エンゼルス売却の動きを地元は歓迎。大谷翔平の今オフに影響は!?

今シーズンの途中からトレードの話が絶えなかった大谷。エンゼルスは来年まで保有権があるが、売却の結果によって今オフに動きがある可能性も

米球界に激震が走った。現地時間8月23日、大谷翔平が所属するロサンゼルス・エンゼルスが、球団売却を検討する手続きを開始したと発表。

アート・モレノ球団オーナーは「この難しい決断を下したのは私たち。熟慮に値するものだったが、私と私の家族は今がその時という結論に達した」と声明を出し、売却検討のため、財務アドバイザーとして「ガラティオト・スポーツ・パートナーズ」に協力を仰いでいると明かした。

なんの前触れもなかった衝撃的な話だが、エンゼルスファンはこの発表を歓迎している。地元紙『オレンジ・カウンティ・レジスター』はその反応を次のように伝えた。「(売却検討が)意外かどうかは別に、モレノ氏の発表を多くの関係者はいい知らせとみているようだ」

同紙は球団本拠地のあるアナハイムのトレバー・オニール市議の「(売却は)再出発の機会であり、今はわれわれ全員が歓迎している」というコメントを取り上げ、地元はすでに歓迎ムードであることを紹介。米野球殿堂入りしている球団OBのロッド・カルー氏からも、「これはいいニュースだ」と喜びの声が上がった。

まだ検討段階にもかかわらず、球団売却がこれだけ歓迎されているのは、モレノ氏のこれまでのやり方に原因がある。それは、米スポーツ専門局「ESPN」の敏腕記者バスター・オルニー氏から「ワンマン経営で間違った方向に進んでしまった」と低評価されるほどひどかった。

モレノ氏はいわゆる、〝口は出すけど金は出さないオーナー〟だった。選手の編成面で大きな影響力を持ち、スター選手と大型契約を結ぶことが好きな一方、本当に必要な補強を行なわない人物だった。

また、球団総年俸が基準額を超えた場合に課される〝ぜいたく税〟の支払いに消極的だったため、歴代の球団GMは、モレノ氏が許す金額内で選手編成をすることが至上命令とされてきた。

それで強ければ問題はないが、エンゼルスは2015年からプレーオフ進出を逃し続けている。さらにエンゼルスのマイナー環境は、昨年7月に内部告発されるほど劣悪にもかかわらず、ほとんど投資がなされていない。

それでも03年から20年にわたってエンゼルスを保有してきたモレノ氏が、なぜ今になって球団を手放す気になったのか。地元紙「ロサンゼルス・タイムズ」は「彼には成人した子供が3人いるが、いずれも球団経営に興味がない」と、76歳のモレノ氏の後継者問題を理由に挙げた。

一方で、球場周辺の土地買収をめぐるスキャンダルが原因との見方もある。モレノ氏は19年に、アナハイム市から球場とその周辺の土地を買収し、大規模な再開発を計画していた。

しかし今年5月、当時の市長が汚職の疑いでFBIから捜査を受けていたことが判明(同市長はその後辞任)。アナハイム市議会は全会一致でこの売却合意を無効とした。

米スポーツメディア『ジ・アスレチック』は、「モレノ氏は少なくとも2ヵ月前から売却方針を描いていた」と伝え、この再開発計画の白紙撤回が球団売却の決め手になったとみている。

エンゼルスの市場価値が、今が最高であることも指摘されている。米経済誌『フォーブス』によれば、エンゼルスの資産価値は22億ドル(約3026億円)と試算されている(今年3月時点)。

前出の『オレンジ・カウンティ・レジスター』は「(売値は)30億ドル(約4109億円)を超える」とも予想。モレノ氏は前オーナーのウォルト・ディズニー社から1億8400万ドル(約252億円)で買収しているため、価値は当時の10倍以上だ。

そこまでの金額になったのは、マイク・トラウトと大谷の2大スターがいるからだといわれている。エンゼルスは来季オフまで大谷の保有権を持つため、オーナーが代わっても、少なくとも来季いっぱいは大谷を抱えられる。

今夏最大の関心事だった大谷のトレードも、モレノ氏の意向で実現しなかったとされているが、「すでにそのときから売却を検討していた」との推測もある。いずれにせよ、両選手を〝購入特典〟にできる今は売却のベストタイミングだ。

ただ、人気選手がいるとはいえ、これだけ高額な球団は売れるのか。早ければ年内に売却される予想も出ているが、モレノ氏はこれから買い手を探すようだ。

買い手候補がまだいないことから、『ロサンゼルス・タイムズ』は新オーナーを予想した。NBAゴールデンステート・ウォーリアーズのオーナーであるジョー・ラコブ氏を最有力候補に挙げ、「アナハイムで育ったラコブ氏は、過去20年でエンゼルスやドジャース、アスレチックスの買収を検討していた」と紹介。さらに同氏が「早急には答えられないが、いい機会を探りたい」と回答したことを伝えている。

ほかには、NFLのロサンゼルス・ラムズや英プレミアリーグのアーセナルなどのオーナー、スタン・クロエンケ氏らが候補に挙げられた。

しかし、エンゼルスは先に挙げたような数々の問題を抱えている。とりわけ、一番の問題は大谷の年俸だ。今オフに2度目の年俸調停権を取得する大谷は、来季以降に3000万ドル(約41億円)か、それ以上の年俸を手にすることが予想されている。

すでにトラウトやアンソニー・レンドンへの年間7250万ドル(約99億円)の支払いがあるなか、新オーナーは就任早々に急騰する大谷の年俸も負担しなくてはならない。そのため、「大谷は球団に残る」との見方も強いが、「新オーナーは大谷をトラウトと共に放出する」という意見も出ている。

突然の球団売却検討で、現地の大谷の話題はMVP争いから去就問題に移り、トレード先の予想が再び過熱。今後の所属先が不透明では来春のWBCに影響が出る可能性もある。想像もしない形で渦中の人となった大谷にどんな結末が待ち受けているのか。

取材・文/澤 良憲 写真/アフロ

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