小島慶子の今週の気になるコト――大坂なおみ選手ボイコットへの批判は的外れも甚だしい

人種差別に加えて職業差別もにじむ反応を見て、背筋が寒くなる思いです

ウエスタン・アンド・サザン・オープンに出場した大坂なおみは「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命も大事だ)」と書かれたTシャツを着て、女子シングルス準決勝のコートに向かった。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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大坂なおみ選手の意思表示に「けしからん」と怒る人は、彼女を部下か何かと勘違いしているんでしょうか。大会運営に迷惑をかけるなという批判も筋違いです。

8月27日、大坂選手が黒人差別に反対する意思表示としてウエスタン・アンド・サザン・オープン準決勝の試合出場を取りやめると決意したのを受け、大会の運営サイドはその意向を支持すると回答して全試合の開催を翌日に延期しました。

テニスは白人男性が主流のスポーツで、セリーナ・ウィリアムズ選手もかねて黒人や女性の選手に対する差別に抗議の声を上げています。

大坂選手も、世界的な影響力のある立場にはそれに伴う責任があると考えるからこそ、人種差別に抗議する動きが大きくなっている今、意思表示をすることが必要だと考えたようです。

先日アメリカでは首都ワシントンを大勢の人が埋め尽くして人種差別反対のデモを行ないました。キング牧師が有名な演説を行なった1963年8月28日のワシントンデモ行進と同じ光景が、2020年のワシントンにも広がったのです。この半世紀、黒人たちへの不当な扱いが変わっていないことの表れでもあります。

5月25日にミネソタ州でジョージ・フロイド氏が警官に殺されたのをきっかけに人種差別への抗議運動ブラック・ライブズ・マター(BLM)が起き、大統領選を控えてトランプ大統領の人種間の分断をあおるような手法に抗議の声が上がるなか、またも8月23日にウィスコンシン州で黒人男性が子供たちの目の前で警官に至近距離から背中を7発も撃たれ、重い障害を負う事件が起きました。

それを受けてNBAやメジャーリーグなどで人種差別に抗議する意思表示としての試合のボイコットが広がりました。大坂選手の抗議行動はその流れのなかでのものであり、白人優位社会で繰り返されてきた黒人への暴力や構造的な差別に対する明確な抗議です。

そうした大きな流れを見ずに「あなたは日本人なのか? 黒人なのか?」という愚問をぶつけたり(当然日本人であり黒人である人は大坂さん以外にも数多くいます)、「スポーツ選手は政治的な発言をせずに競技に集中しろ」という批判もあったといいます。人種差別に加えて職業差別もにじむこうした反応を見て、背筋が寒くなる思いです。

一方で、大坂さんの行動に敬意を表し共感する声も多く寄せられています。日本でも今後こうした声をいっそう大きくしていくことが重要です。もしも大坂さんが日本国籍の白人男性選手だったら、同じ行動に対してどんな反応があったでしょう。

今ネットで彼女を批判している人たちは、称賛に回ったかもしれない。それが容易に想像できてしまうほど、日本の人種差別は根深い問題なのだと思います。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。『曼荼羅家族「もしかしてVERY失格!?」完結編』(光文社)が好評発売中

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