社会人野球の頂上決戦で、NPBのスカウトが注目する即戦力候補は?

社会人野球の頂上決戦で、NPBのスカウトが注目する即戦力候補は?

今秋のドラフトで上位指名がありそうな東芝の宮川。東海大山形高、上武大時代から注目度が高かった右腕は、都市対抗野球でさらにアピールできるのか

次の即戦力は誰なのか。

夏の高校野球の地方大会が展開する裏で、東京ドームで7月13日から25日まで開催されるのが「都市対抗野球大会」である。全国各地の予選を勝ち抜いた36チームが出場する同大会は、社会人野球の選手にとっては年に1度の晴れ舞台。各企業が威信をかけてスタンドを埋め、大応援合戦を展開する。

昨年は大阪ガス(大阪市)が優勝。その原動力となり、MVPに相当する「橋戸賞」を受賞したのが近本光司(現阪神)である。近本は打率5割2分4厘、1本塁打、4盗塁と大活躍し、プロ野球スカウト陣の評価を一気に高めた。そして昨秋のドラフト会議では阪神から1位指名を受け、今季は1番打者として新人王レースの先頭を走る活躍ぶりを見せている。

当然、今年も東京ドームのバックネット裏にはスカウト陣が集結する。近本に続く即戦力はいるのか? 焦点はそこになるだろう。

今大会、最もスカウト陣から熱視線を浴びそうな即戦力候補は東芝(川崎市)の宮川 哲だ。上武大から入社2年目の本格派右腕で、今春のスポニチ大会ではずばぬけた投球を見せた。

宮川の長所は、どの球種も勝負球として使えること。最速154キロの快速球に、カーブ、カットボール、フォークとすべての球種で三振を奪える。特にカーブは、タテに鋭く変化する「魔球」のようなボール。バウンドすると独特の跳ね方をするため、捕手が止めるのもひと苦労だ。

上武大4年時にはプロ志望届を提出するも指名漏れ。能力の高さは大学時代から際立っていたが、1年を経てさらにスケールアップした。今や上位指名でなければ獲得できない大物になっている。

春先は「大事なところで決めきれない」と課題を語っていたが、都市対抗でさらに成長を見せつけられればドラフト1位指名も見えてくる。

また、今年は高卒3年目でプロ解禁を迎える若きホープが多いのも特徴だ。

その筆頭格はJR東日本(東京都)の太田 龍である。身長190cm、体重93kgの巨体を誇る大型右腕で、高いリリースポイントから投げ下ろす角度が特徴的。最速153キロの剛球は、今後さらに伸びそうな予感がある。

しかし、本人は速球にこだわりを持ちつつも「真っすぐだけではプロに通用しないので、変化球でカウントを取れるようにしたい」と高みを見据える。

都市対抗予選では不安定な投球が目立ったが、大舞台で本領発揮できれば将来性を含めてスカウトの評価はうなぎ上りになることだろう。

高卒3年目で完成度が高いのはJFE西日本(倉敷市・福山市)の河野竜生(りゅうせい)である。決して豪快さはないものの、コンパクトなテイクバックから丁寧に両コーナーに投げ分け、自滅することがない。

昨秋の日本選手権では2完封をマークして、準優勝の立役者になった。年齢の割にスケールの乏しいタイプと思われがちだが、今年に入って球速も最速151キロまで上がってきている。先発できる左腕という希少価値もあり、故障さえなければ間違いなく1位で消える存在だろう。

太田、河野と共に"高卒3年目ビッグ3"に挙げたいのは立野和明(東海理化)だが、東海理化は都市対抗予選で敗れ、出場権を逃してしまった。

とはいえ、都市対抗には「補強選手制度」がある。本戦に出場するチームは、予選で敗れたチームの選手を3人まで補強できるのだ。立野は強豪・トヨタ自動車(豊田市)に補強され、都市対抗に出場することになった。

立野の魅力は速球の球質のよさ。最速152キロのスピードガン表示以上に、捕手の手元で伸びてくるようなキレがある。スプリットやカットボールのような速い変化球もあり、本人は「速い球で押していくタイプなので、いずれはリリーフをやりたい」と抑え適性に自信を持っている。

都市対抗予選前に打球が足に当たった影響で調整が乱れ、予選は不本意な投球に終始した。とはいえ、本戦に向けて「棒球だったストレートが修正できてきた」と手応えをつかみかけている。

野手は個性派の2選手に注目したい。パナソニック(門真市)の片山勢三は176cm、105kgのぽっちゃり体形が目を引くスラッガー。幼少期に中村紀洋(元近鉄ほか)に憧れただけあって、ホームランを放った直後の「バット投げ」は豪快そのもの。昨夏の都市対抗でも強烈な一発を放つなど、大舞台での強さは高校時代から折り紙付きだ。

プロでも山川穂高(西武)や井上晴哉(ロッテ)のような巨漢大砲が台頭しているだけに、片山もその追い風に乗りたいところ。好不調の波を抑えられれば、プロへの道も開かれるに違いない。

最後に紹介したいのは、明治安田生命(東京都)に補強された大型内野手の中山悠輝(東京ガス)である。

今年はプロ野球セ・パ交流戦で首位打者に輝いたオリックスの新人・中川圭太が「最後のPL戦士」と話題になった。16年に野球部が休部したPL学園出身の最後のプロ野球選手という意味だ。しかし、社会人には中川より1学年先輩の中山もいる。

PL学園から入社6年目を迎え、すでにプロに進む「適齢期」は過ぎたように思えた。だが、今季は春先から目をギラつかせて鬼気迫るプレーを見せている。打っては簡単にはアウトにならないしぶとさがあり、守ってはフェンスを恐れずユニフォームを汚す。

近年苦しめられた腰痛も癒えただけに、例年とはひと味違う姿を東京ドームで見せられれば、「最後のPL戦士」がまだいることを証明できるはずだ。

取材・文・撮影/菊地高弘

関連記事(外部サイト)