甲子園で導入されたタイブレーク 先攻、後攻どちらが有利か

甲子園で導入されたタイブレーク 先攻、後攻どちらが有利か

済美の矢野(左)はサヨナラ満塁弾を放った(右は政吉完哉)

 今春から甲子園で導入されたタイブレーク(延長12回を終えて同点の場合に、無死一、二塁から13回の攻撃を始めるルール)が初適用となったのは、今大会の1回戦、佐久長聖(長野)対旭川大(北北海道)戦だった。

 決勝をのぞいて引き分け再試合がなくなるため、導入前は「ドラマが生まれなくなる」という心配の声も上がったが、タイブレークならではの妙味もある。

 延長15回まで膠着状態が続くより、無死一、二塁から始まり得点が生まれやすいタイブレークのほうが、より監督の手腕が問われる。先攻・後攻、打順の巡り合わせによって、先頭打者にバントで送らせるか、強攻策かの選択に迫られるのだ。

 史上初のタイブレークを制したのは、先攻の佐久長聖だった。藤原弘介監督が語る。

「先に点を取った方がタイブレークは有利に運べますね。(14回表は)当たっていなかった1番・真銅龍平からの打順で、バントをサード前に転がしてヒットになり、1点を取れた。裏の旭川大さんは、4番打者から。一度はバントの構えをしながら、強攻策を採った結果、0点に終わった。僕も4番が先頭打者だったら悩んだと思います」

 反対に「後攻の方が有利」と振り返る監督もいる。2例目のタイブレークで先に2点を勝ち越しながら、済美(愛媛)に逆転された星稜(石川)の林和成監督だ。

「表の攻撃で何点が入ったかによって、裏の攻撃では作戦を選べる。点が入っていなければ送って1点を奪いに行くし、3点以上入ったら大量点を狙う作戦を選択できるわけですから」

 この試合で大会史上初となる逆転サヨナラ満塁本塁打を放ったヒーローが済美の矢野功一郎だ。中矢太監督は「脇役タイプばかりのチームにあって、努力して打撃の飛距離を伸ばしてきた選手」と讃える。

 ところで、“愛媛の矢野”といえば、1996年夏の決勝、熊本工業のサヨナラ犠飛を“奇跡のバックホーム”で阻止した松山商業の英雄もまた“矢野”勝嗣さん。愛媛のファンにとっては吉兆だろう。

 さらに中矢監督は、明徳義塾のOBで、同校の馬淵史郎監督が星稜・松井秀喜を5敬遠した時の控え選手。甲子園で起こるドラマは、不思議な因縁を生む。

●取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)

※週刊ポスト2018年8月31日号

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