バスケ審判暴行で浮き彫りになったコンゴ人留学生の校内孤立

バスケ審判暴行で浮き彫りになったコンゴ人留学生の校内孤立

会場は騒然となった(YouTubeより)

「選手本人への処分などが終わって、支障がなければの話ですが、本人と保護者の希望もあるので、できれば(母国であるコンゴに)帰らせてあげたいと考えています」

 全九州高校体育大会バスケットボール男子準決勝(6月17日)で、宮崎・延岡学園高校1年のコンゴ人留学生選手が審判の顔面を殴打した問題。同校の佐々木博之・教頭は本誌の取材に対し、コンゴ人留学生が日本の高校バスケに戻らない可能性を示唆した(*その後23日に、同校は当該選手が本人の希望で自主退学し、母国のコンゴに帰国することを明らかにした)。

 全国制覇を果たしたこともある強豪校の選手が試合中に審判を殴りつけるという前代未聞の事態に、同校は当面の部活動自粛を発表。当日の瞬間を撮影した動画は、SNSを通じて拡散されて物議を醸した。

 留学生選手が暴力を振るう背景に何があったのか。佐々木教頭は「(本人が)話さないので、分からないんです」と話した。

「5月末の高校総体の県予選を終えた翌日から、突然、『帰国したい』と言い出しました。保護者の方とも話して、“インターハイまでは頑張る”とやってきました。今回の九州大会前も、38℃くらいの熱を出したが、本人が『大丈夫です』と監督に言って、病院で点滴を打って試合に出ていました」

 ただ、周囲に悩んでいる素振りは見せていなかったという。同校3年生の女子生徒は驚きを隠せない様子だ。

「彼は4月に入学したばかりでしたが、友達は多いほうだったと思う。性格は明るく、カタコトの日本語で休み時間に楽しそうに話す姿をよく見かけました。ウチの学校は小中高一貫で、小学生の子にも話しかけられて仲良さそうにしていた。帰国したいと思っていたなんて、ちょっと信じられないです」

 ただ、別の女子生徒はこう証言する。

「(コンゴの公用語の)フランス語を話せる先生はこの学校にはいない。悩んでいたとしても、相談できる人がいなかったんじゃないか」

 暴力行為が許されないのは言うまでもないが、学校側の受け入れ態勢にも問題はなかったか。

 高校バスケでは、一部の強豪校を中心に2000年代からアフリカ出身の留学生を競うように受け入れるようになってきた。2mを超える長身の留学生選手の存在は極めて大きく、試合の行方そのものを左右する一方、学費免除、渡航費も学校負担で留学生を受け入れて勝利を目指す態勢を疑問視する声も少なくない。留学生事情に詳しいジャーナリスト・出井康博氏はこう語る。

「現地とコネクションのある“ブローカー”が留学生をスカウトする現状の是非、語学や普段の授業などの生活面で留学生へのケアが十分だったのかといった課題がある。今回問題を起こした1人の留学生を責めるのでなく、高校スポーツと“助っ人”留学生のありよう全体について考える必要があるでしょう」

 佐々木教頭は、最後にこう述べた。

「こういう問題が起きてしまった以上(留学生の)受け入れ態勢が十分ではなかったと考えなくてはいけないと受け止めています」

 衝撃的な事件を機に、考えさせられることは多い。

※週刊ポスト2018年7月6日号

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