今季のBリーグは激アツ。主力級の移籍が続いてチーム格差が大縮小

富樫勇樹(中央)らが中心となり、昨季に悲願の初優勝を果たした千葉は初戦黒星スタート。戦力差がない拮抗した試合が多くなりそうだ

9月30日、バスケットボールをプレーする場としては国内最高の舞台である沖縄アリーナで、ホームの琉球ゴールデンキングスが過去2度の優勝を誇るアルバルク東京を逆転劇で撃破。そのほかのカードも翌10月1日から行なわれ、Bリーグの2021−22シーズンが幕を開けた。

2016年に真のプロリーグとして発足してから6年。今季は本当の意味でのプロの興行が見られる、いわば「元年」の位置づけとなるのではないか。その意味するところは、チーム間の戦力差が縮まり、より多くの球団にポストシーズン進出と優勝を狙うチャンスが生まれつつあるということだ。

いわゆる実業団リーグが主流だったBリーグ以前と比べると、年々、選手の移籍が活発になってきており、このオフは一気に拍車がかかった。しかも"脇役"の選手のみならず、日本代表やオールスター級のスター選手が何人か新天地を求め、リーグを震撼(しんかん)させた。

その最たる例は、今夏の東京五輪にも出場した日本人選手ナンバーワンスコアラーの金丸晃輔、前日本代表でシューターの辻 直人、人気球団の宇都宮ブレックスの核として常勝チームをつくり上げたライアン・ロシターの移籍だった。

昨季のリーグMVPの金丸は8年プレーしたシーホース三河から、19−20シーズンにB1へ再昇格した島根スサノオマジックへ。辻は9年所属した川崎ブレイブサンダースから、昨季にB1へ上がってきた広島ドラゴンフライズへ。そして19年に日本国籍を取得したロシターは、リーグ最多2度の優勝を誇るアルバルク東京へと活躍の場を移した。

そのほかの主力級選手の移籍も目立ったが、一方で外国籍の選手の質も年々上がっている。従前は体の大きさとパワーを見込んでインサイドの選手を求める球団が大半だった。

しかし、ここ2年ほどは3Pシュートやドリブルにも長(た)けるアウトサイドの選手が如実に増えてきた。その意味では、アメリカやヨーロッパで展開される世界基準のバスケットボールに近づいてきているとも言える。

こうした変化によって、8チームが出場するチャンピオンシップ(プレーオフ)、タイトルを争うファイナル進出チームなど、シーズンの行方を占うことがこれまでよりもはるかに難しくなった。

実際に開幕週の結果が、今季が混沌(こんとん)としたものになる予感を強める。大型補強を施したはずの東京は琉球に、昨季準優勝の宇都宮はB2から昇格したばかりの群馬クレインサンダーズにそれぞれ2連敗。昨季の優勝チームである千葉ジェッツふなばしも、初戦で島根との点の取り合いの末に敗れている。

また、これまでは上位のチームと下位のチームの試合で大差がついてしまう試合も多かったが、そうした最初から勝敗が見える試合も減ってくるであろうし、勝ち目が薄いと思われる側が勝利する「アップセット」も増えてくるはずだ。

他方、今季のB1は18の都道府県にある22のチームで争われるが、選手移籍の影響でチャンピオンシップを争うチームの勢力図も塗り替えられるかもしれない。コロナ禍によってポストシーズンが中止となった19−20シーズンを除く4度のファイナルには、いずれも首都圏およびその近隣県のチームが進出している。こうした「東高西低」といわれる状況にも今季以降、徐々に変化がもたらされるのではないか。

それによって、集客面を含めた地方チームの盛り上がりにも違いが生まれてくる可能性がある。スター選手の補強には確かに投資としてお金がかかるものの、名のある選手が地元に来ることでアリーナに足を運ぶ人が増え(もっとも、現在はコロナの影響で入場制限があるが)、メディアの露出やスポンサーの獲得を促進する効果が球団側には期待できる。

それを最大化すべく、今後はさらなる「球団スタッフらのプロ化」も求められる。Bリーグ以前のように、いい選手を集めていれば勝てる時代は過去のものとなりつつある。フロントは経営力をつけながら地元行政や企業を、そのほかのスタッフは地域のファンたちを巻き込み、非日常感を味わえるアリーナ環境を用意する。そうして魅力あるチームが構築され、結果、成績アップにつながるという相乗効果が期待できる。

リーグは26−27シーズンからの「構造改革」に向けて球団に経営規模の拡大を求めるべく、売上高などのクラブライセンス交付要件を引き上げる方向だ。つまり球団は、いやが応でも経営力を高めるために汗をかかねばならなくなるのだ。

コート内外で変化が活発化してきたことで、今季は掛け値なしに興奮を味わえる一年となりそうだ。Bリーグの島田慎二チェアマンは開幕前のメディア対応で、これまで上位クラブに戦力が集まって「硬直化」していた戦力が、このオフに見られた移籍の数々によって分散され、「どこが勝つかわからない最初のシーズン」になる、と自信を見せた。

「今までの倍くらいのクラブが、優勝までたどり着く可能性があるんじゃないかと思わせる状況になりつつあります。それは、多くのクラブが各地域に密着して努力してきた結果。『勝ちたい』ということで選手に投資しているのが大きなカギになっています」

日本のスポーツ界で最も急激な成長を遂げているBリーグだが、その速度は今後、加速していくだろう。繰り返すが、今季はその「元年」たるシーズンになる。

取材・文/永塚和志 写真/アフロ

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