クラブOBの福西崇史が心配するジュビロ磐田の現状「目標に向かってブレずに取り組んでほしい」

クラブOBの福西崇史が心配するジュビロ磐田の現状「目標に向かってブレずに取り組んでほしい」

磐田の現状をOB福西氏が心配

ジュビロ磐田の現状をフカボリ!
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 

そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 

第37回目のテーマは、ジュビロ磐田。今シーズンJ1に復帰するも最下位と低迷するクラブの行方を福西崇史は心配しているという。

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ジュビロ磐田の現状を心配しています。J1リーグで26試合を終えて5勝7分け14敗の勝ち点22で最下位。ボクをサッカー選手として一人前にしてくれたクラブなので、当然ながら愛着は深くありますし、J1に復帰した今シーズンの躍進を大いに期待していましたから。それでもやっぱり磐田には復活を遂げてもらいたい。だからこそ、言わなければならないこともあると思っています。

今シーズンの磐田は3年ぶりのJ1で、開幕3戦目で今季初勝利を挙げていい滑り出しでした。でも、5月からは負けがこむようになって順位を落とし、気がつけば最下位。8月14日には今季から招聘した伊藤彰監督が解任され、トップチームマネジメント部長だった鈴木秀人さんも職を解かれてしまいました。

成績不振で監督が交代する。これはJリーグだけではなく、ヨーロッパでもよくあることなので、仕方ない面はあるのかなと思います。ただ、理想を描いて招聘し、その監督が志向するサッカーを具現化できる選手たちを集めて臨んだシーズンですから、もうちょっと粘り強く我慢してもよかったのかなという気もします。

なぜなら、別の監督が違うサッカーをやろうと思っても、そのサッカーで求められる選手と現場の選手たちの特性にはズレがある場合も多く、すぐに監督が目指すサッカーを実践するのはなかなか難しい状況になってしまうわけです。そういう意味では、いかに「監督が志向する特性を持った選手を集める」ことが重要かがわかります。

わかりやすい例は浦和レッズでしょうね。リカルド・ロドリゲス監督を迎えてからの浦和は、彼のサッカーを具現化するために特性を持った選手たちを集めてきました。リーグ戦で一時期は勝ち星に見放されたときも、監督交代をせずに我慢強く采配を託しました。

磐田の場合も、昨季までヴァンフォーレ甲府で3年間指揮を執っていた伊藤監督を招聘し、より攻撃的なサッカーを根付かせようとし、そのための選手補強もしました。でも、結果が出なかったなかで、伊藤監督を解任して、ヘッドコーチだった渋谷洋樹さんが新監督に昇格しました。

ある面では妥当な人選ですよね。降格争いから抜け出すためには、理想だなんだとなりふりかまっていられない。そのなかで、伊藤監督のサッカーのために集められた選手たちを活用して現実的な戦いができる人に監督をお願いするしかないわけですから。

ただ、それなら伊藤監督のままでよかったじゃないか、とも思うわけです。成績が伴わないと求心力が薄らいだり、選手たちのモチベーションが上がらなかったりと弊害は生まれますが、そこも含めて乗り越えていく覚悟も必要だったのではないでしょうか。

サッカーは100人いたら100通りあるわけで、勝敗や選手起用の是非は結果論の部分が大きいものです。そして、それがチームの成績のすべての要因かといえば、そうではないと思います。いいチームをつくっているクラブを見ると、クラブがどんなチームをつくりたいかのビジョンを掲げ、そこに邁進する気概を保ち続けている。川崎フロンターレにしろ、浦和にしろ、鹿島アントラーズにしろ、クラブが変革していくために目先の結果にブレずにやっていますよね。

ボクが在籍した頃の磐田は、最初から王者だったわけではありません。弱かったチームを強くしたいという一心で、フロントの人たち、現場の監督やコーチ、中山雅史さんを筆頭にした選手たち、そしてサポーターが、目標に向かってブレずに取り組みました。

もちろん時代が違うと言えばそうですが、それでもビジョンの描き方、そこに突き進む方策や雰囲気づくりというものは、いまの時代にも通じる部分はあるわけです。そして、その時代を知るOBがたくさんいて、誰もが現状の磐田を心配していると思います。

いずれにしろ、ここからの磐田には、まずは目の前の戦いに集中して降格圏から脱する努力を最大限に払ってもらいたい。これが一番です。勝敗は相手があることなので、自分たちが最高のパフォーマンスをしても結果につながらないことはあります。弱かった頃の磐田は、どんなに点差をつけられようとも、ゴンさん(中山)やドゥンガが先頭に立って最後の最後まで勝利を目指しました。あの姿こそが磐田の伝統として守るべきもののひとつですからね。

そして、クラブには来季以降のビジョンをしっかり描きなおしてもらいたいですね。目先の成績やサポーターの客入り、スポンサー対応、そうしたものは大事ですが、いまの磐田がもっとも優先すべきは「強い磐田を取り戻すこと」。それが一年や二年で叶うほど、いまのJリーグは甘くないですが、磐田というクラブがそこに向けてどう取り組んでいくのか。これからもOBとしてしっかり注目していきたいと思っています。

構成/津金壱郎 撮影/鈴木大喜

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