男子バスケが五輪出場に向け大一番。渡邉雄太、八村 塁が不在でカギとなるのは?

男子バスケが五輪出場に向け大一番。渡邉雄太、八村 塁が不在でカギとなるのは?

昨年の11月、12月の試合は渡邉と八村抜きの国内組で連勝。残る2試合も勝利してワールドカップ出場を決めたい

闇の中で喘(あえ)いでいたのは、ほんの1年前のことだ。なのに、そのとき、舌に覚えた苦い味はいつの間にかどこかへ消えてしまった。

今年の8月末から中国で行なわれるバスケットボールワールドカップへの出場権をかけて、アジア予選を戦ってきた日本男子代表チーム。開幕から勝ち星を挙げられぬまま、昨年2月には連敗が4まで伸びてしまった。そのときは、誰もが本大会出場は絶望的だと思っていた。

しかしチームはその後、破竹の6連勝を遂げる。昨年4月に日本国籍取得が許可されたビッグマン、ニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース)、アメリカの強豪・ゴンザガ大で活躍する八村 塁、後に日本人2人目のNBA選手となる渡邉雄太(メンフィス・グリズリーズ)の"ビッグ3"が加入したことで、前に進まなかった車輪は大きく、力強く動き始めた。

2017年11月から始まった予選も残り2試合。現在、6勝4敗でグループFの3位につける日本は、2月21日に2位のイラン(7勝3敗)と、同24日に6位のカタール(2勝8敗)とアウェーで対戦する。この2試合を終えた時点で3位以上をキープすれば、自国開催だった06年大会(当時の名称は世界選手権)以来、自力でとなると98年以来の出場権獲得となる。

ふたつあるグループの4位のうち成績がいいチームも切符を得られる(開催国枠がある中国がグループEで4位以内に入った場合、同5位が対象になる)ため、他国の状況次第ではあるが、日本が好位置にいるのは間違いない。自力でワールドカップへの出場を決めれば、これまで国際バスケットボール連盟(FIBA)から保証されていなかった来年の東京五輪への「開催国枠」が与えられることも、ほぼ間違いなくなる。

むろん、残りの試合については予断を許さない。日本はこの2試合を、厳しい中東の環境で戦うのだ。イラン戦が行なわれるテヘランは、酸素量がおよそ9割になるとされる標高約1000mにある。アウェーでプレーする精神的な重圧もあり、通常以上に体力を消耗する可能性もあるだろう。また、故障などの不測の事態も排除できない。

当然、イラン戦を勝って突破の確率を高めておきたいところだ(イランに勝利し、かつ同グループ4位のフィリピンが敗れた時点で、日本の予選突破は決まる)が、容易な相手ではない。同国は今アジア予選の参加チーム中、オーストラリアに次いで世界ランキングの高い強豪だ(イランは26位、日本は47位)。

昨年9月にホームで破って(70−56)はいるものの、イランは218cmのビッグマンで元NBA選手のハメッド・ハダディと、同じく長年同代表を支えてきたサマド・ニックハ・バハラミらが不在だった。今回の試合では両選手とも復帰してくると目されている。グループ2位とはいえイランも予選突破は決めておらず、日本との対戦は激しく、泥くさい試合となるだろう。

グループ最下位に沈むカタール(2勝8敗)はイランと比べると力が落ちるチームではあるが、前回の日本戦では前半を32−31とリードで終えるなど苦しめた(最終スコアは85−47で日本の勝利)。日本代表は2月上旬、フリオ・ラマスHC(ヘッドコーチ)をはじめ数人の選手が取材に応じたが、ベテランの竹内譲次(アルバルク東京)は「ああいう試合をアウェーですれば命取りになる」と気を引き締める。

カタールは、「落ち着いてプレーすれば勝てる相手」と周囲は思うだろう。しかし、コートに立つ選手たちにそれほどの余裕はない。日本は富山での前2試合に続き、所属チームでの活動との兼ね合いで八村と渡邉の欠場は濃厚で、"ビッグ3"ではファジーカスがいるのみだからだ。

210cmの元NBA選手は、ここまでプレーした4試合で平均29.3得点、12.0リバウンドと、チームの大黒柱として活躍してきた。このファジーカスを、イランもカタールも封じにかかってくるのは確実だ。そのなかで、どれだけほかの選手が躍動できるかが勝負のカギを握る。

Bリーグで活躍する比江島慎(栃木ブレックス)と馬場雄大(アルバルク東京)は富山での2試合とも2ケタ得点を挙げ、今回もファジーカスに次ぐ得点源になることが期待される。また、ディフェンスの要・田中大貴(アルバルク)や、06年の世界選手権を経験している竹内、司令塔の富樫勇樹(千葉ジェッツ)らのプレーぶりも重要だ。

前回のイラン戦では、八村、渡邉以外に2桁得点者はなし。とりわけ"ビッグ3"加入前のエースだった比江島が4得点と低調だったが、今回は再度、主力としての働きが求められる。比江島自身も「塁、雄太が出場できない可能性が高いので、自分が仕事をしなければいけない」と自覚する。

もちろん、比江島以外の選手の活躍も不可欠だ。ラマスHCも「全員がもう少し(パフォーマンスを)上げて貢献してもらわないといけない」と話している。しかし一方で、プレーの質が上がり、連勝という結果がついてきていることで「選手たちに自信がついた」と述べているように、頼もしさは増している。

14年から15年にかけてFIBAからの資格停止処分を受けた日本のバスケットボール界。その後、Bリーグの発足や代表強化のテコ入れが進められ、16年には"アカツキファイブ"という代表の愛称が発表された。大仰な名前に当時はこそばゆさを感じたものだが、今、日本代表は文字どおり「夜明け」を迎えつつある。

取材・文/永塚和志 写真/千葉 格/アフロ 加藤誠夫/アフロ YUTAKA/アフロスポーツ

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