクラスの能力を持つ選手たちの労力が1円にもならない、選手の業績が社会的地位の向上に繋がらないのは悲しい現実です。この状況を打破するには、スポーツが産業として発達していくことが大切であり、そこを打破していくことがマイナーからメジャーへと進化する第一歩だと思うんですよね。

――経済的な基盤をつくることが課題なんですね。

【武井壮】そうなんです。競技団体が独自の収益を得ていけるようにすることが大切。東京五輪以降は補助金も減少することが考えられますし、スポンサーも、コロナ禍によりこれまで通りとはいかない。その業界にたくさんの人が注目して、足を運ぶんだという状況を作らないとスポンサーのメリットを確保できない。フェンシング、またはフェンシングに準ずるレクリエーションが広告価値を持つ業界にしていく必要があると僕は思っています。でないと、スポーツはただの趣味になってしまい、苦しい時に必要のない存在になってしまう。

――コロナ禍で、スポーツやエンタテインメント全般が経験した課題でもありますね。

【武井壮】フェンシングに準ずる遊びが確立されてくれば、いろんな発想をもとに楽しみ方も広がっていく。様々な人がフェンシングとの距離を縮めるためのエンタテインメントも作っていきたい。“フェンシングは魅力的なんだ”と訴えることよりも、フェンシングを魅力的にみせるためにはどういう手立てが必要なのかを考える。僕がこれまでの芸能活動でやってきた、マイナーだった自分をメジャー化するエンタテインメントの作り方は、そこに近い作業です。まずはフェンシングをだれもが知るものにする、ここです。

――いよいよ五輪開催です。

【武井壮】選手たちの人間的な魅力や、フェンシングの素晴らしさを伝えていけたらいいなと思います。例えば、エペ(フェンシング種目の1つ)の見延和靖選手。身長177cmなんですけど、リーチは197cmあるんです。その長いリーチの上で、剣のフレンチグリップ(持ち手)の先端ギリギリのところを握るテクニックを使います。腕が伸びてくるような攻撃で、世界ランキング1位の経歴をもつ選手なんです。そんな選手が日本にもいるということを知ってもらって、その戦い方を楽しんでほしいです。

――選手たちのバックグラウンドを知ると試合の見どころもわかりますね。

【武井壮】そしてもう一人、エペの佐藤希望選手。五輪3大会連続出場していますが、1大会目に出場したあと出産されて復帰、優勝して二度目の五輪出場権を獲得。二度目の五輪出場のあとにまた出産されて、また全日本で優勝して、復帰して三度目の五輪の出場権を獲得した選手なんです。ママさんでありながら最強のフェンサーでいる、すごい存在なんです。

――フェンシング協会会長としてのご活躍もみなさん期待していると思います。今後の展望について教えてください。

【武井壮】僕自身の活動は、今までとまったく変わりません。本業はタレントですし、発信するためには武井壮自身がメジャーである必要があると考えています。僕が芸能生活10年間でやってきたことは、僕自身が武井壮をメジャーにすることだったので、その経験を通してフェンシングをメジャー化させていきたい。そして僕が会長であるなんていう話題が些細なこととして忘れられるくらい、選手の活躍に注目してもらって、それを継承していける土台を作っていきたいですね。これからのフェンシングに、ぜひ注目してください。

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