江夏豊がソフトバンク・工藤公康監督を直撃!「贅沢ですけど、実際、抑えは2枚います。(どのように起用するか)難しいところですね......」

江夏豊がソフトバンク・工藤公康監督を直撃!「贅沢ですけど、実際、抑えは2枚います。(どのように起用するか)難しいところですね......」

就任4年で3度の日本一!「最強軍団」を率いる指揮官・工藤公康監督(手前)を江夏豊氏が直撃した

育成出身の選手が何人も大成し、投打ともに圧倒的な戦力を誇るソフトバンク。昨季はリーグ2位から下克上を果たし、2年連続の日本一を成し遂げた。守護神のサファテが復帰する今季も優勝候補の大本命であることは間違いない。

『週刊プレイボーイ』で「江夏豊のアウトロー野球論」を連載中の"レジェンド左腕"江夏豊氏が、西武時代の後輩である「坊や」、福岡ソフトバンクホークス・工藤公康監督を直撃した!

■バッテリーを中心とした守りのチームが理想

江夏 もう35年も前か。オレが35歳で西武に移ったとき、あなたは高校を出て3年目だった。「坊や」と呼ばせてもらっていたけど、今じゃ、4年間で3度の日本一を成し遂げた監督だもんな。もう申し分ない、文句なしの成績だよ。

工藤 ありがとうございます。

江夏 まずは昨年の日本シリーズのことを聞かせてもらおうか。1勝1敗1分けで迎えた第4戦、初回の守りだよ。

工藤 広島の攻撃を連係プレーで刺しましたね。

江夏 そうそう。ワンアウト一塁で丸の当たりが右中間を破ったけど、センター・柳田が打球を処理してセカンド・明石に送球。明石がキャッチャー・甲斐に転送して、一塁から疾走してきた菊池を殺した。流れが変わったよね。

工藤 そうですね。追いつかれるギリギリのところまできたのを、逃げ切れたような。

江夏 あの守りは大きかったと思うよ。その点、ソフトバンクはディフェンスチームなのか、オフェンスチームなのか。あなたはどういうチームをつくっていきたい?

工藤 バッテリーを中心にしたディフェンス、点をやらない守りのチームが理想ですね。ただ、僕が監督になったときは打つチームという印象が強くて。

江夏 パ・リーグの野球自体が点取りゲームになりやすいから。2−1、3−1よりか、8−7、9−8のゲームが多くなるような。

工藤 まさに昨年優勝した西武がそういうチームでした。

江夏 とんでもない点の取り合いをするわな。

工藤 ええ。それで最終的に西武に競り負けたので、打つほうに力を入れるのもわかるんです。でも僕自身、ピッチャー出身ということもあり、どうやってバッテリーで打たせないようにするか、最少失点で抑えていくかを考えるほうに力を入れたいんですね。

江夏 でも、工藤投手というのはどちらかといえば、バックに点を取ってもらって勝った選手だろ?

工藤 いえ、そんなことないです! 防御率のタイトル、4回獲(と)ってますんで(笑)。

江夏 へぇー。そこまでピシャーッと抑えたイメージがないんだけどな。だって、あなたの場合、強いチームばっかり行ってボンボン勝ってたじゃないか(笑)。

工藤 いえいえいえ(笑)。僕がホークスにいたときも、優勝は5年で1度だけですよ。今の王(貞治)会長が監督をやられていた1999年です。

江夏 そうか、そうか。話を戻すと、工藤監督はあくまでもディフェンスチームでいきたいと。

工藤 そう思ってます。

江夏 実際、投手陣はどう?

工藤 今のところ順調にきていると思います。新人では4人のピッチャーがA組でしっかり調整できてますね。

江夏 新人でひとり、特にいいのがおるらしいね。

工藤 ドラフト1位の甲斐野ですか?

江夏 そうそう、甲斐野。いい球投げるらしいね。

工藤 いい球投げます。2位の杉山もいい球投げます。

江夏 ドラフトは御の字か。

工藤 そうですね。即戦力を獲っていただいただけのことはあって、それぞれ持ち味が違いますし、決め球も違うので、見ていていろんなイメージが湧いてきます。

■育成出身者も多数。期待に応える若手たち

江夏 生きのいい新人がいるのは大いに楽しみだけど、大事なのはその投手陣を引っ張るキャッチャー。昨年のシリーズで甲斐が一躍ヒーローになったよね。盗塁阻止でMVPになったが、彼にとっては一生、忘れられないと思う。

工藤 いい自信になったと思います。

江夏 キャッチャーはもうひとり、ベテランの谷がいるけど、今年使うのは甲斐?

工藤 甲斐を使おうと思っていますけど、ベテランの力も必要になりますので。

江夏 うん、場面によってはね。ところで、甲斐は育成で入ったんだよね?

工藤 育成からです。

江夏 鳴り物入りで入って育ってきたわけじゃないんだから、すごいことだよね。

工藤 ええ。うちは甲斐だけじゃなく、ピッチャーの千賀、石川、大竹も育成出身ですし、野手では牧原もそうです。

江夏 それはいいことだと思う。甲子園でスポットライトを浴びて入団してくる人も魅力的だけど、育成から這い上がってくる人にはまた違った見応えがあると思うから。ぜひ、これからもそういう選手をひとりでも多く育ててもらいたい。

工藤 ありがとうございます。

江夏 それから、若手では上林という外野手がいるが、彼も魅力のあるバッターだよね。

工藤 バッティング練習を見ていると、柳田に匹敵するぐらい飛ばしてます。体もこの2年でふた回り大きくなって、かなり自覚を持って取り組んでくれていると思います。

江夏 シリーズでは1番を打っとったけど、何番バッターが理想なの?

