"鬼ヤベ〜"五輪解説で話題の瀬尻 稜さんも登場! 今から始めるスケートボード超入門

ユルイ解説に好感。一躍、時の人になった瀬尻 稜さん

メダルラッシュに沸いた東京五輪のスケートボード。その熱気に魅了され「俺もスケボーやってみたい!」と思うのは、決して恥ずかしいことじゃない! 10代の頃にスケボーと無縁だったそこのあなたもこれを読めば立派なスケーターの仲間入り!? さぁ、スケボー片手にパークへ繰り出そう!

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■順位より"自分らしく"がスケーターの神髄

2016年から本場アメリカに活動拠点を移して研鑽を重ねた堀米雄斗。18年にロンドンで行なわれた世界最高峰の大会「ストリートリーグ」で日本人初優勝。東京五輪ではベストトリックで高得点を連発! 見事、スケートボード男子ストリート部門で金メダルを獲得。初代王者に輝いた

スケボーブームの到来だ。きっかけはもちろん東京五輪。新種目として追加されたスケートボードのストリート部門で堀米雄斗(ほりごめ・ゆうと)と西矢 椛(にしや・もみじ)が、パーク部門では四十住さくら(よそずみ・さくら)が金メダルを獲得するなど、日本人選手が大活躍。

その影響でスケボー界にも特需が起きており、「競技後、飛躍的に売り上げが伸びています」(ムラサキスポーツ)、「堀米選手が金メダルを獲(と)ったその瞬間から通販での問い合わせが殺到しました」(インスタントスケートボードショップ)と、あらためて五輪の影響力のすごさを実感。

そんな五輪で、競技と同じくらい話題となったのが、ストリート部門の中継で「鬼ヤベ〜」「ハンパね〜」など、飾らないユル〜イ解説でバズりまくったプロスケーターの瀬尻 稜(せじり・りょう)氏だ。その瀬尻氏にあらためて解説の感想を聞いてみた。

「いや〜、最初は緊張してドキドキだったんすけど、大会が面白すぎてどんどん楽しくなっていきましたね。(実況アナウンサーの)倉田(大誠)さんがマジやばくて、スケボーの知識ゼロからめちゃめちゃ勉強して、最終的には俺が技名を言ったら倉田さんが技の解説をしてくれたり、ホントに助けられました」

"ゴン攻め"や"ビッタビタ"といったスケボー用語が注目を集めたが、これらの独特なワードはスケボーシーンではよく使われるのだろうか。

「少し上の世代のスケーターにはゴン攻めが通じなかったりするし、俺もよくわかってないんすよね。スケーターのビデオの中で出てくる言葉が実際のストリートでも使われるようになるけど、スケーター仲間によってはやる言葉は違います。

俺はほかに、友達がクソヤベェ技を乗っけた(成功した)ときに"Holy Shit(マジかよ)"なんて言葉を使ったりします。外国のスケートビデオの影響っすね。小学生のときから見てたから、外国人スケーターの口癖をマネして、学校で"フ○ック"ってつい叫んじゃって、先生によく怒られてました(笑)。どっちにしても自分たちが使ってた言葉がこんなことになるなんて不思議な気分。流行語(大賞)? 取れたらヤバイっすね!」

そんな解説ばかりフィーチャーされるが、瀬尻氏も世界トップクラスのスケーター。今回の熱い戦いを見て、次回の五輪に出場したくなったのでは?

「見ていて一緒に滑りたいなーとは思ったっすけど、出たいかというとあんまり......。大会のレベルが本当に高いんすよ。みんな命かけてスゴい技を狙ってる。俺が出ようと思ったら大会のための練習を毎日毎日続けて、それでギリギリ出られるかどうかという世界。もちろん見てて興奮はしましたけど、そこを目指そうとはならないっすね」

そんな熾烈(しれつ)な代表争いを制して出場した選手たちだが、彼らは失敗しても明るく、ライバル同士でたたえ合い、勝ちにこだわらない姿が印象的だった。

「もちろんほかの大会に比べると、五輪はみんな国を代表してきてるから一発かましてやろうって気持ちは大きいはず。でも、だいたいのスケーターはスケボーが楽しくてやっているんで、自分が一番になってやろうってよりは、自分らしく滑ろうって意識の人が多いと思うっすね」

"自分らしく"。なんて聞こえのいい言葉なんだ。「スケボーって楽しそう、俺もやってみたい!」、そんな読者の心の声が聞こえた気がしたので(!?)、ここからは青春時代にスケボーに触れてこなかった人のためのスケボー入門講座をお届けだ!

■初心者でもパークへ行って大丈夫!

茶道&スケボー、二刀流のプロスケーター赤熊寛敬さん

教えてくれるのは、プロスケーターとして日本のスケボーシーンを長年引っ張ってきたレジェンド、赤熊寛敬(あかぐま・ひろたか)さん。そもそも大人になってからスケボーを始める人はいるんですか?

「はい、全然いますよ。最近は、子供と一緒に始めるお父さんもけっこういます!」

それを聞いて安心。とはいえ、素人は何から始めていいのかすらわからないのですが......。

まずはこれだけそろえよう! 1.スケートボードはデッキとトラックとウィールなどから組まれている。初心者向けのコンプリートセットを購入するのもあり。2.スケボーツールはトラックのナットを緩めたりウィールの調整などに必要。3.頭を守るためのヘルメットも必需品

「まずはスケボーを買いましょう(笑)。デッキ(板)は、ざっくり子供用と大人用に分かれていて、大人用なら一般的に長さは31インチ前後、幅は8インチ、ウィール(タイヤ)は52mmくらいで大丈夫だと思います。トラック(デッキとウィールをつなげる金具)は、ウィールとの相性だけど、ハイ(車高が高い)だと安定性がなくなるので、ショップの店員さんに組み合わせを相談してみてください。

あとはグラフィックがカッコいいと思ったものを選べばOK。価格は、初心者のうちはあまり壊れるようなこともないので、どうせなら1万5000〜2万円くらいでそろえるのがオススメ。ディスカウントショップなどの安物は、全然進まなくて乗りにくいので避けたほうがいいですね」 

スケボーに適した服装は?

