龍谷大平安・原田英彦監督「京都府勢甲子園200勝」への思い

龍谷大平安・原田英彦監督「京都府勢甲子園200勝」への思い

平安高の原田英彦監督(写真:マスターズスポーツマネジメント)

 選抜3日目第1試合の津田学園戦に登場する龍谷大平安高校。同校に対する愛情は誰にも負けない、そう公言してはばからないのが、昨夏の100回記念大会で甲子園春夏通算100勝を達成した原田英彦監督だ。“平安愛”を貫く指揮官は、昨秋近畿大会を制し、2季連続で甲子園を決めた。高校大学球児向けフリーマガジン「サムライベースボール」の発行人である古内義明氏が、京都府勢甲子園200勝を狙う平安高校の原田監督に、意気込みを訊いた。

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 甲子園出場回数で全国ナンバー1の75回を誇る龍谷大平安が2季連続で聖地の土を踏む。昨夏の甲子園では初戦で鳥取城北を下し、甲子園春夏通算100勝という金字塔を成し遂げた。秋季大会は京都の第3代表ながら、1回戦で天理を4対3、準々決勝で市立和歌山を5対4と接戦をものにし、準決勝では履正社に7対0とコールド勝ちで勢いに乗ると、決勝では明石商業に延長12回の接戦をものにして2対1とサヨナラ勝ちで選抜出場に当確ランプを灯した。京都の醍醐の山々に囲まれた場所に、「龍谷大平安ボールパーク」と名付けられた専用グラウンドがある。41回目の春の選抜に臨む指揮官はこの冬をどんな思いで乗り越えたのだろうか。

──冬の期間に重点を置いた練習はありますか?

原田監督「毎年、基本練習に重点を置いて練習しています。この冬は比較的暖かったのでいつも通り、フリーバッティングとシートノックが中心の練習をこなせました。バッティングに関してはどんな投手が来ても、振り負けない事を意識しました。今年のチームは守備があまり良くないので、難しいことをせずに、確実に捕球して、確実に送球することを繰り返して練習しました」

──今年のチームを一言で表すと、どんなチームでしょうか。

原田監督「『元気と負けん気のあるチーム』です。それだけで、(近畿大会まで)勝ち抜いて来ました」

──春の選抜で、「龍谷大平安のここを見て欲しい!」というポイントはありますか。

原田監督「やはり、元気と粘り強さです。例年だと鉄壁の守備があるのですが、秋季大会のエラーの数が14個で、私自身が初めて経験するようなエラーの数でした。その内、一塁手と三塁手で合わせて、エラーの数が10個でした。それだけ失策しても、近畿大会で勝てたのは逆転された後、粘って再逆転する気持ちの部分が大きかったと思います。他の出場校もこの冬で伸びていると思うので、まだまだこのチームが完成するのは先だと思っています」

──豊田祐輔や野澤秀伍など、投手陣の仕上がり具合はいかがですか?

原田監督「2月に投げ込みを行ったので疲労感が残りましたが、3月に入って疲労感を抜いていきました。定期テストが終わった後、例年通りに1週間沖縄遠征に行き、ゲーム合宿と称して、7、8試合ぐらい調整をして、京都に戻ってきました」

──2人の投手の特徴を教えて下さい。

原田監督「豊田は変化球、特にカーブが特徴で、緩急を使った投球が出来るタイプです。野澤はストレート中心のピッチングスタイルです」

──水谷祥平主将は原田監督から見て、どんなタイプの主将ですか。

原田監督「夏の甲子園100回大会で1番バッターとして勝利に貢献した選手ですから、もう一度甲子園に行きたいという気持ちが一番強いですね。元気と負けん気を持って、チームを引っ張っています。主将に就いてからは、『5打数5安打5打点、打たないと勝てないぞ!』と言ってきました。秋季大会では良い場面で、甲子園経験者らしく、チームを引っ張っていってくれました」

──他に期待している選手はいますか?

