福西崇史が振り返る6月の日本代表戦4試合「4−3−3でいくという森保監督の決意を感じた」

6月に行われた日本代表戦をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 

第28回目のテーマは、6月に行われた日本代表戦。福西崇史は今回の4試合を見て、「森保監督の固い決意を感じた」と語った。

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日本代表は6月にパラグアイ代表(○4−1)、ブラジル代表(●0−1)、ガーナ代表(○4−1)、チュニジア代表(●0−3)と国際親善試合を行いました。結果に一喜一憂することも大事なことではありますが、今回は目的がどこにあったかを考えれば、やっぱり試合内容を精査していくことが重要なことでしょうね。

この4試合はワールドカップ・カタール大会に向けた日本代表の強化の一環で、この4試合から森保(一)監督がW杯アジア最終予選のなかで試したくても試せなかったことや、改めてチームに徹底させることなどが見えてきましたよね。

まず4試合から見えてきたものは、ワールドカップ・カタール大会の日本代表が遠藤航を軸に考えたチームで臨むということです。

それが表れたのが、3戦目のガーナ戦でした。柴崎岳をスタメンに起用しながらも、システムは4−3−3で、柴崎を久保建英とともにインサイドハーフで試しました。

思い出してもらいたいのは、日本代表は昨年のW杯アジア最終予選の第3戦目まではシステムを4−2−3−1をベースに戦っていたことです。そのときダブルボランチを組んでいたのは遠藤と柴崎でした。ただ、W杯アジア最終予選の星勘定が苦しくなったことで、4−3−3へと移行し、最終的に4−2−3−1に戻すことはないままでしたよね。

ただ、ワールドカップへの出場が決まり、これまでの戦いを一度リセットできるタイミングと考えれば、柴崎と遠藤航が同時にスタメン出場したガーナ戦は、4−2−3−1で臨んでいても不思議はありませんでしたよね。

それが蓋を開けてみれば、4−3−3のまま。これは柴崎を起用して4−2−3−1にした場合の選手たちの連動性などは、すでに把握しているから試さなかったという捉え方もできますが、僕は森保監督がワールドカップでは4−2−3−1を使わない決断をしたのだなと受け止めました。

もちろん、試合展開のなかで状況に応じて選手の立ち位置が変わり、4−2−3−1のような並びになることは十分にあるでしょうね。ただ、ここで言いたいのは、森保監督はワールドカップでの戦い方を、選手の並びを4−3−3にして、中盤からの守備をベースにしながら、ボールを奪ったら素早く得点チャンスをつくっていくと想定しているということです。

6月の4連戦では、そのインサイドハーフでの起用に目処がついた選手が何人もいました。これはワールドカップ本大会に向けての収穫と言っていいでしょうね。4−3−3を導入した昨年10月のW杯アジア最終予選のオーストラリア戦以降に、選手を試せる機会があれば違ったのでしょうが、コロナ禍の影響でそれをする機会はありませんでした。W杯出場権のかかる試合にぶっつけ本番で試すのはあまりにリスキーすぎますからね。

パラグアイ戦とチュニジア戦でのスタメンは、遠藤をアンカーに置いて、インサイドハーフの左に鎌田大地、右に原口元気が起用されました。ふたりともブンデスリーガでは結果を残していたけれど、日本代表のインサイドハーフではどうかと見ていましたが、攻撃面でしっかり特長を出してくれましたね。

原口の守備については次回以降にフカボリしたいと思いますが、ワールドカップに守田英正が間に合わなかった場合は、遠藤をアンカーに置いて、田中碧と原口がインサイドハーフでスタメン起用されても不思議ではないなと感じました。

久保建英はガーナ戦でインサイドハーフに起用されましたが、堂安律とセットで使われるとやっぱり良さが出ますね。東京オリンピックもふたりのコンビネーションが攻撃の軸になっていましたが、日本代表でもふたりが持ち味をもっと発揮してくれば、攻撃のところでの期待値は高くなってくる気はしました。

収穫で言えば、伊藤洋輝でしょうね。今回の親善試合で唯一の初招集ながら、ブラジル戦以外の3試合で左サイドバックでスタメン起用され、センターバックとしてもプレーしました。これには森保監督がもっとも試したかった選手だったことが表れていると思います。

左SBとしての課題はもちろんありますが、使える目処が立ちましたよね。中山雄太、長友佑都がいますが、ふたりとはタイプも持ち味も違う伊藤が加わったことで、相手や戦況に応じた守備陣の使い分けのバリエーションが増えました。

しかも、伊藤がCBとして使える目処がついたので、右SBに冨安健洋を使うという手も出てきましたよね。こうした選択肢が生まれるのは、森保監督にとってはうれしいことでしょう。CBには安定感のある板倉滉も、谷口彰悟もいますからね。吉田麻也を含めて、2022−2023シーズンが始まって、何かあったときへの備えはできたなと感じます。

その右SBでは長友佑都が起用され、ベテランらしさを発揮しました。今季はFC東京で右サイドでプレーすることが多いので、ポジショニングを含めて不安は感じませんでした。右SBには酒井宏樹という世界レベルの選手がいますが、怪我のために計算が立たない状況です。仮に間に合わないとなったときに山根視来もいますが、長友も使えるのは大きいですよね。

あとは1トップをどうするのか。ここが決まってくれば、チームとしての戦い方がもっと練り上がっていくでしょうね。6月の親善試合4試合のなかで、現時点の日本代表のベストメンバーだと感じさせたのがブラジル戦。その試合で1トップをつとめたのが古橋亨梧でした。

守備に追われる時間が多く、古橋はセルティックで見せているようなプレーはなかなかできませんでした。ただ、ワールドカップで対戦するドイツ代表、スペイン代表との試合でも、古橋が守備に追われる可能性は少なくないですからね。そうしたときに、彼がどういうプレーをして、どうやって存在感を発揮するのか。ブラジル戦に限れば、攻撃以外のところでも古橋はしっかりチームに貢献できる選手だということを見せてくれました。

ただ、誰が1トップとしてのファーストチョイスになれるかというと、古橋をはじめ、浅野拓磨にしろ、前田大然にしろ、上田綺世にしろ、決定打はありませんでした。今回はコンディション不良で代表から外れた大迫勇也も含めて、ここから誰が選ばれて、どういう結果を残すのか。1トップを置かない方法もありますから、そこを含めて森保監督が最終的にどういう判断をされるのかは興味深いですね。

ワールドカップの代表は、26人になることが有力視されています。今回の親善試合に選ばれた選手たちがワールドカップの日本代表のベースになると思いますが、森保監督は東京オリンピック世代を含めて日本代表のラージグループを形成しているので、ここから目覚ましい活躍をした選手が1、2人は試される可能性もありますからね。

いずれにしろ、日本代表にとっては、海外組がこのオフ期間で新シーズンにどういう身の振り方をするかが重要になるでしょうね。新しいクラブに移籍したことで出場機会を減らす可能性はありますし、そうなれば日本代表でのパフォーマンスにも影響はしますからね。こればかりは、すべての選手がいい環境を手にできるクラブへの移籍が決まることを願うばかりです。

構成/津金壱郎 撮影/鈴木大喜

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