大谷翔平が覆した野球界の常識。日米で続出する"二刀流"挑戦者

大谷翔平が覆した野球界の常識。日米で続出する"二刀流"挑戦者

大谷の影響で日米の球界変化

今季のア・リーグMVPに輝いた大谷。MLBの<a href='/topics/keyword/二刀流/160628112873/'>二刀流</a>に対する見方が変わり、挑戦を表明する選手が出てきた

12月1日、ユーキャン新語・流行語大賞が発表され、「リアル二刀流/ショータイム」が年間大賞を受賞した。実際に流行語と言えるほど「リアル二刀流」「ショータイム」は頻繁に使うフレーズだったか?という問題はさておき、大谷の活躍によって「二刀流」は野球界ですっかり市民権を得た感がある。

大谷の影響は多方面に及んでいる。「自分も二刀流に挑戦したい」という志願者が、日米問わず続出しているのだ。

まずはアメリカから見ていこう。大谷の所属するエンゼルスに来季から加入するマイケル・ローレンゼンは、大谷と同様に投手と外野手の二刀流として調整したい意向を示している。

ローレンゼンは今季レッズでプレーした29歳で、MLB通算23勝をマークしている右投手。2018年には4本塁打をマークしたように打撃にも自信を持っており、来季は投手として登板しない試合に外野手としてプレーする希望を持っている。うまく機能すれば、大谷との「二刀流コンビ」はエンゼルスの新たな目玉になるだろう。

さらにレッドソックスのアレックス・ベルドゥーゴは、23年からの二刀流への挑戦希望を表明した。今季は外野のレギュラーとして146試合に出場し、打率.289、13本塁打を記録した強打者だが、高校時代は左腕投手として活躍している。

なお、ベルドゥーゴが来年ではなく、再来年から挑戦したいと語っている理由は、肩周りのトレーニングをして投手として万全の準備をするためだという。

といっても、ベルドゥーゴは大谷のように先発投手としてバリバリ投げるのではなく、外野手を軸としつつリリーフとしても登板するイメージを抱いている。

年間162試合を消化するMLBでは、点差の離れた試合などで野手が敗戦処理を務めることも珍しくない。あのイチローもマーリンズ時代の15年に登板して、話題になった。ベルドゥーゴのように野手が希望して二刀流をしてくれれば、球団戦略的にもメリットがある。

大谷のように、投げては先発で9勝、打っては46本塁打、26盗塁とずばぬけた成績を残す二刀流はそう出現しないだろう。だが、「ユーティリティプレーヤー」の一種として、チームから求められる可能性は十分にある。

一般的にユーティリティプレーヤーとは、内野も外野も問わずさまざまなポジションを守れる選手を指すが、そこに「投手」のオプションが増えてもいい。投手が足りないときは投手、野手が足りないときは野手と器用に立ち回れる選手がいたら、首脳陣に重宝されるはずだ。

その波は日本にも及んでいる。大谷の古巣・日本ハムでは、上原健太投手が来季から外野手も兼任することが決まった。

上原は身長191cmの大型左腕で、広陵高、明治大とエリートコースを歩んだ15年のドラフト1位。だが、プロでは高い期待を受けながら、今季まで6年間で通算7勝11敗、防御率4.77と伸び悩んでいた。

一方で、18年には交流戦で本塁打を放つなど、打者としてのポテンシャルも評価されていた。前監督の栗山英樹氏から「両方やったほうがいい」と提案され、悩んだ末にチャレンジすることを決断。上原は「便利屋」としての覚悟を固めており、来季は"ビッグボス"こと新庄剛志監督がどのように起用するのか興味は尽きない。

なお、ビッグボス自身も阪神の選手時代、野村克也監督から二刀流挑戦を要請されてオープン戦に2回登板した過去がある。だが、「ピッチャーは面白くない」という理由から、「足を痛めた」と嘘をついて投手から離れている。

アマ球界も大谷の出現以降、「プロでも二刀流をやりたい」と本気で語るドラフト候補が増えてきた。21年のドラフトで指名された選手の中では、森木大智(高知高→阪神1位)、有薗直輝(千葉学芸高→日本ハム2位)、田村俊介(愛工大名電高→広島4位)が二刀流志望を明かしていた。

結果的に森木は投手、有薗と田村は野手としてプロ生活をスタートすることになったが、今後も大谷が輝き続ける限り、二刀流志望の選手は後を絶たないだろう。

そして22年のドラフト会議の目玉も、二刀流の選手になることが予想される。日本体育大3年の矢澤宏太である。

日本体育大の加盟する首都大学野球連盟はDH制を採用しているが、矢澤は今秋のリーグ戦で「4番・投手」として出場する試合もあった。

投手としては最速150キロをマークし、鋭いスライダーを武器にするサウスポー。野手としては173cmの小柄な体ながら爆発力のある打撃と、高い身体能力を武器にする外野手。矢澤は「保険をかけるつもりなら、やらないほうがいい」と語るように、本気で二刀流に取り組んでいることを強調する。

日本体育大の古城隆利監督に、現時点で矢澤の投打どちらが優勢かを尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。

「私はひょっとしたら野手かなと感じています。でも、どちらでも可能性がある以上、今の時点で無理に絞る必要はないと考えています」

スカウト陣からも野手として評価され、野手としてプロ入りするのか。それとも、投手としての評価が巻き返すのか。はたまた二刀流としてプロへ進むのか。矢澤の動向から目が離せない。

大谷の出現によって、「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざはもはや死語になりつつある。万能型プレーヤーの台頭は、現代の野球ファンに新たなロマンをもたらしている。

取材・文/菊地高弘 写真/共同通信社

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