サッカーW杯「隔年開催」の可能性に宮澤ミシェル「いまのような価値がなくなってしまう気がする」

38f46e80c83a8e7b833763301fe6ab4f0df45b34.jpg
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第220回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、W杯の隔年開催について。FIFAが可能性を見出そうとしているサッカーW杯の隔年開催について、宮澤ミシェルは、「価値がなくなる気がする」と語った。

*****

W杯アジア最終予選の前半戦の天王山がいよいよ始まるね。日本代表がサウジアラビアとオーストラリアに2連勝して、初戦の出遅れを取り戻してくれることを期待しているよ。

そのW杯についてだけど、FIFAは「隔年開催」という可能性を見出そうとしているんだよね。個人的な意見としては、W杯が2年に一度開催されたら、いまのような価値がなくなってしまう気がするよ。

私が子どもだった頃はW杯に出場できるのは16カ国。それが1982年スペイン大会から24カ国に増えたけど、それでも日本代表がW杯に出場するなんてのは、夢のまた夢のようなことだった。

それでも1994年W杯アメリカ大会は、限りなく出場権に近づいた。でも、最後の最後で"ドーハの悲劇"だよ。あとワンプレーを凌いでいたら本大会に出られたし、出場国数が24カ国ではなく32カ国だったらって何度も思ったものだよ。

そうしたら、1998年フランス大会から32カ国が出場できるようになって、日本代表は初めてW杯本大会の舞台に立てた。そこから6大会連続でW杯に出場して、今回のW杯予選を突破できれば7大会連続での出場。日本サッカーが成長した結果でもあるんだけど、W杯の出場国数が拡大された恩恵を受けた部分だって確実にあるんだよね。

W杯は2026年カナダ・メキシコ・アメリカ共催大会からは、本大会出場国数は48カ国に拡大される。出場枠を増やして世界中の国と地域にW杯の門戸を開く意義があるのは理解しているんだけど、W杯のクオリティーという面から捉えると、出場国数が16カ国や24カ国だった時代の方が遥かに高かったんだよね。

本大会出場国が32カ国でもグループリーグ内のレベル差が開いていいて、本番は決勝トーナメントからっていう雰囲気もあるのに、それが48カ国になったらさらに間延びしたグループリーグになると思うよ。

そこに加えて、W杯を2年に一度開催しようっていうわけでしょ。もし実現したらW杯の価値が落ちていくんじゃないかな。

やっぱり強豪国同士がしのぎを削り合い、そこに予選から勝ち上がったダークホースが絡むからおもしろいのであって、単純に出場国を拡大してW杯の試合数が増えたとしても、魅力は薄まるだけだからね。

確かに隔年開催になれば、選手としての旬のタイミングでW杯に出られる可能性は高まる。カズ(三浦知良)だって、もし1996年にW杯があったとしたら、キャリアの送り方は変わっていたかもしれないよ。でも、4年に一度だからドラマが生まれるわけだからね。

現実問題として、隔年開催実現の可能性は低いと思うよ。隔年開催にする場合、サッカーカレンダーをどう書き換えていくのかっていう問題が一番大きく横たわるからね。

まずW杯予選をどうするのか、だよな。現状のW杯アジア予選は、日本代表はシードされるから2次予選からの出場だけど、1次予選から最終予選まで3年かかっている。予選の出場国数は減らせないから、抜本的に予選システムを変更するか、もしくはW杯を挟んで次のW杯予選を戦うしかないよな。だけど、大会はそれ以外にもある。EUROやアジア選手権などの各大陸選手権などもあるから、そこをどうするのか。

しかも、各国リーグ戦やカップ戦だってあるし、チャンピオンズリーグやACLやリベルタドーレス杯などの戦いだってある。大会があるってことは利権が絡むことだから、そう簡単に「大会を減らしましょう」が実現できるわけはないからね。

大会数は現状のままでW杯隔年開催にしたら、選手が壊れちゃうよ。スペイン代表でバルセロナのペドリが、2020−2021シーズンにリーガやチャンピオンズリーグ、EURO2020や東京五輪などで年間試合数が70試合超になったのが話題になったけど、W杯隔年開催になったら、それが当たり前になりかねない。

そんなことになったら選手がすぐに潰れていっちゃうよ。ペドリは18歳の若さがあったから乗り切れたと思うけど、選手は機械じゃないからね。

隔年開催案が出てきたのは、FIFAがサッカー界の主導権を握りたいってことなんだろうけど、やっぱり選手がいて初めてサッカーが成り立つってことを踏み外しちゃいけないよ。なんでもかんでも増やせばいいってもんじゃないと思うな。狭き門だからこそ憧れるし、そこを目指してレベルが高まるってこともあるはずだよ。

まあ、48カ国が出場できる隔年開催のW杯なら、日本代表が出られないなんてのはまずないわけだから、今回のようにW杯アジア最終予選に一喜一憂する必要はなくなるんだけどさ(笑)。それでも「出場できないかもしれない」ってのがあるから、W杯は大きな目標になっている。それを忘れないでもらいたいと思うよ。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太

関連記事(外部サイト)