市川紗椰が語る、引退した安美錦の気遣いとユーモアあふれる人柄

市川紗椰が語る、引退した安美錦の気遣いとユーモアあふれる人柄

安美錦の引退後の活躍も楽しみにしています

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。相撲ファンの彼女が引退した安美錦(あみにしき)について思い入れたっぷりに語る、後編!

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前回に引き続き、先日引退した安美錦関についてです。心に残るシーンが数え切れないほどありますが、今週は取組ではなく人柄についてお話しします。

最近のハイライトは、やはり2017年十一月場所。このとき、安美錦は39歳にして歴史的な再入幕を果たしたばかりだったので、場所前から注目されていました。その結果はなんと、勝ち越した上に敢闘賞を受賞。

常にひょうひょうとしており、冷静かつスマートなキャラクターで、インタビューでもジョークを交えて聞き手を翻弄(ほんろう)する安美錦が、珍しくインタビューで感極まって涙を流した姿が忘れられません。

その後も技巧派ぶりは健在でしたが、「もはやズボン?」と思うくらいテーピングで右膝をガチガチに固めて土俵に立つ姿は、悲壮感すら漂っていました。最近は心と体がうまく噛(か)み合っていないというか、自分のイメージどおりの相撲を取れていないんだろうなということは見ていてもわかりました。

そして今年の七月場所、2日目に竜虎(りゅうこう)との一番で右膝を痛めたことが引退の決め手に。引退を発表したときはさすがに寂しかったものの、「やりきったとはこういうことだな」と私は感じました。

ちなみに、相手の竜虎は21歳の最年少関取。安美錦にケガをさせてしまったことを気にしていたようですが、尾上部屋で竜虎を指導する佐ノ山親方(元里山)を通じて、安美錦が「気にするな。里山も(俺に)勝ったことがないんだから、自信を持って相撲を取れ。いい相撲だった」と伝えていたそうです。

素晴らしいバトンタッチと粋な気遣い。あぁ、あみたん。

目頭が熱くなる名場面がある一方で、すごく笑わせてくれたエピソードもあります。記憶にあるのが、師匠である伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)の娘さんの誕生日と重なった、08年の五月場所6日目のコメント。

「懸賞金で何か買おうと思ったけど、懸賞がかかってなかった」とユーモアを交えて話していました。

また、最後の引退会見では、右膝を指して「また最後におまえにやられるのか」。ここまでくると、もうマンガの登場人物みたいな切れ味です。

さらに、遠藤が勢いのある若手だった頃、その遠藤に勝ったらインタビューしていいかを尋ねられた際に、「女性がインタビューしてくれるなら」と答えた安美錦。

実際に勝ってインタビューを受けたときには、聞き手が男性アナだったため「ちょっといやですけど」と言いながら、最後には「もう終わり?」と聞くなど、力士らしからぬ軽妙さが名物でもありました。

ただ、実際にお話しするとものすごく謙虚で紳士な方で、丁寧な対応が印象的でした。そんな人柄をファンも知っているからこそ、土俵入りのときは常に大きな声援を送っていたのでしょうね。

22年半の土俵人生を終えた安美錦。今後は「安治川」を襲名し、伊勢ヶ濱部屋の部屋付き親方として後進の指導に当たります。安治川親方はどんな指導者になるのか。本人のように"業師"で面白い相撲を取る力士を育ててほしいのはもちろん、テレビ中継などでの軽口交じりの解説にも期待しています。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21時〜)などにレギュラー出演中。イケメン力士と呼ばれていた安美錦。「角界の田中裕子」と呼ぶ人もいたが、それはいまいちピンとこない

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