ロシアW杯、ある意味カオスな鉄道での移動。1等と3等の差がありすぎ!?

ロシアW杯、ある意味カオスな鉄道での移動。1等と3等の差がありすぎ!?

本田圭佑のゴールで追いつき、日本代表は2−2でセネガルと引き分けた

6月25日、エカテリンブルクで日本がセネガルに2−2で引き分けた後、飛行機でヴォルゴグラードに到着した。国内だが、2時間の時差がある。ロシアの国土の大きさを思い知らされる。エカテリンブルクはシベリアに近く、夜になると肌寒くなるほどだったが、こちらは南に位置するだけに日中は気温30度を超えた。

「ヴォルゴグラードは生活するのが難しい町ね。夏は30度で、冬はマイナス30度ですから」

メディアセンターでボランティアスタッフをしていたセルゲイくんは流暢な日本語で言った。ウラジオストクの大学で日本語を勉強中だそうで、今年の夏には大分に行くらしい。

「ええ〜と」

問いかけに対し、答えを考える様子に愛嬌がある。日本文学に心惹かれたことが興味を持ったきっかけらしい。太宰治、大江健三郎、夏目漱石、三島由紀夫が好きだとか。日本人の大学生も少しは見習って読んだほうがいい。

「ロシアはウルグアイに負けましたが、ゴロビンはいい選手です。取材してください」

セルゲイくんは控えめな笑顔を浮かべながら言った。ロシアの人たちは親切、丁寧で心優しい。モスクワ、サランスク、カザン、エカテリンブルク、そしてヴォルゴグラード。訪れた町で感じの悪い人はいなかった。

驚くほどに、治安もいい。筆者はヴォルゴグラードで郊外のアパートメントを借りたので、シャトルバスの停留所から2km近く距離があった。ウーバーを使えず、タクシーが流れている気配もない。そこで夜になって涼しくなっていたので、同行カメラマンとのんびり歩いて帰った。通りは街灯もないところも多い。

以前、スペインに住んでいたからわかるのだが、街灯がないところは危険地域であることが多い。決して近づいてはならないが、ここでは危険な空気は少しもなかった。まず、落書きがひとつもない。たまたま安全だったともいえるが、日本の田舎の夜道に近いだろう。

20ヵ国以上で取材を続けてきたが、ロシア人ほど気のいい人々は見かけたことがない。こちらがわからなくても、ロシア語で押し通すおばあちゃんも、表情は善良でチャーミング。悪意が少しもない。

もっとも、人々の善意で物事が動いている一方、インフラなどの効率性は厳しいものがある。W杯開催で飛行機代が高騰。しかも、基本的にモスクワから放射線状に便が出ているので、地方から地方の移動は時間もかかる。

そこで、割安な鉄道ということになるのだが、W杯開催都市間の移動は寝台列車で10時間はザラ。エカテリンブルクなど25時間かかる場合もある。鉄道は1、2、3等があって、1等は個人の部屋で食堂車にも行けて、割と快適。

しかし、2等は4人部屋のコンパートメントで、3等は2段ベッドが車両に所狭しと並ぶ。担架のようなサイズのベッドに布団を敷くのだが、車両間の移動ができず、寛ぐスペースもない。とにかく眠るべしだが、鼻をつく体臭とゴーゴーといういびきに苛まれる。タフな精神が必要になるだろう。

大きなスーツケースを持ち込んだ場合は、体力も必要になる。20kg以上の荷物を頭上の二段ベッドのさらに上の棚にしまい込まなければならない。鉄道旅行をするには筋力も要るということだ。

車両は古いものが多い。ただ、トイレも含め、隅々まで清潔に保たれている。整然とした様子がロシアらしいといえば、ロシアらしい。物を大事にするように教育を受けているのだろう。

「日本のゲームは盛り上がりますね。あ、ゲームでいいんですか? 試合と言うが、正しいですか?」

冒頭のセルゲイくんは、少しでも正確に日本語を覚えようと熱心だ。こちらの言葉をいちいちスマートフォンにメモっていた。

それを見守りながら、このロシアで日本代表が戦い続ける風景をもう少し見ていたい、と思った。

6月28日、日本はポーランドに引き分け以上で決勝トーナメント進出となる。たとえ負けても、コロンビア対セネガルの結果次第では勝ち上がれる。しかし、星取り勘定に意味はないだろう。

どうなったとしても、旅はまだしばらく続く。29日には決勝トーナメント、ウルグアイ対ポルトガルの試合取材だ。今回は、鉄道でなく飛行機を選択した。ただ、それも夜便でモスクワを経由し、空港でトランジットし、早朝の便でソチに向かう。

冬季五輪の開催地として知られるソチはジョージアとの国境近くに位置し、ヴォルゴグラード以上に暑いという。

(取材・文/小宮良之 写真/JMPA、小宮良之)

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