プロ野球を諦めない。独立リーグでドラフト指名を待つ雑草選手たち

プロ野球を諦めない。独立リーグでドラフト指名を待つ雑草選手たち

高校時代は内野手と投手を兼任していた、埼玉武蔵ヒートベアーズの松岡。入団後にサイドハンドに転向し、高卒1年目でリリーフとして活躍した

10月17日に迫ったプロ野球ドラフト会議。高校、大学、社会人の王道ルートからNPB入りを狙う者もいれば、なかには独立リーグという本筋から外れたルートから最高峰の舞台を目指す者もいる。エリートにはない、ハングリー精神むき出しのギラついたプレーには、見る者の心を打つ力がある。

日本にはBC(ベースボール・チャレンジ)リーグ、四国アイランドリーグplus、関西独立リーグの3つの独立リーグ団体がある。今年は特にBCリーグに有力な好素材が多い。

筆頭格は19歳の快速球サイドスロー右腕・松岡洸希(埼玉武蔵ヒートベアーズ)である。

つい1年前は、部員14人の県立弱小高校の背番号5だった。3年間の夏の埼玉大会の戦績はすべて初戦敗退。そんな無名の選手が独立リーグに進み、サイドスローに転向してわずか半年でドラフト候補になるのだから夢がある。

かつてヤクルトで大活躍した韓国人サイド右腕・林昌勇(イム・チャンヨン)のフォームを模倣し、ダイナミックな腕の振りから最速149キロをマークする。まだ高卒1年目という若さも評価ポイントだ。プロとの交流戦でも好投しており、ドラフト指名有力とみられる。

「中学までは体が小さくて、背の順では常に一番前。中学の軟式野球部でも戦力になれなくて9番ショートでした。プロなんて、なれるとも思っていませんでした」

そう語るシンデレラボーイは、「常時145キロは投げられるようになりたい」とさらなる進化を誓う。NPBに進むとすれば、BCリーグ同様、リリーフとしての起用が予想される。

即戦力という意味で注目なのは、長谷川凌汰(新潟アルビレックスBC)だ。150キロ前後の力強いストレートとスライダー、フォークを武器にする本格派右腕。昨年も指名有力とみられたが指名漏れに終わり、今季はリーグ戦で11勝1敗、防御率2.05と結果を残した。

プロ球団との交流戦では、ファームのチーム相手とはいえNPBの打者を圧倒。本人も「長谷川はやっぱりレベルが違うなとスカウトに思わせたかった」と語ったように、バックネット裏で見守るNPBスカウト陣に力を見せつけた。

長谷川は福井商高の3年時に夏の甲子園で注目された有望株だったが、進学した龍谷大学でフォームを見失い、球速が一時は120キロまで落ち一般企業への就職を考えていた。だが、大学4年の最後のシーズンに、突如フォーム修正がしっくりきて復調。このまま野球をやめるには惜しいと、独立リーグに流れた経緯がある。

今年は何がなんでもNPBに行く。そんな決意を込めて、長谷川はこう語った。

「年齢(24歳)的にも、僕は1軍即戦力にならなければ指名はありません。この一年はNPBに入ることが目標ではなく、1軍で活躍するためにはどうすればいいのかを考えてやってきました」

野手でスカウト陣が注目しているのは、快足外野手の加藤壮太(埼玉武蔵ヒートベアーズ)である。

身長187pと大柄ながら、今季リーグ29盗塁とプレーにスピードがある左打者で、課題の打撃も徐々に力強さを増している。やや送球動作にクセはあるものの、21歳という若さも"伸びしろ"ととらえられるだろう。

一方、ロマンあふれる右の長距離砲として注目したいのが速水隆成(はやみず・たかなり/群馬ダイヤモンドペガサス)だ。

身長189p、体重102sの筋骨隆々とした肉体に、豪快なフォロースルーで飛距離を伸ばす打撃は底知れぬスケールを感じさせる。

高校時代は大きな体とは裏腹に「右打ちとバントが得意だった」と自虐的に語る。高校3年夏は試合に出たり出なかったりの選手だった。

BCリーグ1年目はリーグ戦で0本塁打に終わったが、2年目は8本、3年目は14本と着実に力をつけてきた。4年目の今季は力感なく飛距離を出せるスイングを身につけ、リーグ64試合で14本塁打、62打点と結果を残した。課題の守備も難のあったスローイング動作を改善し、大きな穴はなくなった。

プロとの交流戦ではBCリーグ選抜の4番に座り、巨人3軍との試合では右中間フェンス直撃の二塁打を放つなど、4打数3安打2打点と結果を残した。打撃偏重タイプだけにNPB側の評価は賛否が分かれるだろうが、貴重な和製大砲の卵でもありトップレベルで育成された姿が見てみたい。

勝負の年を終え、速水はNPBへの熱い思いを語った。

「僕の場合、三振したとしても当てにいかずにブンブン振っていきます。長打を打たないと評価されませんから。バッティングは自信があるので、NPBの1軍に行っても打てると言いたいです」

過去に角中勝也(ロッテ)や又吉克樹(中日)ら、大出世した好素材を輩出する四国リーグだが、今年はやや人材が乏しい印象だ。

それでも、最速152キロを計測する石井大智(だいち/高知ファイティングドッグス)は一段上のレベルにある。身長175pと上背はないものの、快速球とシンカーのコンビネーションで三振を奪える右腕。リストアップしている球団もあるだろう。

石井は高等専門学校出身という変わり種で、高専に5年間通って卒業してから独立リーグの門を叩いた。2年目の今季に、悲願のプロ入りへの思いを託している。

恵まれているとはいえない環境で、たくましく生き抜いてきた雑草たち。彼らの壮大な夢は叶かなうのか。10月17日に、その答えが出る。

取材・文・撮影/菊地高弘

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