福西崇史がW杯本番までの親善試合に期待したいこと「守備オンリーの戦い方は避けてもらいたい」

日本代表の対戦チームを、福西崇史が深堀り!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 

第21回目のテーマは、日本代表のW杯での対戦チームについてと、W杯に向けた親善試合に期待すること。親善試合では、「守備オンリーの戦い方は避けてもらいたい」と福西崇史は語る。

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日本代表がこれまでのW杯で残した最高成績は、ベスト16です。自国開催だった2002年、初めてアフリカ大陸で開催された南アフリカ大会の2010年、そして前回ロシア大会の2018年にグループリーグを突破して決勝トーナメントに進みましたよね。

でも、ベスト16というのは、決勝トーナメントで勝てていないことを意味しています。その先にある未知の領域へ勝ち進んでいくこと。これが日本サッカー界の目標になっていますし、森保ジャパンが目指すものにもなっています。

11月に開幕するW杯カタール大会でこの目標に向かうわけですが、決勝トーナメントに進むためのグループリーグで大きな試練を課されましたよね。W杯優勝4回、EURO優勝3回のドイツ代表と、W杯優勝1回、EURO優勝3回のスペイン代表のいるグループを戦って2位以内を確保しなければ、決勝トーナメントには進めないわけですから。

ただ、強豪国との対戦は、W杯で上位進出を目指すには避けては通れないもの。遅いか早いかの違いしかないのなら、早い段階で叩いてしまって、チームの勢いへと変えたいものですよね。今回グループリーグで対戦するチームはなかなかに叩くのが難しそうですが......(苦笑)。

W杯のたびに言われることですが、短期決戦は初戦の入り方が重要になります。今回の初戦の相手はドイツ代表。いきなり強敵との対戦ですが、日本代表が入ったグループEはどこの国もドイツ代表と同じように与(くみ)し易(やす)くはないんですよね。

第2戦で対戦するコスタリカ(北中米カリブ海)とニュージーランド(オセアニア)の大陸間プレーオフの勝者にしても、日本代表が勝って当然の相手かのようにニュースなどで報じられることがありますが、決して侮れない相手です。

コスタリカ代表にはGKにケイラー・ナバス(PSG)がいます。2014年W杯ではウルグアイ、イタリア、イングランドとの『死の組』を戦って、最小失点でグループ首位で決勝トーナメントに進出しましたよね。そこでの活躍が認められてレアル・マドリードに移籍。2019−2020シーズンからPSGに移籍すると、1年目にいきなりPSGをチャンピオンズリーグ決勝に初めて導く活躍を見せました。ナバス以外にも前回大会の経験者は多くいるので、手強い相手であるのは間違いありません。

もう一方のニュージーランド代表も、サッカーは強くないイメージがあると思いますが、ヨーロッパでプレーする選手が多くいます。日本代表にとって厄介になるのが、FWのクリス・ウッド(ニューカッスル)。191cm91kgの巨漢CFなので、ゴール前での高さとパワー勝負になると脅威ですよね。

しかも、昨夏の東京五輪では準々決勝で日本と対戦し、PK戦で日本代表が辛勝しましたが、120分間を無失点で切り抜けた固い守りには手を焼くかもしれません。ニュージーランド代表がW杯に出場してきたら、『勝ち点3は簡単』という考えは捨てた方がいいですよね。

3戦目のスペイン代表は言わずもがなです。ただ、彼らが大陸間プレーオフ勝者との初戦、ドイツ代表との2戦目に2連勝した場合には日本代表に追い風が吹くことを期待したいですよね。スペイン代表が決勝トーナメントを見据えて、日本戦にそれまでの2試合で控えだったメンバーを主体に臨んできた場合には、勝ち点3を奪う芽も大きくなると思うからです。

いずれにしろ日本代表はドイツ代表との初戦が大事です。そのドイツ代表と日本代表は、過去に2度、親善試合で対戦したことがあります。1度目は2004年12月に横浜国際競技場で0−3で敗れました。2度目はW杯ドイツ大会の開幕直前の2006年5月。レバークーゼンで行われた試合は2−2で引き分けました。

ぼくはこの2試合のドイツ戦ともスタメンで出場しているんですよね。1試合目のことはあまり覚えていないのですが、2試合目のことはしっかり思い出せます。前半はドイツ代表にペースを握られたのですが、後半13分に相手のCKからのボールを繋いで日本代表が先制。その8分後に高原(直泰)が再びゴールを決めて2点リード。

「これで勝てるやろ」と思ったら、相手の反撃にあって瞬く間に同点にされて。でも、W杯前にドイツ代表の本気を体験できたのは個人的にはすごくいい経験になりました。強豪国の本気は親善試合ではなかなか体験できませんからね。

あの当時と比べれば、いまはブンデスリーガでプレーする選手は増えているので、相手の名前にビビることもないでしょうからね。どんな特長の選手かわかっているだろうし、しっかり相手の出方を見ながら、自分たちの良さを発揮していければ、勝つのは難しいとしても、引き分けには持ち込める可能性はあると見ています。

でも、逆の見方をすれば、ドイツ代表にも日本代表の手の内は知られているんですよね。現状のままだと相手に狙われると思うのが、遠藤航の両サイドにできるスペース。4−3−3のシステムだとアンカーの両サイドに生まれるスペースを、どう使い、どう埋めるかはポイントなんですね。遠藤航の1対1での守備力を知るドイツ代表からすれば、遠藤航の存在を無力化するためにも、そこを突いてくるはず。ここからの半年間はそこへの対策も必要になってくるでしょうね。

ひとつ希望を言えば、守備オンリーの戦い方は避けてもらいたいですよね。サッカーは攻守が両面になっているものなので、守りながら攻めたり、攻めながら守るもの。それが守備ばかりになると、攻撃のところの課題が見つかりにくいので、改善のしようがなくなってしまうんです。

過去のW杯での日本代表を振り返ると、「攻撃的」と「守備的」の両極端なところにバランスを置きすぎた印象があるんですよね。それが悪いとは言いませんが、そのステージはもう卒業でいいのではないかと思うんです。

「しっかりとした守備から攻撃」という森保(一)監督のもとでやってきたスタイルからブレずに戦ってもらいたいですね。目先の結果は大事ですけど、そのために積み上げたものを放棄するのではなく、高めていくことを模索してほしいですね。

それがW杯カタール大会のグループリーグでの2戦目、3戦目の戦いに繋がるだけでなく、4年後、8年後、その先の日本代表の財産になるから。そういう戦いを今回のW杯カタール大会では見せてもらいたいと思います。

構成/津金壱郎 撮影/鈴木大喜

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