日本サッカー界のふたりの"切り札"、久保建英と安部裕葵がスペインで進化中

日本サッカー界のふたりの"切り札"、久保建英と安部裕葵がスペインで進化中

ラ・リーガの第16節を終えた時点で、マジョルカの久保は13試合に出場。ドリブルでのチャンスメイクなどが高く評価されているだけに、まだ1得点のゴール数も増やしていきたい

今年の夏にスペインへと旅立った久保建英(18歳)と安部裕葵(20歳)。来年の東京五輪で金メダルを目指す日本サッカー界の"切り札"と目されるふたりが、現在スペインで着実に進化を遂げている。

とりわけ目を見張る成長を見せるのが、FC東京から名門レアル・マドリードに移籍した久保だ。すでに日本代表の常連にもなっている久保は、今季はレアル・マドリードのトップチームではなく、同じラ・リーガ(スペイン1部)のマジョルカにレンタル移籍。

かつて大久保嘉人(現・ジュビロ磐田)や家長昭博(現・川崎フロンターレ)がプレーしたこともある、地中海に浮かぶ島のクラブの一員として、スペインのトップリーグで勝負することを選択した。

すると、10歳から約3年半を過ごしたスペインの水が合ったのだろう。スペイン語で周囲とコミュニケーションが取れることも奏功し、開幕から3試合連続で途中出場。3試合目には初アシストを記録するなど、予想以上のスピードでチームに溶け込んだ。

とはいえ、マジョルカは7年ぶりに1部昇格を果たしたチームであり、今季の最大の目標は1部残留だ。攻撃的に戦いながら勝ち点を積み上げるだけの戦力もなく、どうしても守備を重視した戦い方を強いられる。攻撃時にこそ実力を最大限に発揮できる久保にとっては、難しい環境でのプレーだったに違いない。

実際、チームを率いるビセンテ・モレノ監督も、久保の起用については「彼はまだ18歳。焦らずに、じっくりなじんでほしい」とコメントするなど、あくまでも昨季のメンバーをベースに戦い、攻撃したいときの"ジョーカー"として久保を起用していた。

潮目が変わったのは、4度目のスタメン出場となった第13節のビジャレアル戦だ。この試合で先制点につながるPKを獲得した久保は、53分に待望の初ゴールを記録するなど、チームの今季4勝目の立役者となったのである。このゴールをきっかけに、以降はライバルを押しのけて4−1−4−1の2列目右サイドのポジションに定着した。

現在の久保に対する周囲の評価は、少年時代を過ごした古巣バルセロナとの一戦でも証明された。バルセロナにとっての宿敵レアル・マドリードを選んだ久保がボールを持つたびに、スタンドのバルセロナサポーターは一斉にブーイング。相手サポーターにライバルとして認められた久保にとっては、勲章ともいえる出来事だった。

また、世界の一流選手がそろうバルセロナに対して動じることなく果敢にドリブルで仕掛けるなど、チームは完敗したものの、しっかりと爪痕を残すことに成功。何より、モレノ監督からの評価を一段と高めたことが大きかった。

試合後、指揮官は「彼の限界がどこにあるのかわからない。いつもボールを求め、相手を上回り、このような大舞台でも動じないほど成熟している」と、久保のプレーを高く評価した。

今後は、久保がチーム内のヒエラルキーにおける上位にランクされることは間違いない。そしてこの好循環を継続させるためには、ゴールという結果がこれまで以上に求められることになりそうだ。

一方、久保の古巣バルセロナに移籍した安部は、現在セグンダB(スペイン3部)を戦うバルセロナのBチームでプレーする。

バルセロナBは、下部組織の最上位に位置するトップチームへの登竜門。しかも、世界屈指とされる激しいチーム内競争に勝たなければ、トップチームデビューはおろか、来季以降の他クラブへのレンタル移籍の可能性さえも消滅するケースもある。初めて海外のクラブでプレーする安部にとって、それは決して低くはないハードルだった。

ところが、プレーシーズンでのプレーが評価され、開幕2戦目にはスタメンフル出場を果たすことに成功。4−3−3のワントップの位置でプレーしたり、左ウイングでプレーしたりと、早い段階でチーム内に自分の居場所を見つけた。

その結果、これまでチームが戦ったリーグ戦16試合(12月10日現在)のうち、13試合にスタメン出場を果たしている。

もっとも、同年代のチームメイトの中で目立った活躍をするようになったのは最近になってからのこと。10月は故障をきっかけに控えに回り、さらに11月3日(現地時間)のアンドラ戦で久しぶりにスタメンに復帰したが、続くエブロ戦で相手のセットプレーからまさかのオウンゴールを記録。安部にも苦しんだ時期があった。

しかし久保と同じように、自らのゴールがプレー環境を大きく変えた。それが、オウンゴールを記録したエブロ戦に続いて行なわれた、コルネジャ戦とリェイダ戦で記録した2試合連続ゴールである。安部にとっての記念すべき初ゴールは、味方FWがGKと接触した後のこぼれ球に詰めたもの。

2ゴール目は、左からのクロスボールを相手と空中で競り合いながらヘディングで決めた美しい一発。いずれも、現在の安部の好調さを証明するゴールだった。

11月13日のチャリティマッチで、念願のトップチームデビューを飾った安部の評価は着実に高まっている。実現はしなかったが、現地では、欧州チャンピオンズリーグのグループリーグ最終節のメンバー入りの可能性が報じられるなど、今後は周囲の期待もさらに高まるに違いない。

スペインの地で異なる道を歩むふたりの若武者は、ここまで順調な航海を続けている。そして来年の夏に東京で合流したとき、日本サッカー界初の金メダル獲得が本当に実現するかもしれない。

取材・文/中山 淳 写真/MB Media ムツ カワモリ 日刊スポーツ/アフロ

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