<ラグビー>2年目サンウルブズは日本代表強化のために何がどう変わる?

<ラグビー>2年目サンウルブズは日本代表強化のために何がどう変わる?

就任会見でガッツポーズを見せたフィロ・ティアティア新HC(写真:アフロスポーツ)

 スーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズが5日、2シーズン目に向けた会見を行った。参戦初年度にアシスタントコーチを務めていたフィロ・ティアティアヘッドコーチは、「素晴らしいチームを作る。大事なのは昨年のシーズンからの継続性です」と意気込んだ。

 2月25日から始まる新シーズン。ミッションのひとつは、日本代表との密な連携だ。

 クラブを運営するジャパンエスアールの上野裕一・業務執行理事(CEO)が言うように、「サンウルブズは、2019年のワールドカップ日本大会でジャパンが好成績を残すために結成された」からだ。

 南アフリカカンファレンス1に加盟し、強豪国代表を擁する集団と、ほぼ週に1度のペースで激突。合間、合間には長時間移動を挟むため、前年度まで一昨季王者のハイランダーズを率いていたジェイミー・ジョセフも「スーパーラグビーは非常に厳しい大会です」と語る。
 そのため参加選手は、ワールドカップで味わう試合の強度への免疫をつけられる。2014年の参戦決定時から、スーパーラグビーは、若手育成を優れた代表選手に昇華させうる機関として期待されていた。

 しかし、マーク・ハメット前ヘッドコーチのもと1勝に終わった2016年度のサンウルブズにおいては、その重要なミッションは、後回しにせざるを得なかった。

 というのも、組閣の大詰めを迎えていたのは2015年夏。ワールドカップイングランド大会の直前で、代表選手の多くは厳しい直前合宿で疲弊していた。

 さらに当時は、日本代表を率いていたエディー・ジョーンズヘッドコーチが、サンウルブズ(当時は名称決定前)のディレクター・オブ・ラグビーを務める予定だった。苛烈な発破をかけるジョーンズとワールドカップ後も肩を並べることに、やや足踏みする選手もいた。

 一方ではジャパンエスアール側の準備の遅れに、スーパーラグビーの運営組織であるSANZARが厳しい勧告を言い渡す。一定数の選手といち早く契約しなければ、結成前に消滅する可能性も浮上していた。

 イングランド大会で3勝を挙げた後、初代サンウルブズに入る某メンバーはこんな内容の話をしていた。

「サンウルブズの話があったのは、ワールドカップ前の合宿の時。ただ、サンウルブズ入りを拒否するということは、エディーのことを拒否することになる。それではワールドカップのメンバー選考にも影響が…と考えてしまう。あの方法は正直…」

 結局、8月下旬に国内外の選手が大急ぎで契約。突貫工事に近い状況で、2月の開幕に備えることとなった。代表とのリンク云々以前に、乗り越えるべき問題が多かったのだ。
   

 今回は、準備期間が多く与えられる。言い訳はきかない。9月に日本代表新ヘッドコーチに着任したジョセフヘッドコーチも、日本協会にネーミングされた「チームジャパン2019総監督」として、この日の会見に出席。こう宣言した。

「代表とサンウルブズがきちんと連携するのが、選手にとってのベネフィットとなる」

 ティアティアヘッドコーチは、怪我人続きだった前年度を受けての改善点、第一に求められるジョセフヘッドコーチとの連携について話した。

「昨年の経験で得られた教訓は数えきれませんが、やはりプランニング(年間強化計画や試合ごとの作戦立案)が大事。昨季のプランニングを振り返って、もっといいものにしていきたい。ハイレベルな舞台で我々がどんなプレーがしたいか、そのためにはどんな強化が必要か。そのことについて、ジョセフと私は同じ方向を見ないといけない。少しでも日本代表の選手、日本代表となりうる選手に経験を積ませる」

