"日本サッカー界の至宝"「もう19歳」の久保建英が、さらに飛躍するために必要なことは?

リーグ上位を争うビジャレアルのエメリ監督(左)も久保への期待を口にしているが、信頼を得るためには強豪相手に結果を残すことが必要になるだろう

"日本サッカー界の至宝"久保建英(くぼ・たけふさ)。バルセロナの下部組織で育った小柄なアタッカーは、昨季に横浜FC東京から、バルセロナの宿敵であるレアル・マドリーに移籍して世界中のフットボールファンを驚かせた。

入団から程なくして同リーグのマジョルカへ期限付きで移籍すると、リーグ戦35試合で4得点を記録。チームは2部に降格したが、久保自身は評価を高め、現在、「10代の選手では世界6位の市場価値」とも評されている。

今季はマジョルカよりも格段に強いビジャレアルへと再びローンで移り、さらなる飛躍が期待されている。しかし、ここまでは思うようなシーズンを送れていない。

第10節終了現在、ラ・リーガの全試合に出場しているものの、先発したのは1戦のみ。合計出場時間は2試合分にも満たず、得点やアシストもゼロ。ヨーロッパリーグでは、初戦で1得点・2アシスト、第3戦でも1アシストを記録したが、10月と11月の日本代表戦では不発だった。

現地時間11月21日には、所属元のレアル・マドリーとの一戦を迎えたものの、投入されたのは同点で迎えた終了間際の後半44分。アディショナルタイムにGKと1対1になった好機を決め切れず、勝利の立役者になれなかった。

こうした状況から、久保の成長を不安視する声も聞こえてくる。19歳という年齢を考慮すれば、長い目で見守るべきかもしれない。ただし世界には、久保と同年代で有力クラブの主力を担っている選手が多く存在する。

現在、ブンデスリーガで上位につけるボルシア・ドルトムントには、20歳にしてリーグ得点王を争うアーリング・ホーランド、17歳のジュード・ベリンガムなど逸材がひしめき、欧州王者バイエルン・ミュンヘンには昨季のリーグでルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた20歳のアルフォンソ・デイビスがいる。

バルセロナの未来を担うアンス・ファティは18歳だし、世界最高のプレミアリーグでも、マンチェスター・ユナイテッドの19歳、メイソン・グリーンウッドらが躍動している。久保も期待が大きい選手なだけに、「そろそろこの領域に」と考えてしまうのだ。

久保が彼ら同様に第一線で成長を遂げていくには、まず何よりも出場機会を増やすことが必要だ。ビジャレアルを率いるウナイ・エメリ監督は10月、久保の出場を望む外部の声を鎮めるように、現地メディアに次のように語っている。

「久保は素晴らしい青年で、成長への意欲がある。ただ、日本人として初めて世界最高レベルに達するには、乗り越えねばならないものがある。それは本人も自覚している。

外野はその過程を早めたがるものだが、それはよくない。彼はスターだから、メディアが騒ぎ立てるのもわかる。しかし彼はピッチ上で、競争に勝たなければならない」

久保はスペイン語を流暢(りゅうちょう)に話すため、コミュニケーションの問題とは無縁だ。エメリ監督も選手と積極的に対話するタイプの指導者らしい。だとすれば、まだ久保が信頼を得ていないだけなのだろう。

攻撃的なポジションの選手が信頼を勝ち獲(と)っていくには、目に見える結果を残すほかない。多くの人が言うように、昨季のリーガでの4得点は、マジョルカ――どんな選手でも守備に奔走せざるをえない下位チーム――で挙げた得点数としては誇れるもの。

だが得点を挙げた相手はリーグ上位のチームではない。それは、今季唯一のゴールを奪った対戦相手(シワススポル)にも言えることだ。昨季はバルセロナ戦やアトレティコ・マドリー戦でも健闘したが、決定的な働きはなかった。

レベルの高いチームからゴールを奪うことができるかは、アタッカーとしての今後を占う上で重要なファクターになりうる。得点能力は生まれ持った才能に負うところが大きく、点を取れる選手は若いうちから面白いようにネットを揺らす。

例えば前述のホーランドは、現在の久保と同い年だった昨季、リバプールやナポリ、パリ・サンジェルマンといった強豪チームからもゴールを決めている。

大方の報道によると、久保は前目のポジションにこだわりを持っているようだが、「ゴール前の落ち着き」は彼の最大の長所ではないように見える。代表でもクラブでも、好機をフイにして、ちょっと大げさに悔しがる姿が印象的だ。同世代のホーランドやファティなら、涼しい顔で仕留めていそうな場面でも。

かつて、アーセナルでアーセン・ベンゲル監督と出会い、ストライカーとして開花したティエリ・アンリのようなケースもあるだろう。

ただ久保の場合は、サイズの問題がある。トップレベルの世界で小柄なアタッカーが活躍するには、リオネル・メッシ(バルセロナ)やエデン・アザール(チェルシー)のような爆発的な速さ、極めて高度な技術、そして確実に決め切る力が必要になる。

そう考えると、久保は中盤のポジション、MFでスペシャリストを目指すほうがいいのかもしれない。所属元のレアル・マドリーの指揮官ジネディーヌ・ジダンが、「久保をルカ・モドリッチの後継者とみている」という噂もある。得点力や単独での突破力は、ほかの一線級のアタッカーと比べると見劣りしてしまう。

一方で、MFに必要なスキルと知性、全体を把握する能力は、10代とは思えないほど優れている。それに中盤の選手であれば、ひと桁得点でも十分に生き残っていける。

そう、現役時代のジダンのように。

取材・文/井川洋一 写真/アフロ

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