「動きやすければなんでもいいと思います。ただ靴はランニングシューズのような爪先が上がっているタイプだと危ないので、スリッポンなど靴底がフラットなものがいいでしょう。それとヘルメット。肘や手首を守るのも大事ですが、まずは頭。ヘルメット着用を義務づけるパークもありますが、そういうルールがなくても初心者はヘルメットをかぶっておくと安心です」

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準備完了! どこで練習すればいいかを教えてください!

「やはりスケートパークですね。よくストリートでうまくなってからパークデビューしようとする人がいますが、法的規制もありますし、特に初心者はストリートだと車や歩行者にぶつかりやすく非常に危険。パークは上級者もいて勉強になるし、初心者だからって恥ずかしがる必要はありません。

ただし、パークには滑る流れがあって、流れに逆らうとほかのスケーターとぶつかって危ないので、パークに入ったらまずはどんな流れでみんなが滑っているのかを確認してください」

さぁ、ここからは実践だ。今回はスケボーにおける3つの基本動作についてレクチャーしてもらった。

《ステップ1》プッシュ

いわゆる"助走"。見た目はとても簡単そうだが、意外にもコツがいる。

「前足はノーズ(板の先端)側2列目のビスあたりに置き、後ろ足で地面を蹴ります。重心が左右にブレると真っすぐ進まず、すぐにバランスを崩してしまいます。頭を板の真上に乗せることを意識してください。ちなみにスタンスにはレギュラー(左足が前)とグーフィー(右足が前)がありますが、"右利きだからレギュラー"という決まりはありません。乗ってみてしっくりくるほうで練習しましょう」

Push(プッシュ) 地面を蹴って前進する超基本動作も、素人には見た目以上に難しい。前足を乗せる位置は写真を参考に。頭は板の真上にくるようにしてバランスを取る。プッシュ後は蹴り足を乗せて、前足も横向きにする

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《ステップ2》チックタック

真っすぐ進めるようになったら、次は左右に軌道を変える練習だ。これをマスターすれば、滑走の自由度が増すぞ。

「テール(後ろの反り上がっている部分)を軸に、ノーズを左右に振ってその推進力で前に進みます。最初はなかなか前に進まないので、その場で体を振ってバランスを保つ練習をするといいですね。胸を張りすぎたり、体を屈(かが)みすぎたりするとフラつくので、軽い前傾姿勢が○。ポイントは、右に振る場合、先に上半身を右に振ってその後に板がついてくるイメージです」

Tic−Tac(チックタック) ノーズを浮かせてジグザグに進む。後ろ足をテールの根元付近に、両足の爪先は板から出すぎないように置く。最初は前に進まないがその場で体を振る感覚を覚えよう

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《ステップ3》オーリー

方向転換やカーブができるようになったら次はジャンプ。これができれば脱初心者だ。

「ジャンプをするときの後ろ足の踏み込みで、テールを地面に叩き、その反動で板を宙に浮かせます。このとき、後ろ足でしっかりと板の中心をはじかないと板が真っすぐ上がりません。親指のつけ根が板の真ん中にくるように後ろの足を置きましょう。テール側を浮かすには感覚をつかむまで繰り返しの練習が必要です。板が浮いたら空中で前の足を使って板を平行にして、その流れで着地します」

Ollie(オーリー) 初心者最初の難関となるオーリー。最初は止まった状態から挑戦しよう。ジャンプの踏み込みの際に後ろ足でテールを地面にはじく衝撃でスケボーを浮かす。しっかりテールの真ん中を踏まないと板が真っすぐ浮かないので注意。一朝一夕ではできないぞ

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見るからに激ムズだが基本動作はわかったので、スケボー経験ゼロの筆者がアラフォー世代を代表して、パークで実践練習。

36歳、真夏の大冒険!と息巻いたものの、プッシュですら真っすぐ進まず......。チックタックも全然ダメ。そんな状態でオーリーを敢行するも、ぶざまに転倒&体を地面に強打。スケボーってこんなに難しいのか......。

それでも、炎天下、おっさんが汗だくで夢中になって練習してしまうほど、不思議な魅力を感じられるスケボー。何より、パークで疎外感を覚えるどころか、ほかのスケーターがにこやかに話しかけてくれたりと非常に気持ちのいい空間だった。

練習場所となるパークは都心部に限らず、地方にもどんどん増えている。これを読んだ未経験のあなたも、ぜひパークでスケーターデビューをしてほしい!(ケガにはくれぐれもご注意を)

9月3日(金)に発売された『週刊プレイボーイ38号』では、一発逆転を狙わねばならない重圧のなかで、見事に金メダルに輝いた日本のエース・堀米雄斗の独占ロングインタビューが掲載中!

●瀬尻 稜(せじり・りょう) 
1996年生まれ、東京都出身。AJSA(日本スケートボード協会)プロツアーシリーズでの史上最年少優勝など国内外の大会でタイトルを獲得。堀米選手とは彼が小さい頃から同じパークで練習した仲。

●赤熊寛敬(あかぐま・ひろたか) 
スケボー黄金世代といわれる1977年生まれのプロスケーター。2001年Wheel magazineのSKATER OF THE YEARなどを受賞。裏千家の茶道家としても活動。

取材・文/武松佑季 撮影/下城英悟 写真/JMPA代表撮影(堀米雄斗)

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