 サイモン・ジョーンズ新ストレングス&コンディショニングコーチが、サンウルブズと日本代表を兼務すると決まったほか、サンウルブズのコーチングスタッフは明らかにされていない。採用される戦い方に関しても、現状では未定に近かろう(日本代表ではトニー・ブラウンアシスタントコーチが戦術を立案する見込み。前年度までのサンウルブズにおいては、田邉淳アシスタントコーチがゲームプランの大枠を提示していた)。

 それでも、人間関係の悪くないジョセフヘッドコーチとティアティアヘッドコーチの二人三脚は上手く成立しそうだ。マーク・ハメット前ヘッドコーチの就任が12月頃に発表された前年度に比べれば、ある程度は足並みが揃っている。

 これが、2年目のサンウルブズが日本代表のための組織として変貌した点だ。

 もちろん、これで一安心できるほど現実は甘くない。

 サンウルブズを代表強化に結び付けるには、サンウルブズに代表となりうるべき選手を適切に加入させなければならない。田邉アシスタントコーチは、連戦で怪我人が増えるシーズン終盤、2017年度に向けてこう提言していた。

「今年のサンウルブズにも当初、40名近いスコッドがいました。ただ、いまは2ケタ近いけが人がいる。では、もう40数名ではダメなんじゃないですか。(正規のスコッドのバックアップとなる)トレーニングスコッドを作り、そこに大学生をどれくらい入れるかまで、徹底して考えて、セレクションをして欲しい」

 ところが現状の選手層は、渡瀬裕司CEO代理曰く「33名ほどに対してオファーは出しており、口頭で合意をいただいているのが14名ほど」。これが真実なら現状は厳しい。
   

 2016年度のサンウルブズに在籍した中心選手には、休養や海外オファーの受諾を検討している選手が複数いる。現実問題として、かようないい選手の笑顔とサインを引き出すには、相応の予算が必要だ。

 しかし、予算拡張のために渡瀬CEO代理が請われたのは最近のことだ。現状では日本協会からのバックアップが乏しいなか、各選手との交渉が進められているのだ。

 選手選考に関する問題は、ずっと前からあった。

 田村誠ゼネラルマネージャーら多くの幹部は、ジャパンのジョセフヘッドコーチの意向を受けてメンバーを選びたかった。それでもジョセフヘッドコーチが日本のラグビー選手のことを直に観始めたのは、9月に来日してからのこと。その前から互いに連絡を取っていたとはいえ、例えばその時から「トップリーグ下位チームの隠れた名手」に関する知識を共有していたとは考えにくい。選手の関係者によれば、優先的にオファーすべきメンバーの絞り込み作業も、決してスムーズではなかったとされる。

 10月3日、ジョセフヘッドコーチと薫田真広・男子15人制日本代表ディレクター・オブ・ラグビーが選んだ新しい代表スコッドを発表。なかには15人のノンキャップ(テストマッチ=国同士の真剣勝負への未出場者)が含まれていた。
 
 会見中、ジョセフヘッドコーチはそのことに触れ、「新しいプレーヤーに新しい挑戦の機会が与える。彼らにサンウルブズでも戦ってもらうことを念頭に置いています」と発言。理論上は真っ当だが、ジョセフヘッドコーチは今回、安藤泰洋や茂野海人ら2016年度のサンウルブズで成長した中堅選手を当該のスコッドから外している。そもそものセレクション基準については、引き続き議論が求められよう。

 2017年度のサンウルブズは、ニュージーランドカンファレンスの5チームとも対戦予定だ。そのうち4チームはプレーオフに進出しているだけに、道は険しくなること必至だ。

 この日、ティアティアヘッドコーチは「メディアの方には、これからサンウルブズが大変な戦いをすることを伝えていただきたい」といった旨の発言を繰り返した。
 引き続き横たわった問題を処理しながら、ファンに愛されるクラブとして代表を支える。

(文責・向風見也/ラグビーライター)