印象深かったチームや選手は? 元日本代表・福西崇史が昨シーズンのJリーグを振り返る「GKとCBを固定して戦えたチームが上位になった」

福西崇史がJリーグについて語る
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本のサッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史さん。

そんな福西崇史さんの目に今の日本サッカーはどのように映っているのか? 全4回にわたり、今の日本代表やJリーグについて、ご自身の現役時代のお話も交えて語っていただくシリーズの最終回となる第4回も、第3回に引き続きJリーグについて。

川崎フロンターレ以外で印象に残ったクラブや、昨シーズンのプレーを見て注目しているルーキーなどについて語っていただいた。

――優勝したフロンターレ以外のクラブについての感想を教えてください。

福西 フロンターレ以外は拮抗していましたね。そのなかでGKとCBを固定して戦えたチームが上位になった印象です。

――上位陣は2位がガンバ大阪、3位が名古屋グランパス、4位がセレッソ大阪、5位が鹿島アントラーズでした。

福西 どのクラブも前線からの守備を重視していましたが、それを実践できたか否かはCBとGKの安定感の差でした。後ろが不安定だと前から守備には行きにくくなりますからね。

――J2からの昇格組はどうでしたか? J2への降格のないシーズンで柏レイソルが7位、横浜FCが15位でした。

福西 28ゴールを決めたオルンガが得点王になった柏は、守備陣がもう少し安定していたらACL圏に届いたかもしれませんでした。横浜FCは9勝6分19敗でしたが、内容を見れば悪くなかったですよ。下平(隆宏)監督のやりたいことを表現できていましたし、やっぱりJ2で地盤を築いて昇格したクラブというのは、J1でも戦えることを証明したと思います。

――横浜FCは若い選手たちがJ1の経験を積めました。

福西 FW斉藤光毅はベルギー2部のロンメルへ移籍し、FW一美和成はガンバ大阪に復帰しましたが、MF安永玲央、MF瀬古樹、MF松尾佑介といった若い選手たちが、昨季は経験を積むだけではなく、きちんと結果も残した。2021シーズンは前線に得点力の高い選手を置ければ、戦い方のベースはあるので大化けする可能性はありますよ。

――ほかに印象に残ったクラブがあれば、教えて下さい。

福西 興味深かったのはサガン鳥栖ですね。毎シーズン若手を数多く起用していますが、彼らに勝負への経験値が備わってきています。ここから数シーズンの間にリーグ優勝するかもしれないですよ。

――ここ数シーズンは苦しんでいたガンバ大阪が2位に入り、復権への足がかりをつかんだように見えました。

福西 シーズンが変わればガラッと変わるのがサッカーなので、昨季のG大阪が本物かの判断は2021シーズンを見るまで難しいですね。ただ、昨季はハードワークをベースにした宮本監督のやりたいサッカーは具現化できた。あとは攻撃陣。昨季は宇佐美貴史やアデミウソン頼みだったけれど、アデミウソンが退団し、新たに昨季はサンフレッチェ広島で15得点のレアンドロ・ペレイラを獲得できた。ここがハマれば、今季はJ1とACLでいい戦いができるのかなと期待しています。

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――そのG大阪で昨季一番のトピックといえば、シーズン途中で遠藤保仁選手がジュビロ磐田に期限付き移籍したことでした。

福西 今季も磐田でプレーすることが決まりましたね。昨季はどのクラブでも若い選手が台頭しましたが、若手だけだと試合展開で行き詰まったときに打破するための経験値がない。そこで必要になるのがベテランの力ですが、G大阪のサッカーには不要とは言わないけれど、ヤットはファーストチョイスではなくなっていた。でも、磐田はベテランの経験値を必要とするサッカーなので、ヤットはまだまだファーストチョイスです。今シーズンもヤットの存在がJ2をおもしろくするでしょうし、どんな活躍をするのか楽しみです。

――2019年シーズンはJ1を制覇した横浜F.マリノスは、昨季は9位と苦戦しました。その要因はどこにあったのでしょうか。

福西 研究されたことと怪我人の影響でしょうね。優勝したシーズンはある程度は同じメンバーで戦えましたが、昨シーズンはメンバーがコロコロ変わって勝ち切れませんでした。ポステコグルー監督は就任してからシーズンごとに戦い方を変えているので、今季も戦い方に手を加えてくると思います。相手チームの対策を上回るためにどんなサッカーをつくりあげるかは、ポテンシャルのあるチームだけに今季の楽しみでもあります。

――2019シーズンは33試合出場して15ゴールで得点王とMVPになった仲川輝人選手は、2020シーズンは18試合2得点。横浜FMの苦戦を象徴していました。

福西 実力を出せませんでしたが、ここを打破できるかで仲川が次のステップに進めるかが見えるでしょうね。

――昨シーズンは大卒ルーキーの当たり年でした。

福西 そうですね。コロナ禍の副産物でもありましたが、ルーキーたちの活躍が目立ちました。過密日程に加えて交代枠も5人にまで増えたことで、ルーキーにも出場機会がまわりやすい状況になりました。そこでしっかり結果を残しましたが、レギュラー格として扱われる今季は相手チームからも研究されます。そのなかで彼らがどんなプレーをするかは興味深いですね。

――注目選手は誰になりますか。

福西 川崎Fの三笘(薫)と、その三笘と同じ筑波大出身のコンサドーレ札幌のMF高嶺朋樹や、同じ札幌のDFの田中駿汰、G大阪の山本悠樹にも注目しています。ルーキーではないけれど、若手ということであれば田中碧(川崎F)や松岡大起(鳥栖)も楽しみな選手です。

――三笘選手は昨季は30試合に出場して新人最多記録に並ぶ13得点。同じ川崎Fの旗手怜央も31試合に出場して5得点。Jリーグは今季も交代枠は5人のまま行われますが、再びルーキーたちの躍動するシーズンになるのでしょうか?

福西 その可能性は大いにありますよね。新しい選手の台頭だけではなく、昨シーズンに経験を積んだ若い選手たちが、ひと皮もふた皮も剥けてさらに成長した姿を見せてくれると期待しています。今シーズンもコロナ禍のなかでの難しい戦いになるとは思いますが、日本サッカー界に光明をもたらす選手がひとりでも多く現れるのを楽しみにしています。

■福西崇史(ふくにし・たかし)
1976年9月1日生まれ 愛媛県新居浜市出身 身長181cm
1995年にジュビロ磐田に入団。不動のボランチとして黄金期を支える。その後、2006年〜2007年はFC東京、2007年〜2008年は東京ヴェルディで活躍。日本代表として2002年日韓ワールドカップ、2006年ドイツワールドカップにも出場。現役引退後は、サッカー解説者として数々のメディアに出演している。

取材・文/津金壱郎 撮影/山口康仁

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