原口元気がインサイドハーフとしてさらに成長するには? 福西崇史「課題はポジショニング」

原口元気をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 

第29回目のテーマは、6月の代表選ではインサイドハーフとしてプレーした原口元気。その献身的な動きで存在感を高めた原口だが、改善すればさらに成長できるポイントがあると福西崇史は語る。

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原口が6月の国際親善試合で、インサイドハーフとしての存在感を高めましたね。

1戦目のパラグアイ戦と2戦目のブラジル戦、4戦目のチュニジア戦にスタメンで起用され、攻守でしっかりとアピールに成功しました。あれだけのプレーができる原口がいる。これは日本代表の中盤が厚みを増している証でもあります。

日本代表はW杯アジア最終予選の途中からフォーメーションを4−3−3に変更し、アンカーを遠藤航、インサイドハーフを田中碧と守田英正がつとめてきました。

インサイドハーフにふたりが起用されたのは、10月のW杯アジア最終予選のオーストラリア戦で日本代表の流れを変える素晴らしいパフォーマンスを見せたからというのは、もちろんあります。ただ、コロナ禍で国際親善試合を組めなかった影響もあったことは忘れてはいけないでしょうね。

彼ら以外にもインサイドハーフのつとまる選手はいましたが、そうした選手を起用すると、コンビネーション面がぶっつけ本番の状態になってしまう。それよりは川崎フロンターレでチームメイトだった守田と田中を使い続けるほうがいいという判断があったと思います。なぜなら、絶対に負けられない試合で、結果の出ている組み合わせを変える理由はないということです。

しかし、W杯の本番までに何が起きるかわからない。故障してしまう可能性はありますからね。その対策も含めて、もっと日本代表が機能する組み合わせはないかと模索したのが、6月の親善試合だったと思います。だからこそ、インサイドハーフにさまざまな選手が起用されたわけです。そして、期待に応えるプレーを見せてくれたのが原口であり、鎌田大地でしたよね。

特に原口は、W杯でスタメン起用されても不思議ではないパフォーマンスでした。原口というと浦和レッズ時代から攻撃的な選手として鳴らし、前回W杯ではサイドアタッカーとして予選、本大会と存在感を発揮しました。そのためインサイドハーフでの起用に違和感を覚える人もいるかと思いますが、昨シーズンの原口は所属するウニオン・ベルリンでインサイドハーフとしてしっかり結果を残しているんですね。

ウニオン・ベルリンは、昨シーズンのブンデスリーガ1部18チームのうち5位。ELリーグで優勝した鎌田や長谷部誠のいるフランクフルトが11位、遠藤航や伊藤洋輝のいるシュツットガルトが15位。田中碧のデュッセルドルフはブンデスリーガ2部で10位です。

個人の力というものは、所属チームの成績だけで語れるものではありません。でも、ブンデスリーガでプレーする日本人選手のうち、もっとも好成績を残したチームから必要とされた選手が、原口だったという見方もできるのは間違いないでしょうね。

原口が評価されたポイントは献身性だと思います。アシストをしたり、守備で相手をしつこく追いかけたりといったところで、ウニオン・ベルリンに不可欠な選手になっていました。

そして、この部分は日本代表でも求められるものでもありますよね。W杯本大会のグループリーグを想定すると、相手に攻め込まれる時間帯が長くなり、チャンスをつくれるのは限られてきます。そうしたときに、攻撃面でゴールにつながるプレーができることが、インサイドハーフには必要になりますからね。

同じインサイドハーフの田中や守田よりも、原口が上回っているのがドリブルですよね。ドリブルでの推進力からゴール前では貪欲にシュートを狙うこともできる。しかも、そこに固執せずに、アシストでゴールをお膳立てをすることもできる。この部分を森保(一)監督も期待しているのだと思います。

ただ、守備の面で言うと、原口にはまだ改善できる点があるのも事実です。そのひとつがポジショニング。原口は相手ボールホルダーに対して二度追い、三度追いをすることができる選手ですが、視点を変えれば、動き過ぎて効率の悪い守備になっていることもあります。

後手を踏んだ守備をしている時は、二度追い、三度追いが必要になるわけです。もちろん、それができるのが原口らしさでもあるわけですが、この部分が守備的な中盤の選手との違いでもあるわけです。

これはピッチ内での立ち位置を少し変えるだけで、劇的に変化するものでもあります。相手のパスコースを塞ぐように立ったり、味方のいる方にボールホルダーを追い込んだりする。そうすれば、二度追い、三度追いをせずにしっかり守備に貢献できるわけです。

もちろん、原口の立ち位置がつねにダメだというわけではありませんよ。試合展開のなかで立ち位置が変わるのがサッカーですからね。ただ、原口ももう31歳です。若い頃の攻撃的なポジションで勝負したスタイルから、守備的な仕事の比重を増やしながら長くトップレベルでプレーをしていこうというのなら、もう少しポジションニングを改善したほうが、体力面の消耗を抑えられるというわけです。

原口はまだ体力任せになっているので、もっと体力を使わない守備があることに目を向けてもらいたいなと思うんですよね。なぜなら、W杯のグループリーグは、初戦のドイツ戦から第2戦のコスタリカ戦までは中3日、第2戦から第3戦のスペイン戦までは中4日しかないわけですから。

中1週間で戦うリーグ戦なら後追いの守備でも体力は回復しますが、中3日、中4日で立て続けに試合をするなかではキツいものがあります。しかも、原口に期待されるのは、守備だけではなく、ボールを奪った後の攻撃への切り替えの部分。守備をした後にしっかりと攻め込んでチャンスをつくりだしてもらう。そのためには、攻撃のための体力を温存しながら、守備をしてもらいたいわけです。

守備だけなら、原口ではなく、そこに持ち味のある選手を使えばいいわけですから。大前提に守備ができるのがあるにせよ、やっぱり攻撃のところでの打開力を買って原口を起用するわけです。

インサイドハーフとしてプレーするようになって日のまだ浅い原口には、この部分を高める取り組みをしてもらいたいですね。日本代表でも、これから先のサッカーキャリアのなかでも生きてくる部分なので、2022−2023シーズンでは後追いしないでもできる守備というものを追求してほしいなと思います。そして、さらにスケールアップした原口が、11月のW杯で日本代表を大いに助けてくれるのを期待しています。

構成/津金壱郎 撮影/鈴木大喜

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