新型コロナで検討される学校の9月入学導入に宮澤ミシェル「来秋からの導入は疑問だけど、議論が生まれたのはいいこと」

学校の9月入学導入について語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第149回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは学校の9月入学導入について。新型コロナウイルスの影響で議論されている入学タイミングの変更。これに対し宮澤ミシェルは、「議論が生まれるのはいいことだし将来的には賛成だが、来秋からの導入には慎重になるべき」と語った。

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新型コロナウイルスの感染拡大防止のために政府の要請をうけて、学校は3月2日頃から臨時休校が始まったよね。地域によってはそこからまったく学校に通えない日々が続くほど長期化している。子どもたちが一日も早く学校に通える社会を取り戻さないといけないよな。

9月入学について検討されているけれど、個人的には日本の仕組みを国際基準に合わせていく絶好のチャンスだと思うんだ。国際化と言われて久しいけど、真の意味での国際化を進めるには、やっぱりカレンダーの統一は避けては通れないと思うよ。

それに、もし9月入学に変更されれば入学式や始業式もやり直せるし、休校中の教育格差を解消できる。入試が夏になればインフルエンザや雪の影響も小さくなる。休校で潰れてしまった学校行事がやり直せるなどのメリットはあるよな。

ただ、"来秋から導入"というのは、どうなんだろうという気持ちもあるよ。

会計年度や3月卒業を前提にした就職などの社会システムの見直しも必要になるし、いま学校に通えていない子どもたちは、来秋までどうするのかという問題もある。そこの対策が半端なまま新たな方向に舵を切ったとしても、うまくいく気はしないよな。

さまざまな問題への対策を講じて、将来的に9月入学への移行というのなら大賛成だよ。時代の流れに即しているし、やっぱり真の意味での国際化を進めるには、社会の仕組みのカレンダーはアメリカやヨーロッパと共通なものの方が、なにかと都合はいいからね。

とくにスポーツにとってはメリットがあると思う。いまの時代はサッカーにしろ野球にしろ、それこそ日本選手には無理だと思われていたバスケットボールにしても、八村塁や渡邊雄太の活躍で、海外でプレーする道が開けている。選手たちが世界中に羽ばたこうとするとき、やっぱり日本も9月入学のカレンダーの方がいいんだよね。

Jリーグでプレーする選手たちが海外移籍する場合、これまではヨーロッパのシーズンが始まっている冬の移籍市場で海を渡るケースが多かった。これだとシーズン前のキャンプなどに参加できないから、なかなかチームにフィットできなくて苦しんだよな。

この1、2年は夏に移籍するケースが増えたけど、これだとJリーグはシーズン途中だからチームにとっては大打撃だし、サポーターにとってはシーズン終了までその選手がプレーするのを見られない歯がゆさがあったよね。

9月入学に変われば、Jリーグが過去何度と模索したシーズンの秋春制への移行へもハードルが下がると思うんだ。もちろん、秋春制が実現できない理由の、「冬に降雪量の地域をどうするか」の課題は残るから、これの解消は不可欠なことだよ。

ただね、前向きに課題解消を話し合うのと、後ろ向きでの議論では、出てくるアイデアも違ってくるものだからね。社会のシステムが9月スタートに移行したなかでは、現状の春冬制を維持する方が難しくなると思うんだよ。そうしたら、改題解消への本気度も変わるはずだよな。

高校サッカーは9月入学になると、大幅にいろいろと変更する必要性が生まれるから大変だろうな。なかでも主要大会の日程をどうするのかは頭を悩ますだろうね。

いまはインターハイが夏、選手権が冬に開催されているけれど、大会日程が現行のまま9月入学に移行すると、新入学した生徒たちが最初に挑む大会が冬の選手権になる。これだと高校サッカーの集大成というイメージから乖離しちゃう。だからといって選手権が夏に開催されるのも違和感を覚えるよな。

我々の心情に四季折々の風情が結びついて、この国の歴史や文化は築かれてきた部分は間違いなくあるよね。たとえば春は卒業と入学の季節だから、桜を見ると人々は感傷的になったりするわけでしょ。それが9月入学になると、実感のないものに変わってしまう。それってどうなんだろうって思っちゃったりもするんだよな。

既存のシステムのなかで生まれた日本ならではの文化はあるし、新たなものに変えるということは、それを失う可能性もあることを忘れちゃいけないよな。制度の移行を考えるなら、さまざまな角度からの検証や議論を重ねながら、システムを変更する道筋をつけていかないとダメだと思うんだよ。

コロナ禍になったことで入学時期を国際基準に変更しようという議題が生まれた。これは間違いなくいいこと。だけど、いま最優先で考えるべきことは、コロナ禍で学校に通えていない子どもたちを、一日も早く学校に通える日常に戻すこと。そこは見誤ったらいけないと思うんだ。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太

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