Jリーグでも活躍に期待。選手権を盛り上げた高校サッカーの逸材たち

Jリーグでも活躍に期待。選手権を盛り上げた高校サッカーの逸材たち

青森山田の武田は、選手権の決勝で1ゴール。結果は悔しい逆転負けとなったが、得点能力が高いMFとして、若返りを図る浦和でさらなる飛躍を目指す

今年の全国高校サッカー選手権は「BIG3」が不在のなかで行なわれた。

昨年11月のU−17W杯で16強進出に貢献したMF西川潤(桐光学園→セレッソ大阪)、FW若月大和(やまと/桐生第一→湘南ベルマーレ)が予選で敗退。"大迫勇也二世"との呼び声も高いFW染野唯月(いつき/尚志[しょうし]→鹿島アントラーズ)も、腰椎(ようつい)分離症により大会の登録メンバーから外れた。

大会前は「タレント不足」との声がささやかれていたが......。ふたを開けてみれば、3人に劣らないアタッカーたちが鮮烈なインパクトを残した。その筆頭は、24年ぶりの日本一に輝いた静岡学園のエースMF松村優太(鹿島アントラーズ内定)だろう。

大阪・東淀川FCでプレーした中学時代は、全国大会はおろか、地区選抜の経験すらない無名の選手だった。しかし、東淀川FCの先輩でもある名古新太郎(鹿島アントラーズ)が静岡学園に進んだ縁もあり、三浦知良(横浜FC)をはじめ多くのJリーガーを輩出する名門校への進学を決意した。

転機となったのは、トップ下から右サイドハーフへのコンバートだ。50m5秒8の快足を生かしたドリブルがより効果を発揮し、2年時の10月には初めて世代別の代表に選出。そこで「スピードに乗ったドリブルは、海外の大きい選手が相手でも通用した」と自信をつかみ、さらに大きく飛躍した。

高校最後の選手権の前には「結果を残していけば自然と注目されるので、意識していきたい」と意気込みを語っていたが、自身初の全国大会でも緊張した様子は見られなかった。

相手チームに警戒されながら、スピードに乗ったドリブルでサイドを何度も切り裂き、クロスで決定機を演出。自身は準々決勝まで無得点だったものの、笑顔で次のように語っていた。

「そんなに焦ってはいない。県予選でも準決勝と決勝で点を取っているので、(選手権でも)そういったところで取りたいなって思う」

その言葉どおり、準決勝では見事にゴールネットを揺らした。大舞台での強さもプロ向きのメンタルといえるだろう。さらに、攻撃力だけでなく、ボールを奪われた後の切り替えの速さなど、現代サッカーに求められる守備意識も高い。

J1最多の優勝回数を誇る鹿島の選手層は厚いが、松村は試合の流れを変える"ジョーカー"的な起用でも輝くタイプなため、1年目から出場機会に恵まれる可能性はある。きっかけさえつかめれば、同じく高校サッカーから鹿島、バルセロナBへと羽ばたいた、安部裕葵(ひろき)のような飛躍を遂げるかもしれない。

浦和レッズに進む青森山田のMF武田英寿も、大きなインパクトを残した。2002年に行なわれた日韓W杯の前年に生まれた武田は、「世界で活躍してほしい」との願いから、両親が好きだった中田英寿にちなんで「英寿」と名づけられた。

出身は宮城県だが、中学に進学するタイミングで「選手権に出て活躍するために、中学の頃からサッカーの厳しさを教えてもらいたかった」と青森山田中学への入学を決意。左利きの司令塔として、中学2年時と3年時には全中優勝を果たした。

高校でも順調に成長を続け、昨年度は次期エースが背負う7番をまとい、チーム史上2度目の選手権制覇に貢献。絶対的エースとなった今年度は、初戦の2ゴールを皮切りに4点を奪い、チームを準優勝に導いた。

高校1年生の頃から、「点も取れる中盤になりたい」と言い続けていたが、この3年で大きく変わったのはゴールへの意識だ。以前はゲームメーカーの印象が強かったが、学年が上がるにつれ、ミドルシュートやゴール前に飛び込む回数が大幅に増した。

加入予定の浦和は、同じ左利きのMF柏木陽介を筆頭に中盤の高齢化が進んでおり、若返りが求められている。21歳以下の選手1名の先発起用が義務づけられるルヴァン杯を含め、1年目から出場機会は巡ってきそうだ。

もうひとり、活躍が目を引いたのが、帝京長岡のFW晴山岬(はるやま・みさき/J2のFC町田ゼルビアに内定)だ。

昨年も活躍したストライカーで、3回戦では平山相太(FC東京などでプレー、18年に引退)以来となる2大会連続でのハットトリックをマーク。あらためて実力を証明し、新潟県勢の最高成績となるベスト4進出に貢献した。

同じくJ2・京都サンガに加入するMF谷内田(やちだ)哲平と共に、幼稚園の頃から帝京長岡の下部組織「長岡ジュニアユースFC」に所属し、中学時代から高校生に交じって公式戦の経験を積んだ。

豪雪地帯のため冬場はグラウンドを使えず、体育館でのフットサルに注力するのがチームの特徴だが、晴山は高校2年時にフットサルの全国大会で得点を量産し、MVPを獲得している。

173p、67sと体格的には恵まれておらず、決して足が速い選手でもない。ただ、フットサルで身につけた、狭いエリアを抜け出してゴールネットを揺らすための相手DFとの駆け引き、シュート感覚は絶品だ。簡単にゴール前でフリーとなり、歓喜を呼び込む姿は"天性の点取り屋"という表現がよく似合う。

日の丸を初めて背負ったのは高校3年になってからという"遅咲き"の選手ではあるが、今では代表の常連になった。サイバーエージェントの買収により強化を進める町田には、元セルビア代表のストライカーが加入するなど競争は熾烈(しれつ)になるだろう。しかし出番が回ってくれば、プロの舞台でもゴールを量産する可能性は十分にある。

取材・文・撮影/森田将義

関連記事(外部サイト)