メジャー流戦術のオープナー、超極端な守備シフトを連発する日本ハム「栗山革命」の正体

メジャー流戦術のオープナー、超極端な守備シフトを連発する日本ハム「栗山革命」の正体

栗山監督は今年の春季キャンプイン前からオープナー戦術に興味を示しており、極端な守備シフトについても昨年から構想を温めていたという。次はどんな策が飛び出すだろうか(写真は札幌ドーム)

「常識を疑えば、新しいものが生まれると思ってやってる」初めてオープナー戦術を実行した試合後の栗山監督の言葉だ。

単なる奇策か、それとも新時代を開く「革命」か......。その実態に迫る!

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■フロント・現場一体の「壮大な実験」

開幕早々、日本ハムが斬新なメジャー流戦術を連発して話題となっている。

そのひとつが「オープナー」と呼ばれるもの。元祖はMLBのレイズで、昨年5月19日のエンゼルス戦でリリーフ投手のロモを先発させ、2回から本来の先発投手を登板させたことが始まり。必ず1番打者から始まり、統計的に失点の多い初回を、立ち上がりから全力で行けるリリーフ投手に任せるという発想だ。

最終的に55試合でオープナーを活用したレイズは、平均防御率が改善されただけでなく、シーズン90勝72敗と大きく勝ち越し。そのレイズの後を追って、ドジャースやアスレチックスなどもオープナーを採用した。そして今季はオープナーに加え、初回からリリーフ投手のみで継投していく「ブルペンデー」を取り入れる球団が少なくない。

そのオープナーを、日本球界でいち早く採用したのが日本ハム。4月2日の楽天戦で先発した加藤貴之が無失点ながら3回で交代。2番手のバーベイトも同じく3回を投げ、計6回を1失点に抑えた。

その後も結果こそ出なかったものの、斎藤佑樹をオープナーとして起用したり、金子弌大(ちひろ)を2番手で投入したりと、試行錯誤を続けている。日本ハム担当記者が言う。

「メジャーのオープナーがリリーフ投手を先発させるのに対し、日本ハムは今のところ第1先発、第2先発をそれぞれ2、3イニングでつなぐ形。大谷翔平(現エンゼルス)が抜けた昨季から先発のコマ不足と若手の伸び悩みを抱えていることもあり、今後もデータを活用して個々の投手の特徴、相手打者との相性などを見つつ、改良を加えながら活用していく方向です。

日本ハムはメジャー球団と同様に、若手育成や選手の1、2軍の配置、そして戦術までフロント主導です。今季はフロントと現場が一体となり、壮大な実験を試みているといえる。もっとも投手陣にはマウンドに上がるまでの準備などを含めてまだ戸惑いがあるようで、慣れも必要でしょう」

前ヤクルト監督の真中 満(まなか・みつる)氏は、日本ハムのオープナー戦術についてこう語る。

「個々の投手の能力を生かす、という意味もあると思います。完投してもスピードや球威が落ちない投手もいれば、逆に短いイニングや打線の1巡目に限定すれば能力を発揮できる投手もいる。後者のような投手は登板のチャンスが増えるかもしれません。

先発投手全員が長いイニングを投げ切る能力があるなら、あえてこのシステムを使う必要はないかもしれませんが、長いシーズン、故障者が出ることもありますし、投手起用はなかなか思うようにいかないもの。ショートイニングで起用した投手を中何日で起用していくのか、結果を残し続ければ長いイニングを任せるのかなど、今後を見ないとわからない部分もありますが、チームや選手の状況に応じて活用していくのでしょう。

もしオープナーが球界に浸透すれば、いずれはホールドやセーブのような新しい『ポイント制』が導入されるかもしれませんね。例えば、3回1失点以内なら1ポイントとか。はっきりした数字が成績として組み込まれれば、投手もよりいっそう、役割を全うしようと頑張れると思います」

■アナリストを増員して大胆シフトに着手

さらに、今季の日本ハムは守備でも大胆なシフトを採用している。開幕カードのオリックス戦では4番・吉田正尚(まさたか)対策として、三塁手を一、二塁間の深い位置に置くなどして3試合でわずか1安打に抑えると、4月7日の西武戦では森友哉(ともや)に対し、三塁手を外野に置く外野4人制を敷いた。

日本ハムOBが語る。

「メジャーでは各打者の打球方向を分析した守備シフトを敷くことが当たり前になっていて、日本ハムも構想を温めていた。今季からデータ専門のアナリストをひとり増員し、計4人で分析したデータを活用しています。

吉田 正、森のケースでは三塁手が不在になるリスクはありますが、緒方耕一守備チーフコーチも言及していたように、そこでセーフティーバントを決められてもOKという割り切りがある。打者が長打狙いを捨てたり、シフトの頭を越えようと力むなど心理的なプレッシャーを与えられれば、ある意味で成功という考え方です」

現場でタクトを振る栗山英樹監督は固定観念にとらわれることをよしとせず、積極的に新たな策を取り入れてきた。今回も「批判は覚悟の上」と並々ならぬ意欲を見せる。

「以前から大谷を『1番・投手』で起用したり、プロ2年目の斎藤を開幕投手に抜擢(ばってき)したり、野球の神様といわれるベーブ・ルースの像がある静岡・草薙(くさなぎ)球場での試合に合わせてルーキー時代の清宮幸太郎を1軍に昇格させたりと、栗山監督はとにかく役者を引き立たせて周囲を驚かせ、うならせることが好きな人。映画や演劇でいう演出家に近い面があります。

もちろん失敗することもある一方、投手・大谷が初回先頭打者本塁打を放つなど、時として思いがけない名ドラマを生むこともあるんです(笑)。

今やトラックマン(ボールの動きを解析する機器)などで弾き出される投球の回転数や打球の角度といったデータは、どの球団も持っている。栗山監督はこれをいかに分析し、どう生かして勝利に結びつけるかに心血を注いでいるのです」(日本ハムOB)

演出家・栗山監督が進める"革命"はハッピーエンドを迎えられるか?

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