原田監督「もう1人、夏を経験した二塁手の北村涼に期待しています。甲子園では無安打でしたし、予選でも1安打のみだったので、非常に悔しかったと思います。新チームになってからは良い働きをしているので、北村が内野を引っ張っていって欲しいと思います。内野で唯一の甲子園経験者ですから、彼が内野のキーマンになって、秋の大会の失策数を北村中心に減らして貰いたいです」

 高校野球の解説者として、度々甲子園の放送ブースにも座る原田監督。これまで春の選抜は「投高打低」と長く言われていたが、「昨今は各校のトレーニング術が上がったことで、細かい駆け引きがあまり見られずに、走攻守において大雑把になっているように感じています」と分析する。最少失点を守り切る細かい野球は影を潜め、バントを多用するチームはめっきり減った。その代わり、3、4点差であっても、ワンチャンスあれば長打でひっくり返すようなゲームが少なくない。「一時期の社会人野球のように、10点差でもまだ前半だったらひっくり返せるとか、ひっくり返されるような野球」になってきたと昨今の高校野球のトレンドを話す。

──選抜出場校の中で、注目している高校はどこでしょうか。

原田監督「32校の全体を見て、力の差はあまりないと思っています。各地区を勝ち抜いてきた高校、明治神宮大会で負けた札幌大谷高校にしても、星稜高校や広陵高校にしても力があると思います。横浜高校の及川雅貴君も力を持っていますので、そのような高校が上位に来ると睨んでいます」

──その中で、原田監督が最も注目する選手は?

原田監督「投手は星稜高校の奥川恭伸君です。明治神宮大会の広陵戦で、ネット裏、一塁側、三塁側と、全ての角度から投球を見ましたが、全く隙がありませんでした。体も大きいですし、この冬でさらに伸びていると思うので、30年に1人の逸材だと思います。広陵高校も強いと思っていましたが、さらに上回り手玉に取っていました(11奪三振の完封勝利)」

──奥川投手はどのようなタイプと分析されていますか。

原田監督「奥川君は体が183センチ、84キロと大きい割に、力感がなく、バランスよく放るので完成度が高いと思います。そして腕の振りが真っ直ぐも、変化球も同じで全く分かりませんでした。これまであまりいないタイプの投手だと思います」

──高校時代のダルビッシュ有選手(シカゴ・カブス)と比べて、いかがですか?

原田監督「東北高校時代のダルビッシュはあまり完成していませんでした。自らの能力だけで、投球しているように見ていました。当時の彼は練習嫌いだったようなので、一生懸命に練習すれば、これから凄いすごい投手になるような印象を持っていましたね」

 社会人野球の強豪・日本新薬でプレーしていた原田監督の下に、「平安監督就任」の話が来た時、原田監督は二度もその要請を断ったという。それでも引き受けた最大の理由は、「どん底にいた平安をなんとか再建して欲しい」という周囲の後押しと、「平安のために、何とかしよう!」という“平安愛”だった。1908年創部の伝統校の27代目の監督に就任。部員21人というどん底からリスタートした名門は、2014年春の選抜優勝。昨夏の夏の京都大会前から、「100回大会の甲子園に、平安が出ないなんて、しゃれになりません」と公言し、「100回大会で100勝」をやってのけ、目に涙を浮かべた。

──昨夏、甲子園100勝を達成しましたが、この先どうやって白星を積み上げていきますか。

原田監督「甲子園であと1勝すると、『京都府勢甲子園200勝』を達成するので、そこにまた平安の名を刻みたいと思っています。現時点で、選抜の優勝を目指すところまで、まだ届いてないと感じていますが、夏の甲子園では優勝する事を考えています。春に全国大会を経験して、それから夏まで選手がどれだけ伸びるかに、いまは謙虚に期待しています」

