東京五輪の1年延期でチャンス。男子サッカー期待の10代選手たち

昨年のU−17W杯で「10番」を背負い活躍したC大阪の西川 潤。同年4月には、クラブ史上2番目の若さでJリーグデビューも果たした万能型FWだ

世界中に感染が急拡大する新型コロナウイルスの猛威は、スポーツ界にも大きな打撃を与えている。そのなかでも、今年7月24日に開幕する予定だった東京五輪が来年7月23日に延期されたことは、全世界で大きなニュースとして報じられた。

もちろん人々の命と健康を最優先した今回の決定には、各競技団体や選手の多くが賛同した。しかしその一方で、予選や選手選考、あるいは強化日程などで変更を強いられる選手たちに目を向けると、その影響の大きさは計り知れないものがあるだけに、とにかく新型コロナウイルスの一刻も早い終息が待たれる。

ただ、開催延期をネガティブに考えてばかりもいられない。直面する問題をポジティブにとらえるならば、残された1年の間に新しいヒーローが登場する可能性があると考えることもできるはず。

とりわけ"史上最強"と評されながら、最近になって停滞感が漂い始めている男子サッカーにとっては、1年の延期は「不幸中の幸い」となるかもしれない。なぜなら、18歳の天才MF久保建英(マジョルカ)に続く期待のティーンエイジャーたちにも、新たに東京五輪出場の可能性が広がったからだ。

その最短距離にいるとみられているのが、若月大和と西川 潤だろう。ふたりは、昨年ブラジルで開催されたU−17W杯に、日本代表として出場した現在18歳のアタックコンビだ。

残念ながら、日本は決勝トーナメント1回戦で敗退してしまったが、オランダ、アメリカ、セネガルといった強豪と対戦したグループリーグでは予想を覆す快進撃を見せ、2勝1分けの成績で首位通過を果たした。若月と西川は、その原動力として欧州クラブのスカウトたちの目に留まる活躍を見せ、評価を一気に高めたのである。

U−17W杯初戦の2ゴールで海外クラブからも注目されたFWの若月大和。入団が内定していた湘南からレンタル移籍したスイスのシオンで、さらなる成長を目指す

まず、日本が3−0で勝利した初戦のオランダ戦で、2ゴールとPK獲得で3得点目にも貢献した若月は、その活躍がきっかけとなり、現在はスイス1部リーグのシオンでプレーする。当時は群馬県の桐生第一高校サッカー部に在籍し、卒業後の湘南ベルマーレ入りも内定。

ところが、U−17W杯後に欧州の複数クラブから獲得オファーが舞い込んだため、今年1月、内定先の湘南からレンタル移籍という格好でスイスに渡った。以前から欧州でプレーすることを目指していた若月にとっては、望外の早さで目標をクリアしたことになる。

センターフォワードを本職とする若月の魅力は、抜群のスピードと並外れた得点力にある。また、シュート前のパスを受ける動きと、シュートまでの速さと正確さも一級品だ。

新型コロナウイルスによるスイスリーグ中断前、2月23日に行なわれたルガーノ戦では初のベンチ入りを果たすなど、欧州デビューは時間の問題。このまま1年間スイスで経験を積めば、東京五輪メンバーに食い込む可能性は十分にあるとみていい。

一方、U−17W杯で若月と2トップを組んだ西川は、昨年のU−20W杯に飛び級でメンバー入りするなど、突出した才能でこの世代の先頭を走り続けてきた次世代のスター候補生だ。

これまでのキャリアも華やかで、中学時代は横浜Fマリノスのジュニアユースでプレー。その後は神奈川県の名門・桐光学園高校に進学し、2年生時の昨年3月にセレッソ大阪入りを内定させると、4月には特別指定選手としてJリーグデビュー。現在はC大阪の即戦力FWとして大きな期待を集めている。

若月が生粋のストライカーなら、西川は万能型FWと言える。左足のシュートを得意としながらも、次々とチャンスを生み出す非凡なパスセンスとドリブル突破が最大の武器。U−17W杯でも若月のゴールをお膳立てしながら、自ら2得点を記録するなど、その才能を世界の舞台でいかんなく発揮した。

C大阪の先輩で元日本代表の柿谷曜一朗を彷彿(ほうふつ)とさせる西川には、スペインの名門バルセロナが触手を伸ばしたという報道が明るみに出たほど。このまま成長を続ければ、来年の東京五輪にも十分間に合うはずだ。

ガーナ人の父と日本人の母を持ち、大型GKとして期待される浦和の鈴木彩艶。今シーズンの開幕戦でベンチ入りを果たしており、リーグ再開後は早めのデビューも?

そしてもうひとり、東京五輪メンバーに食い込む可能性を秘めているのが、「ポテンシャルの高さでは歴代最高」と評されるGKの鈴木彩艶(すずき・ざいおん)だ。

ガーナ人の父と日本人の母を持ち、アメリカ生まれ埼玉県育ちの鈴木は、地元・浦和レッズのアカデミー出身の17歳。これまで、各年代別代表に飛び級で選出され続け、昨年は若月や西川と共にU−17W杯のレギュラーとして活躍しただけでなく、その約5ヵ月前に行なわれたU−20W杯では西川と同じく飛び級でメンバー入りを果たした。

現在は浦和のトップチームに登録され、規格外のGKとして大きな注目を集めている。

最大の魅力は、189cm、91kgという恵まれた体格に裏づけられた、並外れた身体能力だ。また、キャッチ後のスローイング能力はすでに世界標準レベルで、実際U−17W杯のオランダ戦でもその強靱(きょうじん)な肩で世界中のサッカーファンを驚嘆させている。

登録メンバーが18人の五輪の場合、GK枠は2名を選出するのが慣例となっているだけに、鈴木が飛び級で五輪に出場する可能性は低いかもしれない。しかし日本サッカーの将来を考えれば、その無限の可能性にかけてみるのも悪い選択ではないはずだ。

とにかく、開催の1年延期が伸び盛りの若者たちに新たなモチベーションを与えたことは間違いない。東京五輪までに残された時間のなかで、彼らがどのような成長を遂げるのか、要注目だ。

取材・文/中山 淳 写真/アフロ

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