好調・巨人を象徴する、「指名漏れ」からはい上がったふたりのルーキー投手

大学3年までほぼ無名だったドラ1の守護神、大勢。4年時の春以降にトレーナーと体の動かし方を改善し、パフォーマンスが大幅に向上

春先から話題に事欠かないプロ野球。ビッグボス≠アと新庄剛志監督(日本ハム)の奇抜な采配、令和の怪物≠アと佐々木朗希(ロッテ)の球史に残るパーフェクト投球、一時はセ・リーグの借金を一身に背負った阪神の低迷。巨人がリーグ首位を快走(4月25日現在。以下同)しているニュースがややかすんでいるほどだ。

そんな巨人も今季はフレッシュな投手陣が躍動している。4月中に5人の投手がプロ初勝利を挙げるという、プロ野球史上初の出来事が起きた。いかに若手投手が台頭しているかが伝わるだろう。

象徴的なのがドラフト1位右腕の大勢(翁田大勢)とドラフト3位右腕の赤星優志だ。大勢は12試合に登板して1勝11セーブ、防御率2.25の大活躍。4月半ばに巨人の新人セーブ記録を塗り替えている。

チーム内に名字の発音が近い太田 龍がいたため、新人では球団史上初のファーストネーム登録となった。つま先立ちになる独特のモーションから、最速158キロの動く速球とフォークを武器にする速球派スリークオーターだ。

大勢が1年目からここまで活躍すると予見できた人間は、ほとんどいないだろう。大勢ほどスカウトから視察を受けていないドラフト1位も珍しい。何しろ、関西国際大学4年春までにプロ入りはおろか、卒業後の野球継続すら危ぶまれた存在だったのだ。

西脇工高校時代はプロ志望届を提出するも、指名漏れ。関西国際大学では2年時に活躍したものの、3年時はコロナ禍や右肘痛が重なりリーグ戦登板なし。さらに進路を大きく左右する4年春のリーグ戦では、登板わずか1試合。しかも制球を乱して1アウトも取れず、4失点の大乱調だった。

あまつさえ登板後には右肘の疲労骨折まで判明し、手術を受ければ長期治療は避けられない状況だった。

だが、大勢はどん底から信じられないV字回復を見せる。元独立リーグ選手でパーソナルトレーナーの萩原淳由さんと出会い、体の動かし方を根本的に見直すことに。すると右肘への負担が劇的に軽減され、手術をせずとも肘は快癒。パフォーマンスが大幅に向上し、一躍プロのスカウトが注目する存在に浮上した。

緊急事態宣言が明けた昨年10月4日の大阪体育大学戦は、全12球団40人を超えるスカウトが大勢の視察に集まる異常事態となった。その日は最速152キロをマークし、14奪三振と快投。大勢本人は「納得いく出来ではなかった」と語るが、この1試合で大勢の評価は決まったも同然だった。

ドラフト直後には原 辰徳監督が「先発完投というスタミナもある」「ジャイアンツのエースになってもらいたい」と大勢の先発起用を示唆していた。だが、本人は「リリーフ向きだと思う」と適性を自覚していた。

もともと大学の大先輩である益田直也(ロッテ)の投球スタイルやトレーニングを参考にしていた背景もあった。結果的に1年目の開幕前に原監督は方針を転換し、大勢のリリーフ起用を決めている。

開幕前には中川皓太、チアゴ・ビエイラ、ルビー・デラロサといった経験のあるリリーフ陣が軒並み故障や不振に苦しむチーム事情もあった。大勢は開幕戦からクローザーに抜擢(ばってき)される。巨人の新人投手が開幕戦でセーブを挙げたのは史上初の出来事だった。

人気球団のドラフト1位で、いきなりの守護神抜擢。並のルーキーならひるんでもおかしくない状況にもかかわらず、大勢は常に泰然としている。

大学時代の大勢に過去の自分に刺激を与えたライバル的な存在はいるかと聞いても、常に「自分は自分なので」といった返答でかわされた。周囲に翻弄(ほんろう)されない、巨人向きのメンタリティなのだ。

とはいえ、大学では短期間しか活躍しておらず、年間通して働けるかは未知数。故障歴もあるだけに、過度な負担をかけず、慎重に起用できるかがカギになりそうだ。

一方、ドラフト3位の赤星は、日本大学時代から賛否が分かれる存在だった。

完成度が高い投手と見るべきか、プロで埋没しかねない投手と見るべきか。スカウトの間でも評価が割れていた節がある。

大学時代のサイズは身長175cm、体重78kgと平凡で、球速は常時140キロ台前半。コントロールはいいものの、オーソドックスなフォームで怖さはなく、スライダー系の球種を武器にする投球スタイルはプロで最も多いタイプだった。

ところが、プロ入り後は高い完成度が吉と出て、開幕ローテーションに食い込んだ。5試合に先発して2勝1敗、防御率3.41と、合格点の数字を挙げている。

取材の受け答えはクールで本心が読みにくかったが、随所に芯の強さを感じさせた。例えば、プロ志望届を提出しながら指名漏れに終わった日大鶴ヶ丘高校時代の話を聞くと、赤星はこう答えた。

「育成でもドラフトにかからず、悔しかったです。投手として全部のステイタスが足りなかったということ。(大学の)4年間で全部のレベルを上げようとやってきました」

全力で投げれば150キロ台前半の球速が出たため、リリーフとしての適性を買う声もあったが、本人は「先発でやっていきたい」と語った。多彩な球種を操り、相手打線の様子に応じて投球スタイルを自在に変化できる点は、明らかに先発向きだった。

プロではストレートの平均球速が140キロ台中盤にまで上がり、打者に向かって加速するようなボールの質の良さも際立っている。長いシーズンを通して何度も対戦するなかで、相手打者が赤星の球筋に慣れてきたときにどう対処できるか。真価が問われる。

大勢も赤星も、高校時代のドラフト指名漏れの屈辱から4年間で上位指名を勝ち取り、人気球団の救世主となっている。その投球には純粋なエリートにはない、泥くささとたくましさがある。

取材・文/菊地高弘 写真/共同通信社

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