工藤 僕の頭の中では、やっぱり1番かなと。

江夏 クリーンナップは?

工藤 そこも考えなくはないんですけど、今は足を生かしてほしいと思っているので、1番ですかね。

江夏 そのクリーンナップで不動の4番の柳田。当然、その存在は大きいと思うけど、彼はキャラクターもおもしろい選手だよね。

工藤 すごく明るくていいと思います。でも、野球においては突き詰めてものを考えながら取り組んでいるんです。明るいキャラクターと一生懸命にやる姿と、両面を見せてやってくれているのですごく助かってますね。

江夏 それと、守りはショートの今宮が中心になるよね。

工藤 はい。内野の要ですね。昨年も後半、彼がケガしたときは守りのほうで気を使いました。もうケガも治りつつあるので、今年はなんとか試合に出続けてもらいたいと思ってます。

江夏 彼にはソフトバンクだけじゃく、リーグを代表するショートストップ、もっともっと大きな目で見れば、日本を代表するショートストップに育ってもらいたい、と思っているよ。

工藤 僕も特に守りのほうで期待したいですね。

江夏 ということは、柳田がいて、上林がいても、あなたの胸の中は守りに尽きる?

工藤 はい。守りに尽きます。

■森とサファテ。「抑え2枚」という贅沢な悩み

江夏 さあ、ソフトバンクといえば、今年は投手陣でひとつ問題があるよね。昨年、抑えで大活躍してタイトルを獲った森がいるが、今年はサファテが帰ってくる。抑えが2枚っちゅうのも贅沢(ぜいたく)な話だよね?

工藤 贅沢ですけど、実際、2枚いますね。

江夏 あなたの胸の中でも、Wストッパー?

工藤 いやあ(笑)。まだサファテが来たばかりなので、仕上がり具合も含めてちゃんと見ていきたいと思ってます。あまり無理をさせたくないですし。かといって、普段と変わりないように投げてくれて、しっかり抑えてくれる、というめどが立てば、僕らもちゃんと考えないといけない。もう少し、これから仕上げていく段階を見てから、ということになります。

江夏 練習試合、オープン戦を含めての結果次第か。

工藤 結果次第になると思います。当然、昨年は森が抑えとして頑張ってくれた、というところもありますので、そこはフラットな目線で、仕上がり具合を見てあげないと。

江夏 まあでも、難しいのは難しい、と思うよ。

工藤 難しいところですよね......。

江夏 あなたも見ていたはずだよ。日本ハムで抑えを任されていたオレが西武に入ったとき、抑えの森(繁和)がどれだけ神経を使ったか。オレは何回も言ったんだから、「抑えはおまえやぞ」って。

工藤 そうでしたか......。

江夏 オレは森の抑えの邪魔をしたくないし、「オレは7回、8回でいいんだから」と。今でいうセットアッパーでいいと。ただ、森にしてみたら、やっぱりオレの存在がものすごく気になっていたと。

工藤 いや、それはそう思いますって!

江夏 ハッハッハ(笑)。

工藤 江夏さんの存在を無視できるわけないですよ。気を使うなって言われれば言われるほど気を使っちゃいますって。

江夏 ただね、だいたい、こっちは邪魔しに来たんじゃないんだから。なんで西武はオレを獲ったのかっていう疑問はずっとあったもの。

工藤 でも、そこは「より安定して勝ちたい」という願望が球団にはあったんだと思いますよ。試合後半ってものすごく大事じゃないですか。僕も監督になって、後半の大事さは前半とは比べものにならないってことがわかりました。

江夏 今の野球は7回、8回、9回の継投で試合が決まると言っても過言じゃない。この世界、監督の采配でいちばん難しいのは継投、ピッチャーの代え時といわれるくらいだから。

■選手時代に仕えた名将たちの影響

江夏 あなたは多くの名監督たちの采配を見てきたよね。最初が広岡(達朗)さんで、森(祇晶)さん、王さん、長嶋(茂雄)さん。

工藤 その後、堀内(恒夫)さん、原(辰徳)さん、大矢(明彦)さん。

江夏 あとは渡辺(久信)か。いろんな監督の起用法、考え方は参考になってるか?

工藤 はい。今は起用法だけではなくて、選手と監督の立ち位置みたいなところを参考にさせていただいてます。

江夏 これだけの監督の下で野球をやってこられた、経験できたというのは、ある意味、幸せだと思う。

工藤 そうですね、本当に。

江夏 最後に今年の戦いのことだけど、ライバルはやっぱり西武か?

工藤 そうなると思います。

江夏 菊池が抜けて、浅村が抜けても西武?

工藤 ええ。浅村君に代わって、外崎(とのさき)君を固定して使えるようになったのはとても大きいのかなと。西武はピッチャーが整備されるとかなり強いと思いますので。

江夏 ならば西武を叩いて完全優勝、そして日本シリーズ3連覇を成し遂げてもらいたい。

工藤 がんばります!

江夏 期待しているよ。今日はありがとう。

●工藤公康(くどう・きみやす)
1963年生まれ、愛知県出身。西武、ダイエー、巨人、横浜を渡り歩き、現役時代は14度の優勝、11度の日本一を経験した"優勝請負人"。日本シリーズ通算最多奪三振記録を保持。2015年から福岡ソフトバンクホークスの監督に就任し、4年間で3度の日本一を達成

●江夏豊(えなつ・ゆたか)
1948年生まれ、兵庫県出身。阪神、南海、広島、日本ハム、西武で活躍し、年間401奪三振、オールスター9連続奪三振などのプロ野球記録を持つ、伝説の名投手。通算成績は206勝158敗193セーブ

構成/高橋安幸 撮影/五十嵐和博

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