少し遅れて大学駅伝シーズン到来。有力校と"超強力ルーキー"の現状は?

昨年度は1年生ながら、全日本7区で区間賞、箱根3区で7人抜きを見せた駒澤大の絶対エース・田澤。新戦力も充実して上位争いが期待できる

今年もいよいよ大学駅伝シーズンが開幕する。新型コロナウイルスの影響で、10月11日に行なわれる予定だった出雲駅伝は中止になったが、17日には箱根駅伝の予選会が開催。11月1日には全日本大学駅伝が、来年1月2、3日には箱根駅伝が開催される予定だ。

コロナ禍で、各大学は3月下旬頃から活動が中止となり、選手寮が閉鎖される大学もあった。通常に近い形で練習ができるようになったのも、大学によって前後するが6月以降。その期間は取材ができず練習内容の詳細はわからないが、個々でジョギングを中心に走り込んだ選手が多かったようだ。

各大会も、例年であれば5月に開催される関東インカレは延期に。6月に予定されていた全日本の関東地区選考会は中止になり、部員8人が昨年に記録した1万mのタイムを合計し、上位7校が選ばれる「書類選考」になった。

大学三大駅伝すべてが中止になる可能性もあったが、全日本は開会式と閉会式を実施せず、出場校には「応援自粛協力への同意書」の提出を義務づけての開催が決定。箱根も同様に、出場校の応援自粛を要請する「無観客開催」にすることで大会を実施する運びになった。

そうして迎える全日本と箱根の優勝候補の筆頭は、青山学院大だろう。

10月3日の国士舘大学長距離競技会5000mで、吉田圭太(4年)が13分37秒34の青学大記録を樹立し、11人が13分台の自己新を叩き出した。そのなかには山内健登、昨年の全国高校駅伝1区を日本人最高タイムで走破した佐藤一世という楽しみな1年生もいる。

エースの吉田、主将の神林勇太(4年)、岸本大紀(2年)が3本柱。そのうち、故障から回復途上の岸本は全日本のエントリーから外れたが、箱根を見据えても前回5区2位の飯田貴之(3年)がおり、選手層は厚い。「駅伝2冠」に向けて順調な仕上がりを見せている。

全日本では、大会連覇を狙う東海大と、トラックで存在感を発揮している駒澤大が"対抗馬"になるだろう。

東海大は塩澤稀夕、名取燎太、西田壮志の4年生トリオの爆発力で勝負。塩澤は前回の全日本3区で青学大・神林を抜き去り、9月中旬の日本インカレ5000mでも青学大・吉田に先着している。

名取は前回の全日本8区を日本人トップで走破。ふたりは前回と同じ区間が有力で、青学大からアドバンテージを奪えるだろう。

西田も1万mのベストを28分37秒37まで上げていて心強い。さらに、9月の記録会5000mでは市村朋樹(3年)、1年生の石原翔太郎ら6人が13分台の自己新で走るなど、箱根も十分に戦える戦力が整ってきた。

駒澤大は強力ルーキーたちが話題だ。7月の5000mで、鈴木芽吹、花尾恭輔、赤津勇進が13分台をマーク。9月の日本インカレ5000mでは鈴木が3位、加藤 淳(4年)が4位に食い込んだ。

絶対エースも健在で、田澤 廉(2年)は日本インカレ1万mで28分22秒48の日本人トップ(4位)。後続の日本人選手に20秒以上の大差をつける圧勝だった。エース田澤が入る区間で青学大を突き放すことができると面白い。

5000mで日本学生歴代7位の記録を出した、中央大のルーキー・吉居。苦しい状況から抜け出しつつあるチームを牽引していく選手になりそうだ

これらの有力校に続きそうなのは、名門・早稲田大。チームで夏合宿を行なうことはできなかったが、10月11日のトラックゲームズin TOKOROZAWA対抗戦1万mで、中谷雄飛(3年)が28分19秒27の自己新で学生トップ。

太田直希(3年)も28分19秒76で同2位に入っており、中谷がエースとして飛躍できれば上位を狙えそう。

一方、前回の箱根10位から巻き返しを図る東洋大は、選手層の薄さに悩まされているが、西山和弥(4年)が復活したのが大きい。日本インカレ1万mで5位(日本人2位)に入り、全日本と箱根での活躍が期待できる。

また、今年の箱根5区で区間賞(区間新)を獲得した宮下隼人(3年)も好調なため、特に箱根では有力校の脅威になるだろう。

さらに今季は、学生長距離界を席巻する"超強力ルーキー"の順天堂大・三浦龍司と、中央大・吉居大和も要注目だ。

三浦は、7月に3000m障害で日本歴代2位の8分19秒37をマーク。日本学生記録を41年ぶりに塗り替え、日本インカレも8分28秒51の大会新で独走した。順大は1万mで29分を切っている選手が8人いるため、三浦の活躍次第では、全日本でトップ争いに食い込むことができるだろう。

一方の吉居は、7月に5000mで13分28秒31をマーク。佐藤悠基(日清食品グループ)が保持していたU−20日本記録を15年ぶりに更新。日本インカレでは、ラスト1周を56秒台という高速ラップを披露して13分40秒04で優勝した。今後、"新・スピードキング"としての活躍が楽しみだ。

全日本が終わると箱根モードに入るが、コロナ禍の今季は例年と調整方法が変わってくる。通常は、大半の大学が11月後半にハーフマラソンに出場するが、今年は出場できるレースがない。さらに今季は12月4日に日本選手権(長距離種目)があるため、そこにエース級の選手が参戦することになる。

なかでも気になるのは3000m障害の三浦だ。東京五輪の参加標準記録(8分22秒00)を突破して優勝すると、日本代表内定となるため、そちらに出場した場合の対応にも注目が集まる。

いつもと違う今冬の戦いはどんな結末を迎えるのか。各大学の動向から目が離せない。

取材・文/酒井政人 写真/アフロ

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