──この選抜に、京都から福知山成美高校と龍谷大平安高校の2校が出場しますが、京都のレベルは近年稀にみる高さといえるのでしょうか。

原田監督「選抜選考会の中でも、『京都のレベルは高い』という話が出たようで、非常に嬉しかったです。京都国際高校も明石商業相手に惜敗しましたが、良い試合をしました。京都のレベルが高い事で5番目に平安が選ばれました。京都全体の野球レベルを上げることも考えながら指導しているので、評価されたのは嬉しいです。手前味噌ながら、平安が強いと他の高校が我々を倒す為に頑張り、必然的にレベルが上がってくると思います。なので、秋の大会に関しては好循環に入ったと思います。いつまでも平安が京都の高校野球を引っ張っていかなければいけないと思っています」

──では、5年ぶり2回目の全国制覇をするために何が必要だと考えていますか。

原田監督「『適材適所で、役割をこなす』という頑固な組織が出来るか出来ないか、にかかっていると思います。組織が出来ると力になりますが、それが一つでも欠けてしまうと力にはなりません。まだ今年のチームは適材適所で役割をこなせる選手が少ないです。やんちゃな子、一生懸命やる子、怒られ役など、様々な役割の子が必要だと思います」

 2014年の選抜の優勝インタビューで、「私は平安が好きです。一番の平安ファンでもあります」と涙をぬぐった指揮官。「いつの時代も、高校野球の道具の変化やトレンドに対応するような野球をしなくてはいけない」と時代の変化に敏感だ。「HEIAN」のロゴをあしらったデザイン性の高いウェアを制作したり、伝統を守りつつも、時代に敏感な点も忘れてはいない。26年間の監督人生を振り返るとき、「高校野球が野球人生の基本であり、長く野球を続けて欲しい」というポリシーが、根底にはある。

──平成という時代を振り返ってみて、高校野球にとってはどのような時代だったのでしょう。

原田監督「野球界、スポーツ界が変わりつつあると思います。難しい時代になってきました。夏の暑さが昔とは根本的に違っているので、球数制限もそのような違いから出てきたものだと思います。休む時は休む、やる時はやる、というように練習の仕方や休み方を変えています」

──メディアの関心事にもなっているその球数制限について、どのような考えですか?

原田監督「球数制限については考えたくないです。大学をはじめとする上のステージで野球を続けることを前提にした場合、70から80球という球数制限では、(経験を積み成長を促すという意味で)十分ではないと思います。私の考えでは、制限をしなくても、故障はしないと思います。しっかりとしたトレーニングと、生徒のフォローが大切になってきますね」

──原田監督は節目、節目を大切にされてきましたが、「平成最後の選抜王者」も狙っているのでしょうか。

原田監督「それに対するモチベーションは高いです。様々な事があった平成を飾る最後の大会ですから、その想いはあります」

──昨夏は、「お前たち、最高だぜ!」という決め台詞がありましたが、この春は何かお考えですか?

原田監督「まだ、選抜に彼らにどんな言葉をかけるかは考えていません。その年のチームにあった声の掛け方をしていて、少しずつ変えています。ただ、アルプススタンドの応援団には、歌って欲しいタイトルは少し伝えてあります!(笑)」

【PROFILE】
原田英彦(はらだ・ひでひこ)/1960年5月19日生まれ。平安(現龍谷大平安高)時代は俊足外野手として活躍し、卒業後日本新薬では都市対抗野球に10度出場して主将も務めた。1993に母校監督に就任。甲子園出場は春8度、夏7度。1997年夏の甲子園では川口知哉(元オリックス)を擁して準優勝。2014年春の選抜で初優勝。今大会で京都府勢甲子園200勝を狙う。

古内義明(ふるうち・よしあき)/1968年7月7日生まれ。立教大学法学部卒、同時に体育会野球部出身。高校・大学球児向け「サムライベースボール」発行人として、これまで数百校の高校を取材し、アマチュア関係者と独自の人脈を構築。近著に、『4千分の1の名将 新・高校野球学【関西編】』(大和書房)がある。(株)マスターズスポーツマネジメント代表取締役、テレビやラジオで高校野球からメジャーリーグまで多角的に分析する情報発信。立教大学や早稲田大学エクステンションコースでは、「スポーツビジネス論〜メジャーの1兆円ビジネス」の教鞭を執る。

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