宮澤ミシェルがバルセロナ戦で感じた久保建英の成長「主導権を握られた中でも、しっかり自分の仕事をしていた」

久保建英について語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第266回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したことや、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、久保建英について。レアル・ソシエダの一員として新シーズンを迎えた久保建英。そんな久保の開幕から現在までのパフォーマンスを見て宮澤ミシェルは、「今年は期待できる」と語った。

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今シーズンの久保建英は、相当やってくれるんじゃないか。そんな期待が持てるパフォーマンスを見せてくれているよ。

その理由は開幕戦でゴールを決めたことがもちろんあるんだけれど、それが確信に近いものになったのは、8月21日に行われたバルセロナ戦だよな。試合はホームのレアル・ソシエダが1対4でバルセロナに屈したけど、久保のプレーは昨季までの3シーズン、ラ・リーガで苦しんだなかで成長を遂げた部分をしっかり発揮していたよ。

ソシエダは開幕戦と同じ4-4-2の布陣を敷いて、久保も開幕戦と同じく2トップの一角に起用された。このポジションの久保は案外ハマってるんだよ。ボールを触る回数が多いし、触る場所も相手のバイタルに近いところだから、久保のテクニックが生きている。

久保はテクニックがあるだけじゃなく、パッと体を入れ替えてシュートに持ち込めるスピードやドリブルも持っているから、DFとしてはうかつに飛び込めない。それに久保はなんでもかんでも自分がというプレイヤーじゃなく、味方をつかうことができる。そういう持ち味が、このポジションだと生かせているよね。

もちろん、それができるだけのチームなんだよな、レアル・ソシエダってのは。上手い選手が揃っているだけではなく、戦い方も自分たちが主導権を握ろうとする。そうした戦い方だと、やっぱり久保は持ち味を発揮しやすいんだよな。

いいチームに移籍したなと思うのは、イマノル・アルグアシル監督は固定観念に縛られずに若手選手の可能性を引き出すのが上手いんだよ。それが久保にも好影響をもたらしているよね。

普通に考えたら、ダビド・シルバをはじめテクニックに秀でた選手が揃っているチームだから、久保が出番を得るチャンスは減る。だけど、FWに故障者が出たこともあるとはいえ、久保を2トップの一角で使う発想を持てる監督はなかなかいないからね。

あと、やっぱりダビド・シルバというお手本になる存在が身近にいることも大きいんじゃないか。2018年までスペイン代表で活躍したけど、身長170cmで、左利きのテクニシャンというのは、久保と共通するところでもあるからね。36歳になったけど、あのサイズながら、代表やクラブで世界の第一線で活躍したスキルの高さは健在だから、久保が得るものはだいぶあるんじゃないかな。

しかもさ、バルサ戦は相手に主導権を握られたけど、久保はしっかり自分の仕事をした。やっぱりここが高評価したいポイントなんだよな。それができたのは、やっぱり昨年までの3シーズンがあったからだと思うんだよ。

18歳でレアル・マドリードに移籍して、そこからレンタル移籍でマジョルカ、ビジャ・レアル、ヘタフェでプレーしてきた。いまの活躍だけにフォーカスしたら遠回りしたような印象を受けるけど、そこでの経験があるからこそ、守備での強度を高く発揮できているんだと思うよ。

その3チームで試合に出るためには、まずは守備が求められる状況だったでしょ。だから久保は、フィジカルの弱さや課題の守備と向き合えたし、それでウィークポイントを高めることができた。だからこそ、バルサ戦では相手を追い回す仕事が増える試合展開になりながらも、存在感まで消えることはなかったんだよな。

このパフォーマンスを続けてくれたら、久保本人が「得点とアシストで20ゴールに絡みたい」という目標は楽にクリアできるんじゃないか。そう思わせてくれた開幕からの2試合だったね。

それができる活躍を見せてくれたら、当然ながら日本代表での久保の起用法は変わっていく可能性はあるよな。グループリーグの対戦相手を考えたら、日本代表がまだ4-3-3で戦うと決まったわけじゃないからね。

2ボランチを採用する可能性は十分にあるよ。そうしたときに久保を2トップの一角として起用できるだろうし、ゼロトップのような形にして中盤の選手が流動的に動きながらチャンスをつくる方法だってとれる。

久保はソシエダで前線からしっかりボールを追っているし、ボールを預けられてもテクニックがあるからロストする確率だって小さい。これは日本代表でも生かしたい能力だからね。

ワールドカップを戦う日本代表にとって新たなオプションになり得る可能性を見せてくれている久保には、まずはこの活躍を9月の代表ウィーク前まで続けてもらって、森保(一)監督が新たな起用法を試さずにはいられない存在になってもらいたい。ここから1カ月、久保の結果ではなく、そのプレーぶりを目を凝らしてくださいね!

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太

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