福西崇史が思う東京五輪代表の選手に必要なものとは?「世代の中でのトップではなく、同じポジションのA代表選手を上回ることを目指すべき」

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不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本のサッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史さん。

そんな福西さんの目に今の日本サッカーはどのように映っているのか? 全4回に渡り、今の日本代表やJリーグについて、ご自身の現役時代のお話も交えて語っていただくシリーズ第2回目は、前回に引き続き日本代表について。その中でも、東京五輪世代にスポットを当てて語っていただいた。

――前回は日本代表についてお話を伺いましたが、東京五輪世代などの若手選手について教えて下さい。まず注目度の高さは圧倒的な久保建英選手をどう見ていますか?

福西 日本代表でポジションを奪うには守備が課題ですね。久保は守備をしている意識だと思いますが、彼の守備はボールホルダーを背後からガムシャラに追いかけているだけのイメージがあります。それだとボールが奪えるのは体力も体格も勝っているときだだけで、見る側の印象もフラフラしているように映ってしまいます。

――どうしたらいいのでしょうか?

福西 まずは相手からボールを奪うイメージをしっかり描くこと。そのうえで、1対1で奪う、味方のいる方に追い込んだうえで挟み込んで奪うなどの方法を、状況と相手と味方の位置に応じて使い分けることです。

久保が自身の攻撃的な長所を生かしたいのであれば、味方のいる方に追い込んで挟み撃ちし、味方に奪ってもらうのがいいですよね。そうすれば久保が味方からボールを受けてターンすれば、自分の前に攻撃に使えるスペースが広がっているので。

――ガムシャラにやるだけが守備ではないということですね。

福西 そうです。久保は攻撃力なら代表のレギュラークラスだし、ボクのようなタイプからすれば、堂安律や三笘薫よりも、久保の方が止められない選手ですよ。

――なぜですか?

福西 ボクは身体能力で勝負するタイプなので、体を寄せながらネチネチ対応できる選手は止められたんです。でも、瞬発力があるわけではないので、切れ味の鋭いスピードのある選手は苦手でした。当時のブラジル代表で言えば、ロナウジーニョは止められたけど、カカはダメ。上手さではロナウジーニョの方がカカよりも上だけど、カカは一歩目が速くて、そこで置いていかれたら何もできませんからね。久保にはカカのような一瞬の速さがあるんですよ。

――名前のあがった三笘選手は昨季Jリーグで大活躍しましたが、彼の良さはどこにあるんでしょうか。

福西 彼の武器はなんといってもドリブルですよね。あのドリブルはなかなか止められません。日本代表でもボールをもらう動きが合えば、三笘の特長は使えます。でも、ボールを引き出せなければ通用しないでしょうね。

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――三笘選手のドリブルは何がすごいのでしょうか?

福西 ボールを突っつくときに、あんなに足のアウトサイドを使われるとDFとしてはキツイですね。インサイドに切り返してからのスピードもあるので、アウトサイドだけをケアすればいいわけでもない。三笘は大学時代から見てきましたが、あのボールの持ち方と、スピードは育てられるものではないです。

――東京五輪世代にはすでに日本代表のCBに定着している冨安健洋選手を筆頭に、海外でプレーする選手が多くいて、Jリーグにも海外移籍を視野に入れる選手がいます。注目している選手を教えて下さい。

福西 過去最高にタレントが揃っていると思います。でも、現状だと富安以外にストッパーがいないですし、ストライカーも見当たらないんですよね。

FWでは上田綺世(鹿島)はシュートのタイミングがいいし、大柄の割にDFラインの裏への抜け出し方もうまい。ジャンプ力もあって高い打点からのヘディングもできるので、ここから世界と戦える選手に育ってもらいたいですね。

DFも同じですね。渡辺剛(FC東京)、町田浩樹(鹿島)、大南拓磨(柏)などはJリーグで試合に出ているものの、まだまだ富安レベルには達していません。ここから伸びてほしいです。

――富安選手はなぜ海外で通用したのでしょうか

福西 適応力の高さでしょうね。守備の対応の仕方は海外に行ってからも成長を続けています。もともと身体能力の高い選手ではありましたが、アビスパ福岡でプレーしていた頃はここまでの選手になるとは思いもよらなかったというのが正直なところです。

――ひと昔前の五輪代表はJリーグでも試合に出られない選手が多かったことを思えば、いまはJリーグで試合にスタメンで出るのは当たり前になりました。彼らが今後、日本代表に加わっていくためには、何が必要になるのでしょうか?

福西 各選手がそれぞれの長けている部分と足りない部分を把握し、個を伸ばしていくことですよね。たとえばU23代表の前田大然はスピードが持ち味ですが、A代表には同じタイプに伊東純也がいる。伊東を上回るためには前田に足りていない動き出しの質を高める努力だったり、技術だったりを伸ばす必要があると思います。世代のなかでトップレベルと言っても、日本代表には基本的に年代に関係なく日本選手でトップにならないと選ばれませんからね。

――前田選手に限らず、すべての選手が同じポジションの日本代表選手を上回る努力を続ける必要があるということですね。

福西 そのとおりです。若い世代は試合経験をJリーグで着実に積めていますし、国際試合の経験のある選手も多い。あとは長所をどれだけ伸ばせるかです。まずは東京五輪代表を目指して同世代のなかで切磋琢磨してもらい、東京五輪後は日本代表メンバー入りかけて勝負してもらいたいなと期待しています。

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■福西崇史(ふくにし・たかし)
1976年9月1日生まれ 愛媛県新居浜市出身 身長181cm
1995年にジュビロ磐田に入団。不動のボランチとして黄金期を支える。その後、2006年〜2007年はFC東京、2007年〜2008年は東京ヴェルディで活躍。日本代表として2002年日韓ワールドカップ、2006年ドイツワールドカップにも出場。現役引退後は、サッカー解説者として数々のメディアに出演している。

取材・文/津金壱郎 撮影/山口康仁

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