ウィンブルドンへ体を休めた錦織圭。大坂なおみは苦手コートで飛躍なるか

ウィンブルドンへ体を休めた錦織圭。大坂なおみは苦手コートで飛躍なるか

昨年の全英ではサーブの調子がよく、日本男子として23年ぶりベスト8進出を果たした錦織。ケガの状態も気になるところだが、いかに消耗を抑えるかが上位進出のカギになる

テニスの4大メジャーである「グランドスラム」で最古の歴史があるウィンブルドン(全英オープン)が、現地時間7月1日にロンドンで開幕した。"テニスの聖地"ともいわれ、どこよりも伝統と格式が重んじられるこの大会に、日本が誇るトップテニス選手ふたりが挑む。

錦織圭(ATPランキング7位。6月24日付、以下同)は、先の全仏で痛めた右上腕部の回復が思わしくないため、ドイツで開催された前哨戦のノベンティ・オープンを欠場した。

「これ以上のケガのリスクを避けたいので、チームで話し合って休養を決めた」と語った錦織は、全仏では2年ぶり3回目のベスト8に進出したものの、腰、左太もも、右上腕にテーピングをしてのプレーで満身創痍(そうい)だった。

今季のグラス(天然芝)コートでの試合は、全英が"ぶっつけ本番"になるが、過去には前哨戦の大会で3回もケガをし、100パーセントの状態で全英に臨めなかった苦い経験がある。まして、29歳になった錦織はプロテニス選手としては若くなく、健康を最優先にして調子を整えるのは間違った判断ではない。

今春に錦織は調子を落とし、4月からのクレーシーズンのスタートも決してよくはなかった。帯同するダンテ・ボッティーニコーチは、「(圭が)自信を取り戻せれば、100パーセント大丈夫」と前向きな言葉を残していたが、全仏ベスト8という結果は、自信を取り戻すきっかけになったかもしれない。

錦織の全仏での収穫は、一番の武器であるフォアハンドストロークの威力が戻ってきたこと。リターンでもラリーでも、ボールが弾んでから伸びる深いフォアが、何度も攻撃の起点になった。

「調子が上がってきたのは、何よりの救いというか、次に向かってポジティブにいられる要素ではある」(錦織)

一方で、試合の勝敗やセットの取得に直結するサービスゲームでは、ファーストサーブの成功率が落ちたり、ダブルフォールトをしたりとまだ安定性に欠ける。全英では、さらにサーブの重要性が高まるため、グラスを苦手としてきた錦織はサーブを是が非でも改善しておきたい。

今季の男子は、"ビッグ3"が依然として強さを発揮している。全豪優勝のノバク・ジョコビッチ(ATPランキング1位・セルビア、32歳)、全仏優勝のラファエル・ナダル(同2位・スペイン、33歳)、そして、全英で男子最多の8回の優勝を誇るロジャー・フェデラー(同3位・スイス、37歳)が、全英でも優勝戦線の中心になるだろう。

錦織の全英での最高成績は、昨年のベスト8。それ以上を狙うには、"ビッグ3"をはじめとした強豪と対戦する前に、なるべく省エネで大会1週目を乗り切り、体力を温存しながら調子を上げていくことも必要だ。

一方の大坂なおみ(WTAランキング2位)は、前哨戦のネイチャーバレー・クラシックの2回戦で敗れ、グラスでの試合を十分にこなせなかった。子供のときにグラスでのプレー経験が乏しかった大坂は、今でもグラスでのプレーを「あまり心地よくない」と感じている。

ボールが滑るように低く弾むためにラケット面をしっかり合わせることが必要で、さらに足元もスリップしやすいグラスになじめていないのが現状だ。時速180キロ前後をコンスタントに出せるファーストサーブは、グラスではサービスエースになりやすいが、攻撃が単発な上にミスが多く、持ち味を生かしきれていない。

ここ1年で大坂は劇的な成長を遂げた。今年1月の全豪で日本人初の優勝を果たし、昨年9月の全米に続いてふたつ目のメジャータイトルを獲得。1月28日付のWTAランキングで、日本人初の1位に到達した。

本格的に"大坂なおみ時代"が来ると思われていたが、2月上旬、昨シーズンからツアーに帯同していたアレクサンドラ・バインコーチとの関係を解消。

全豪初優勝と初の世界ナンバーワンになった直後だっただけに衝撃は大きかった。そして3月上旬のBNPパリバ・オープンからは、ジャーメイン・ジェンキンスコーチと共に新たなスタートを切った。

大坂は、「毎日コートへ向かうなかで、自分が正しい方向へ向かっていると感じます。すごく楽しみながら、とても前向きになっています」と、自分をサポートするチームの雰囲気もいい状態であると語る。

しかし、コーチが代わってからはツアー優勝がなく、まだ大きな結果を残せていない。なんとか世界1位は21週間死守したが、その座も明け渡すことになった。

全英では3回戦が最高成績で、今大会はグラスに適応しながらのプレーになるため、あまり大きな結果を期待するのは酷かもしれない。まずは自身初のベスト8が現実的な目標になるだろう。

そんな大坂に代わってランキング1位になったのが、全仏でグランドスラム初優勝を果たしたアシュリー・バーティ(オーストラリア)。さまざまな球種を巧みに使うオールラウンドプレーヤーで、特にバックハンドのスライスはキレがある。

彼女はグラスを得意としているため、全英では優勝候補のひとりになる。21歳の大坂と同世代の23歳のバーティは、今後はビッグタイトルを争うだけでなく、お互い女子テニス界をリードしていくライバルになっていくはずだ。

果たして大坂は、"テニスの聖地"で存分に力を発揮し、1位を奪還することができるのか。新たな戦いの火ぶたが切られる。

取材・文・撮影/神仁司

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