東京五輪世代の闘志あふれるDF、浦和レッズ・橋岡大樹が語った苦悩と未来

東京五輪世代の闘志あふれるDF、浦和レッズ・橋岡大樹が語った苦悩と未来

橋岡大樹 1999年生まれ、埼玉県出身。182cm、73kg。浦和レッズのジュニアユース、ユースを経て、2017年にトップチームデビュー。身体能力の高さと冷静な判断力、闘志を前面に出すプレースタイルで、各世代の日本代表でも活躍する

U−20日本代表の中心選手だった20歳の青年は、戦友たちの活躍を日本から複雑な心境で眺めていた。

「日本が勝ち、チームメイトが活躍するとうれしい一方、負けたくないという感情と、焦りも感じていました。U−20W杯に出ていないメンバーも、南米選手権で存在感を放っていましたから」

橋岡大樹にとって、今年は飛躍の一年になるはずだった。昨年はルーキーながら、名門・浦和レッズでレギュラーポジションを確立。5月に行なわれたU−20W杯でもCBとしてチームを牽引(けんいん)することが期待されていた。

だが、ひとつのケガが橋岡の歯車を狂わせることになる。4月のヴィッセル神戸戦で肉離れを起こして戦列を離れると、U−20W杯を含む国際大会をすべて欠場した。

「もちろん、ケガの直後は落ち込みましたけど、『焦らずにやるしかない』と切り替えるように努めました。この試練は今後のサッカー人生に必要なものなんだと。結局、今回のケガをどう先に生かすかは自分次第ですから」

筆者が橋岡のプレーに初めて触れたのは、彼が15歳のとき。その頃から、アンダーの各代表で"飛び級"を果たしていた橋岡を「ミスター飛び級」と呼ぶ声もあった。

U−16日本代表の一員としてフランス代表やチリ代表と戦ったなかで、190cm超の相手FWに競り勝つジャンプ力、スピード勝負を仕掛けてくるアタッカーを完封する走力など、その身体能力は際立っていた。また、相手を萎縮させるような闘志は、現代サッカーでは希少となった、クラシカルなDF像を想起させた。

浦和のチームメイトである槙野智章の"橋岡評"も興味深い。「久しぶりにエナジーとパッションを持つ後輩で、衝撃を受けた若手。跳ぶこと、走る能力はずばぬけている。将来は代表、海外でもプレーできると思う」

槙野もそう絶賛する能力は、Jリーグでも遺憾なく発揮されている。特に空中戦を含めた、対人の強さはリーグでもトップクラスだ。一方で、プロとして壁に直面したのも事実。もともとのCBではなく、不慣れな右のSB・WBに主戦場を移している。

「試合に出るために、『どこでもやります』と(オズワルド・)オリヴェイラ前監督に直訴しました。出場できないと話にならないので。出場機会を得た結果、対人の強さやスピードが十分に通用することは確信が持てた。ただ、攻撃の部分は物足りない。攻撃を意識しすぎるあまり、持ち味の守備のよさが消えてしまうジレンマもありました」

実際に、今季のリーグ戦ではベンチ外になる試合も。また、自身の不用意なパスミスが失点につながり、敗戦に直結するシーンもあった。

浦和のジュニアユースからの生え抜きである橋岡には、期待の高さゆえに、時に厳しい意見が寄せられることもある。「とにかくがむしゃらだった」という昨季とは、見える景色、チーム内の立場も変わった。浦和という注目度が高いクラブで、10代から試合に出場している意味を、橋岡自身が理解しているからともいえる。

試行錯誤を重ねながら、苦しいシーズンを過ごしている橋岡だが、それでも根幹はブレない。WBやSBでのプレーに挑戦するのも、さらなる成長と先を見越してのことでもある。

「僕のサイズ(182cm)で、CBで世界のトップと戦うのは厳しい局面が出てくるはず。だから、少しでも自分の可能性を広げたい。僕は世界に出たいのではなく、世界で活躍することが目標。その過程で、今の葛藤は必要な経験になると思っています」

橋岡の性格は、気持ちを前面に押し出すプレースタイルとは対照的だ。前向きな発言が多く"底なしのポジテイブ思考"にも映るが、実際は思慮深く堅実。それは、海外移籍に関する考え方にも見て取れる。

堂安 律、冨安健洋、安部裕葵、久保建英らが顔をそろえる東京五輪世代。彼らは当たり前のように海外を意識してきた世代だ。今オフには久保がレアル・マドリードに、安部がバルセロナへと拠点を移し、同じDFである冨安、菅原由勢らも海を渡った。

その世代は、「このクラブに行きたい、このリーグで活躍したい」と発言する選手も多いが、橋岡は異なるスタンスを貫いている。

「もちろん僕も、『このクラブでやりたい』という思いはあるし、やれる自信もある。でも、今はそれを口に出すタイミングではない。目標のためにひとつずつ課題を積み重ねている段階。正直、世界もSBへの挑戦もそんなに簡単ではないと痛感しています」

一方で、自身が目指す選手像についてはこう即答した。

「昔からずっと(元バルセロナDFのカルレス・)プジョル選手が目標だった。彼のスタイルは"魅せる"プレーではないけど、常に全力で心を打たれるんです。見ている人を感動させることができる。そういう選手は限られた存在だと思うし、自分もそうありたいですね」

また、タレントぞろいの東京五輪世代の中で、自身をこう位置づけている。

「技術が高く、本当にうまい選手がそろっている。久保や安部なんかは、うまいだけじゃなくて僕にはない華もある(笑)。ただ、うまくなくても、人を感動させるプレーはできる。誰よりも声を出し、誰よりも体を張り、チームを鼓舞する。悔しい経験を経て、チームが苦しいときに、ピッチ上でそういう面も表現していければ、おのずと勝利に貢献できると思うんです」

来る東京五輪。苦境を乗り越え、羽化した橋岡の躍動する姿を期待してやまない。

取材・文/栗田シメイ 写真/(C)URAWA REDS アフロ

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