なぜバルセロナの調子は上がらないのか? 宮澤ミシェルが考える最大の要因は「やっぱりスアレスがいないこと」

バルセロナについて語った宮澤ミシェル
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第175回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、バルセロナについて。まだシーズン序盤ではあるが、なかなか調子を上げることが出来ていないバルセロナ。その要因は、「決定力が明らかに足りないこと」だと宮澤ミシェルは語る。

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バルセロナの調子がなかなか上がってこないね。ちょっと心配だよ。

11月の国際Aマッチデー前までに終わったラ・リーガ第9節の時点で、バルセロナは3勝2分2敗の勝ち点11。順位は8位。

バルサは試合数の消化がほかのクラブに比べると2試合ほど少ないというプラス要素はあるんだけど、それでも油断できないチーム状況に映るよ。

今季から指揮するロナルド・クーマン監督にとっては、ここからの1ヶ月が正念場になるかもしれないね。

彼の就任が8月19日に決まったときは、クライフ時代のレジェンドの20年半ぶりの古巣復帰だから、選手たちに一目置かれることでなんとかなるのかなと予想していたんだ。

でも、その後にメッシの退団騒動が起きて、ルイス・スアレスの放出があった。クーマン監督にとっては、いきなり難しい状況に置かれてしまったよな。

それでもメンバーの顔ぶれを見れば、去年までと大きくは違わない。それどころか、伸び盛りのアンス・ファティがいて、昨季は故障で長期離脱していたウスマン・デンベレもピッチに戻ってきた。フェリペ・コウチーニョもバルセロナに復帰した。彼らが噛み合うかどうかは別にして、メンバー的には問題はない。

じゃあ、今季の調子が上らない要因は何かと考えると、やっぱりスアレスがいないことがすべてだよね。決定力が明らかに足りない。

相手に2点獲られても3点を奪うのがバルサのスタイルだけど、今年は7試合を終えた時点での総得点は15ゴール。1試合あたり2得点は、ほかのクラブなら御の字でも、バルサにしたら寂しい数字だよ。

スアレスは、2018−2019シーズンに21得点5アシストを決めていて、昨シーズンも故障離脱の時期がありながらもリーグ戦では16ゴール8アシスト。来年1月で34歳になるとはいえ、まったく衰えは見られなかったんだよね。

サッカーは年齢でやるものじゃないのに、バルセロナは若手への世代交代を推し進めようとして、実力のある選手を切った。そのツケを払わされているように見えちゃう。

単純にスアレスの抜けたことで得点数が減っただけなら、手の打ちようはある。冬の移籍市場でスアレスの代わりになる得点能力を持った選手を獲得すればいいんだから。実際、今夏もさまざまな選手を獲得しようと動いていたわけだからね。

でも、バルサの問題を難しくさせるのは、スアレスが抜けたことで、メッシにゴールを決めそうな雰囲気がまったく見られなくなっていること。

今季はチャンピオンズリーグでこそ3試合で3得点だけど、リーグ戦は7試合で3得点。そのうち2つはPKで決めたもの。アシスト数にいたってはゼロだぜ。

メッシのリーグ戦の成績は、去年が33試合で25得点21アシスト。2018−2019シーズンが36得点13アシスト、2017−2018シーズンが34得点12アシスト。振り返れば、メッシの得点やアシストのほとんどにスアレスが絡んでいたんだよね。

スアレスの抜けた影響が、メッシにも及んでいるのは明らか。手っ取り早い解決策は冬の移籍期間でスアレスを呼び戻すことなんだろうけど、それはクラブのメンツなどもあって困難な道だよな。

最前線でボールを収めてくれる選手がいないことで、今季のバルセロナはアントワーヌ・グリーズマンとファティ、メッシをローテーションさせながら、1トップの仕事をしてもらおうとしている。

だけど、やっぱり無理がある。彼らは本職じゃないし、彼らの良さは別のポジションでこそ発揮されるものだからね。

こうした背景を考えれば、クーマン監督はよくやっているとも言える。もし今シーズンの最後まで指揮を任されるのであれば、最終的には例年通りリーグ戦でのトップ2には入ると思うんだ。

だけど、今シーズンのバルセロナは特殊でしょ。メッシの退団騒動などでバルトメウ会長が辞任を決めた。クーマン監督を招聘した張本人がクラブを去って、呼ばれた監督はたいした結果も残していない。

なかでも、10月24日のクラシコでは、本拠地のカンプ・ノウでレアル・マドリードに1−3で負けた。この印象は良くないよね。

となれば、1月24日に予定されている会長選挙の結果によっては、監督の首がすげ替えられる可能性はある。そうした先々の状況が予測されるなかで、クーマン監督が選手たちの求心力をいつまで保てるかと言ったら、やっぱり難しいと思うんだ。

いまのところ徳俵いっぱいで踏みとどまっているクーマン体制だけど、年内のリーグ戦でつまずくことがあったら、会長選挙を待たずして一気に山が動き出すかもしれない。

しばらくはバルセロナには注目していかないといけないね。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太

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