いろいろな立場で「今年が勝負」のMLB日本人選手たちの状態は!?

日本人野手の1年目で史上最高額となる、5年約104億円の契約を結んだカブスの鈴木誠也。オープン戦は低打率だったが、シーズンで本領を発揮したい

祝・球春到来。日本のプロ野球に続いてMLBも4月7日(現地時間、以下同)に開幕し、日本人選手では昨季ア・リーグのMVPに輝いた"二刀流の怪物"大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)に話題が集中している。

ただ、ほかの"サムライ"たちも見過ごすべきではない。特に今季は、それぞれのチームで主力を担いそうな日本人選手が多く、久々に豊作年になる予感がある。

まずは、シカゴ・カブスから5年8500万ドル(約104億円)の好オファーを受けて新加入した鈴木誠也の名を挙げるべきだろう。

NPBで6年連続打率3割、25本塁打以上を打った日本最高の外野手は、名門カブスの再建の切り札となった。オープン戦では4月2日まで打率.143と低迷していたが、現地での評価の高さは変わらなかった。

「鈴木が持つツールの素晴らしさは誰の目にも明らかだ。打球の勢いは見事で、カブスの高額投資にもみんなが納得している」

あるカブス担当記者のそんな言葉どおり、鈴木はキャンプの打撃練習時から、メジャーリーガーとしてのポテンシャルを感じさせる打球を連発していた。メジャー特有の攻め方、動くボールなどへの適応は必要としても、守備、走塁での貢献が望めるのもプラス材料。明るい性格もメジャー向きで、チームにも早々と溶け込み始めているようだ。

「野球をやれていることがすごく楽しいし、毎日課題が出ることがうれしい。『早く明日になって、こういう練習がしたい』と考えながらできているので、すごくいい日々を送れていると思います」

近年の日本人野手はアメリカで苦しむケースが多かったが、前向きな姿勢の鈴木が成功する可能性は高そうだ。徐々に力を発揮し、ナ・リーグの新人王争いに絡んでも誰も驚きはしないだろう。

ピッツバーグ・パイレーツに所属する筒香嘉智(つつごう・よしとも)も、昨季の途中までは"メジャーへの適応に苦しむ日本人野手"のひとりだった。

20年に入団したタンパベイ・レイズでは1割台の打率で低迷し、昨年5月に戦力外通告。ロサンゼルス・ドジャースに移籍後も芽が出ず、アメリカでのキャリアは終わるかと思われた。

ところが――。昨夏にパイレーツに拾われるとついに開花し、シーズン終盤の43試合で8本塁打、25打点。昨年8月29日のカージナルス戦では逆転サヨナラ3ランを打つなど、"元日本代表の4番"はようやくメジャーでも活躍の場を見つけ、力を発揮し始めたのだ。

オフには複数年契約のオファーもあったというが、筒香はパイレーツと1年契約を結んで勝負をかけた。今春のオープン戦でも好成績を残し、チーム首脳陣の信頼も厚い。

「私たちが獲得して以降、ヨシ(筒香の愛称)の打撃は安定している。彼は中軸を打つことになる。4番になるかはわからないが、特に右投手の場合は3、4、5番のいずれかを任せる」というデレク・シェルトン監督の言葉どおり、チームで重要な役割を担い続けることは間違いない。

再建途上のチームで序盤から活躍を続ければ、シーズン途中に強豪に獲得を望まれる可能性も十分。だとすれば、筒香のMLBでのサクセスストーリーはまだ始まったばかりなのかもしれない。

昨季は腰の張りなどもあって自己ワーストの防御率に終わったパドレスのダルビッシュ。しかし2年連続で開幕投手を務めるなど、チームの信頼は厚い

先発投手では、実働メジャー10年目(15年は手術で全休)を迎えたダルビッシュ有が、どんなシーズンを過ごすかも興味深い。

昨季の前半戦は好調でオールスターにも選ばれたが、後半戦は故障もあって失速。サンディエゴ・パドレス加入1年目の防御率は、自己ワーストの4.22だった。「10登板連続で勝ち星なし」も経験する厳しいシーズンだっただけに、22年にかける思いは強いはずだ。 

「去年は精神的に苦しんだけど、オフシーズンはロックアウトで誰にも会わなくなり、そのなかで自分の生き方が見えてきた。登板日もすごく落ち着いて、緊張することはほぼない。そういう精神的な成長が生きてくるかもしれない」

そんな達観したような言葉を残す35歳は、実際にオープン戦で3試合に登板し、2勝0敗、防御率2.38、11回3分の1で14奪三振と上々の仕上がり。その好調ぶりを考えれば、2年連続3度目となる開幕投手を任されたのも当然。

もともと才能は飛び抜けたものがある投手だけに、このまま精神の安定を保てば、MLBキャリアでも節目の年にものすごい成績を残す可能性も十分あるはずだ。

最後に、今季終盤に貴重な戦力になる可能性がある投手の名前も記しておきたい。昨年9月、右肘のトミー・ジョン手術を受けたミネソタ・ツインズの前田健太だ。

34歳になったベテラン右腕は、3月からキャッチボールも始め、ここまでのリハビリ過程は順調。前田は「復帰まで約1年といわれているので、(チームに戻れるのは)早くて9月ですかね」と述べている。

もちろんそれはベストケースのシナリオであり、急ぐべきでも、慌てるべきではないのだろう。しかし――。

「ツインズは去年の後半、トレードで一部の選手を放出したんですけど、今年にまた補強していますね。勝ちにいく雰囲気が出ています。チームが勝ち続け、プレーオフでも勝ち進んでいけばいくほど、僕の復帰の可能性も高まってくる。なんとか後半まで勝ってもらって、チームに戻れたらうれしいなと思いますね」

前田のそんな言葉どおり、カルロス・コレア、ジオ・ウルシェラ、ゲイリー・サンチェスといった新戦力を加えたツインズがプレーオフ争いに絡んでくれば楽しみは増える。そこに復活を遂げた"マエケン"が戻ってくることを期待しながら、今シーズンを眺めていきたい。

取材・文/杉浦大介 写真/アフロ

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