プロ野球で本塁打激増、「今年のボール、飛び過ぎ」なのか?

プロ野球で本塁打激増、「今年のボール、飛び過ぎ」なのか?

ZOZOマリンに新設された観客席「ホームランラグーン」(時事通信フォト)

 ホームランは野球の醍醐味だが、多すぎると話は変わってくる。今季、セ・パ両リーグでホームランが急増する“異常事態”が起きている。ついには「飛ぶボール疑惑」まで飛び出した。異変は、開幕から3カード(全54試合)が終了した時点で如実に現われた。

 昨季の開幕3カード(昨季は52試合)のホームラン数と比較すると、両リーグ合わせて80本から119本に増えた。

 両リーグの本塁打ランクトップは、開幕からの4試合連続弾を含む6本のロッテ・レアード(31)と、広島・鈴木誠也(24)の5本。シーズン143試合に換算すると、それぞれ96本、80本というメジャーリーグも仰天の“世界記録ペース”だ。

 4月6日には、セ・パ全6試合で、合計22本のホームランが飛び出し、翌7日には、ソフトバンクがチーム7本塁打を放った。

 本塁打の急増は、レアードや鈴木、西武・山川穂高(27)の4本、DeNA・筒香嘉智(27)の3本といったホームランバッターに留まらず、プロの世界では“中距離打者”と言われる選手たちにも起きている。

 プロ通算4年間で一度も2桁本塁打をマークしていないロッテ・中村奨吾(26)が早くも5本、“守備職人”と呼ばれるソフトバンク・今宮健太(27)、通算6年で計9本塁打のロッテ・加藤翔平(28)も4本を放つなど、小兵選手が昨シーズンまでとは別人のような長打力を見せているのだ。プロ野球のデータに詳しいジャーナリスト・広尾晃氏が語る。

「12球団の本拠地・準本拠地などの主要球場での本塁打数を分析すると、昨シーズンは1試合あたり1.95本のホームランが出ていたのに対し、今季の3カード目までの1試合あたりのホームラン数は2.2本と、13%増加しています。各チーム9試合終了時点とはいえ“ホームランバブル”だと思います」

◆「こんな打球がスタンドに!?」

 とくに激増しているロッテでは、今季から本拠地・ZOZOマリンスタジアムに新設された「ホームランラグーン」が一因となっている。観客席をグラウンド側に最大4メートル拡張し、外野フィールドが狭くなった。

 その結果、開幕3連戦では、チームの6本塁打のうち、半数の3本が新設スタンドに吸い込まれた。昨年までなら外野フライでアウトになっていてもおかしくなかった打球だ。

 だが、今季の異常事態は、球場の変化だけでは説明できない。変化を最も敏感に感じ取っているのは、他ならぬ選手たちだ。ある現役外野手が語る。

「今季は明らかに飛び方が違うと思う場面がたくさんあります。“詰まったな”とか“(定位置より)前に落ちるな”と思った打球でも、予想より伸びて、下がって捕球する時がある。とくに逆方向(右打者の右中間、左打者の左中間)の打球は伸びる印象ですね。正直、“こんな打球がスタンドに!?”と思うこともあります」

 それは打者の感覚にも一致している。7日には、ソフトバンクの主砲・柳田悠岐(30)の第1打席で、直球を振り抜いた打球がフラフラとレフトに上がり、柳田は打ち損じとばかりに「あ〜!」と声を上げた。首を傾げながら一塁へ走り出したが、打球はレフトの頭上を越え、そのままスタンドに弾んだのだ。柳田は驚いた表情を浮かべ、球場もどよめきに包まれた。在京球団のコーチはこう打ち明ける。

「昨年までと比べても、打球音が“カーン”と乾いた音になった。甲高い音になったと表現する投手もいます。野手に聞いても、打球の球足が速くなったと言っています」

 今季、多くの選手や首脳陣が「打球が飛ぶ」と口を揃えるのは、いったい何故なのか。

◆反発係数が高い?

 現役時代にヤクルト、巨人、阪神で長距離砲として活躍した野球評論家・広澤克実氏は、「たしかに、ボールが飛ぶようになっている印象を受けます」と語る。

「体重が重い選手の方がパワーがあることは、理論上間違いありません。しかし、今季は体重が70kg台の選手も本塁打を量産している(前出の中村は79kg、今宮は76kg)。もちろん選手は日々練習で技術を磨いていますが、それだけでは説明がつかない。逆方向へのホームランが多いことも含めて、球場が狭くなった効果よりも、ボールの反発係数が影響しているのではないかと疑っています」

 NPBは2011年から統一球を導入し、反発係数の規定値を定めた。

「当初は反発係数の上限値と下限値を定めていましたが、基準を満たしたボールでも、上限と下限では飛距離が大きく変わってしまう。ボールの問題はそれほど繊細なのです。そのため、2015年には、反発係数の目標値を0.4134とピンポイントに定めている」(スポーツ紙デスク)

 あるスポーツメーカーの営業マンはこう証言した。

「プロ野球選手が使用している木製バットは、ボールよりも細かい規定が定められているため、改良の余地がほとんどなく、ホームランが増えた要因をバットに求めるのは現実的ではない。そうなると、“疑いの目”はどうしてもボールに向いてしまう」

 製造元のミズノに問い合わせると、「弊社はボールを供給している立場であり、お答えする立場にありません」(広報担当者)とするのみで、複数の球団スタッフに取材しても、「ボールの仕様、製作、保管方法など、昨年のボールと同じ品質のはずですが……」という答えしか返ってこない。

 その一方で、バットでもボールでもなく、打ち方が「飛ぶボール」を産んでいるとの指摘もある。前出・広尾氏が語る。

「従来の日本でよく指導されたように“上から叩く”のではなく、あえて“フライを狙う”ことで、ホームランが出やすい角度で打球を打ち出す『フライボール革命』という打撃理論です。2017年にアストロズが導入し、ワールドシリーズ制覇に繋がったと言われ、近年のMLBでは主流の考え方になっています。

 この理論では、手元までボールを引きつけて逆方向に打つよう指導される。フライボール革命が日本に広まったことも、ホームラン量産につながっているのではないか。そして、実際にホームランが出るから、さらにホームラン狙いのスイングに拍車がかかり、ボールがスタンドまでかっ飛んでいく」

 この春の珍事の理由は果たして「ラッキーゾーン化」なのか、「飛ぶボール」なのか、「フライボール革命」なのか……。シーズン最後の結果が見ものである。

※週刊ポスト2019年4月26日号

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