サッカー界の高騰する移籍金に宮澤ミシェル「所属クラブで出番を失いながらも、移籍金が高すぎて新天地に移れないのは不幸だよな」

サッカー界の高騰する移籍金に宮澤ミシェル「所属クラブで出番を失いながらも、移籍金が高すぎて新天地に移れないのは不幸だよな」

高騰する移籍金について語った宮澤ミシェル氏


サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第112回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、移籍金について。ここ数年、高騰を続けるサッカー界の移籍金。それに伴い恩恵を受ける選手がいる一方で、不幸を被っている選手も多いと宮澤ミシェルは解説する。

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監督の構想外になってしまうと、選手にとっては『地獄の時代』とも言えるよな。

今シーズンに向けてレアル・マドリードは、チェルシーからエデン・アザールを1億ユーロ(約122億円)で獲得した。これはレアル・マドリード史上、過去最高額なんだそうだ。

ジネディーヌ・ジダンやロナウド、デイヴィッド・ベッカムを獲得したときの方が、移籍金は大きかったと思っていたけれど、実際には2001−2002シーズン前にジダンを獲得した際にユヴェントスへ支払われたのは7750万ユーロ(約91億円)。ロナウド獲得で前所属のインテルへは4500万ユーロ(約55億円)、ベッカムは3750万ユーロ(約47億5000万円)。

2018−19年シーズンに獲得した"これからの選手"のビニシウスと、"全盛期"のロナウドが同額なのも、時代の流れがよく表れているよな。ベッカム獲得のためにマンチェスター・ユナイテッドに支払われた移籍金は、彼のユニフォームが世界中でどれだけ売れたかを考えれば格安に感じちゃうね。

いまの時代、最先端のスポーツ競技には莫大なお金が動くから、サッカーでも移籍金が高騰するのは当たり前のこと。選手もその恩恵を十分に受けている。けれども、ポジションを失ってピッチに立てなくなったときに、新たなチームへの移籍という選択肢は、以前よりもハードルが高くなっているよな。

高い移籍金で獲得した選手というのは、期待通りの活躍ができれば天国だよ。レアル・マドリード史上2番目の移籍金でマンチェスター・ユナイテッドから加わり、2017−18シーズンまで9年間プレーしたクリスティアーノ・ロナウドがその典型だね。

彼は9600万ユーロ(約118億円)の移籍金でレアル・マドリードに加わり、その間に数多くのタイトルをもたらした。しかも、それだけではなく、最後はユヴェントスからの1億1200万ユーロ(約146億円)の移籍金の置き土産までしてくれた。最高のケースだよな。

でも、すべての選手がC・ロナウドのようにハッピーエンドを迎えられるわけではない。望まれて移籍してきても、その価値が失われてしまう選手の方が多いかもしれないよな。しかも、そうした選手たちは、次のクラブでプレーする機会をなかなか得られない可能性も高い。サッカー選手なのにピッチに立てないっていうのは、最大の不幸だよな。

このオフシーズンにレアル・マドリードを後にすると噂の絶えなかったガレス・ベイルは、結局はチームに残留することになったけれど、最終的にネックになったのが移籍金の高さだったらしいよね。2013年に彼がトッテナム・ホットスパーから加入した時に動いた金額は9100万ユーロ(約111億円)。これはアザール、C・ロナウドに次ぐ、レアル・マドリード史上3番目の高額移籍金だったんだ。

ジダン監督から構想外と言われ、放出候補だったのが、レアル・マドリードに故障者が続出したことで一転してレギュラーの芽も出てきた。ただ、それでも彼の今後は安泰とは言えない。ベイルのように所属クラブで出番を失いながらも、移籍金が高すぎるために新天地に移れないケースは増えているんだよな。

ただ、物は考えようで、世界最先端のクラブで干されて出番がないとはいえ、彼らのもらっている給料の多さを考えれば、彼らの状況はサッカーキャリアのなかでは不幸な時期だろうけれど、人生としては不幸な要素は感じられない。だって、試合に出ないでも年間で何億円、何十億円という給料が受け取れるんだぜ。

でも、やっぱりサッカー選手としては、プレーもせずに何億円も受け取っても寂しいだけだよな。彼らのファンだって、ビッグクラブで飼い殺しになっているよりも、小さなクラブであってもプレーをもっと多く見たいと思っているからね。

最近は選手がクラブからの契約延長を断って、移籍金の発生しない自由の身で新天地に移るケースも増えてきた。ただ、フランス代表のラビオのように所属のパリSGが見せしめに試合で使わない措置を取ることもある。

現在のサッカー界の歪んでいる部分だよな。こうした問題を解決するために、選手の年俸や移籍金を低くすればいいのかと言えば、そう簡単な話ではないんだ。未来の選手のためには、過去よりは現在、現在よりは未来へとつながるように、選手の価値を高めていくことは必要不可欠なことだからね。本当に難しい問題だからこそ、開幕前に移籍できた選手も、できなかった選手も、来季以降の身分を保証するために、全員に活躍してもらいたいよ!

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太

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