トヨタが圧勝ワンツーだったル・マン24時間の真相…アロンソ快走とスローダウンのワケ

トヨタが圧勝ワンツーだったル・マン24時間の真相…アロンソ快走とスローダウンのワケ

「正直やり切った感じしかない。悔しさとかはないです」と7号車の可夢偉は語った。来年のル・マンでは表彰台の真ん中に立ってほしい

通算20回目の挑戦で悲願の「ル・マン制覇」を成し遂げたトヨタ。

昨年の覇者ポルシェがLMP1−H(ハイブリッド)クラスから撤退し、事実上「ライバル不在」だったとはいえ、1分先に何が起きるかわからないのがこのレース。週プレ本誌26号のプレビュー記事でも、必ずしもトヨタ楽勝とは言い切れないと指摘していた。

しかし! いざ、ふたを開けてみれば、結果はトヨタの完璧なワンツーフィニッシュ! 優勝した8号車(S・ブエミ、中嶋一貴[なかじま・かずき]、F・アロンソ)が3位入賞のノンハイブリッド車、レベリオンに対して12周の大差をつける文字どおりの圧勝だった。

ということでトヨタ初勝利に沸く現地から、プレビュー記事にも登場いただいた、モータースポーツジャーナリストの世良耕太(せら・こうた)氏と川喜田 研(かわきた・けん)氏による「ル・マン総括&懺ざん悔げ対談」を前編記事に続きお届けする!

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■アロンソはやっぱり並じゃない

川喜田 一方、レースそのものに目を向けると「トヨタ独走」で退屈なル・マン24時間だったかと言えば、必ずしもそうではなかった。

世良 そうだね、特にブエミ、中嶋、アロンソ組の8号車と可夢偉、M・コンウェイ、J−M・ロペス組の7号車が朝方まで繰り広げた激しいバトルは、トヨタ同士が競いすぎて同士討ち…という最悪の事態を想像しながら見ているとドキドキした。

川喜田 どうやら可夢偉の7号車はレース序盤からずっとデフに問題があって、セッティングをアジャストできなかったらしいけど、そんな問題を抱えているとは感じさせないぐらい速かったね。

スタートから約16時間後、朝の7時前に8号車の一貴が7号車の可夢偉との直接対決を制してトップに立ったシーンは、今回のレースのハイライトだったと思う。

世良 その一貴vs可夢偉の対決をお膳立てしたのが「夜のアロンソ」の快走だよね。ほかのチームメイトと違ってトヨタのマシンでWECを戦うのはまだ「2戦目」。それに公道を使ったル・マンの特殊なコースで、それも夜のセッションで、あれだけ安定して速いタイムを刻み続けられるなんて、アロンソはやっぱり並のドライバーじゃないんだとあらためて思った。

村田さんに聞いたら、当初、3スティントを担当する予定だったのにアロンソが「まだ行けるよ!」っていうんで4スティントにしたらしい。

川喜田 結局、アロンソがマシンに乗り込んだ時点で2分以上あった首位7号車との差を40秒近くまで縮めてみせたんだからすごいよね。

あの「夜のアロンソ」の快走があったから明け方の逆転劇につながった。そして、あそこで8号車がトップに立ったことで、レースの大勢が「ほぼ」決した感はあった。

世良 ドキドキしたといえばもうひとつ、レース終盤、残りあと1時間半ぐらいで、可夢偉の乗る7号車が突然スローダウンしたときはビックリした。その理由が「可夢偉が給油のピットストップに入り忘れたから」って聞いて、さらにビックリしたけど(笑)。

川喜田 ホントだよね。高速道路でサービスエリアに入り損ねるのとはワケが違うんだからさあ(笑)。

可夢偉自身は「リスクを冒してまで8号車と競うのをやめたので集中力が切れて、うっかり…」って言っていたけど、見てるほうは「ええっ、また何か起きたの?」って心臓が止まりそうになった。

可夢偉とすれば「アロンソ優勝」を期待する周囲の既定路線になんとか一矢報いたいと、内心かなりのライバル心を燃やしてたはずだから、そのチャンスがなくなって気持ちにポッカリと穴があいたのかもしれないなぁ…(涙)。

世良 うん、そうかもねぇ。

■トヨタは来年、ル・マン連覇を!

川喜田 最後に、こうして20回目の挑戦でル・マン初制覇を成し遂げたトヨタですが、今後に期待することは?

世良 それはやっぱり、今のハイブリッド規定で戦う最後のレースになる来年のル・マンで連覇を果たして、トヨタが「有終の美」を飾ることだと思いますね。

今回のル・マンでは2020年以降の新レギュレーション概要が発表されて、今のLMP1クラスに代わり、新たに通称「ハイパーカー」と呼ばれる市販のスーパースポーツカーに似た形状のマシンがル・マンの新たな主役になる。そのマシンに搭載されるハイブリッドシステムは、今のトヨタTS050ハイブリッドのように、最新技術をすべて突っ込んだ「ガチ」のハイブリッドじゃなく、安価でシンプルなモノになるらしい。

川喜田 その意味でも来年のル・マンは「トヨタ・ハイブリッド」によるル・マン挑戦の集大成ってことか…。

世良 主催者のACO(フランス西部自動車クラブ)は今年の結果を見て、来年はもっとノンハイブリッドに有利な「性能調整」を考えるだろうし、そのハードルをクリアして、ぜひトヨタにはル・マンを連覇してほしいよね!

(取材・構成/川喜田 研 写真提供/TOYOTA GAZOO Racing)

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